AI翻訳の精度さらに向上 重機取説で検証、誤訳なし
専門文書の翻訳人工知能(AI)を開発するロゼッタ(東京都千代田区)はこのほど、日立建機(東京都台東区)の日本語文書「油圧ショベル取扱説明書(日本語「安全上のご注意」箇所44ページ)を対象にした自社のAI自動翻訳サービスの“精度検証”で、従来の精度を上回る日本語から英語への自動翻訳結果が得られた、と発表した。日立建機側の全文チェックでは人間が修正すべき「明らかな誤訳は発見できなかった」という。
この検証結果を受けてロゼッタは10月14日、東京都内で記者会見を開き、今回の翻訳精度向上を機に、自社のAI自動翻訳サービス「T-4ОО(ティーフォーオーオー)」を「MetaRozetta(メタロゼッタ)」というサービス名称に変更して展開することを明らかにした。
ロゼッタ取締役の新河戸(しんかど)健人さんは「今回当社が到達した(日本語から英語への)AI自動翻訳の精度は、これまで当たり前だったAIが下訳を作り人間が修正して仕上げる、というAI自動翻訳の前提である“構造”そのものを変えた」とAI翻訳精度の飛躍的な向上を強調した。

自社のAI自動翻訳の精度の高さをアピールするロゼッタ取締役の新河戸健人さん。明確な誤訳カ所は1万ぺージ中、付箋を付けた3ぺージにしかないとPRした=2026年10月14日、東京都千代田区
また新サービス名称「メタロゼッタ」に関しては、1799年に仏ナポレオン軍がエジプトで発見した、神聖文字(ヒエログリフ)・民衆文字(デモティック)・ギリシャ文字が刻まれた石碑「ロゼッタストーン」にちなんだ命名と述べ、多くの言語の理解を通じてヒエログリフなどの解読に挑んだ人類の歴史を念頭に「当社は“AI時代のロゼッタストーン”を発見し解読します。言葉の“向こう”にある意味・知性まで理解して、異なる言語間のコミュニケーションの実現を目指します」と新サービス名に込めた思いを説明した。
ロゼッタの親会社メタリアル(東京都千代田区)の秋山史門・執行役員は「今回われわれが達成した翻訳精度は、“訳文の確認・判断・修正を人間に要求しない”という意味で、われわれは“条件内の完全自動翻訳”を実現した、と表現しています。この条件内の完全自動翻訳は、かみ砕いて説明すると、10人の翻訳家がそろって間違いを指摘するような“明確かつ重要な誤訳”がないことを意味します」と述べ、今回の検証結果の意義を解説した。
また今回の日立建機側の全文チェックでは1件もなかった「明確かつ重要な誤訳」の例として、数値間違い(長さ10ミリ→誤訳Length100ミリ)▽意図の相違(カバーを開けないでください→誤訳Please open the cover=カバーを開けてください)▽意味が異なる用語・表現(電波→voltage=電圧)―の三つの例を挙げた。

今回の検証で「条件内の完全自動翻訳を実現した」と話すメタリアル執行役員の秋山史門さん
会見に同席した日立建機で翻訳業務を担当している同社開発設計統括部の藤崎実さんと向井恵子さんは、今回精度検証した「油圧ショベル取扱説明書」(日本語「安全上のご注意」箇所44ページ)の英訳文をチェックした感想を報告。2人は全44ぺージ、1文ごとに分けると約800センテンスの一つ一つを翻訳担当者として目を通した結果、「人間の修正が必要な明らかな誤訳はなかった」と述べた。

日立建機の油圧ショベル取扱説明書「安全上のご注意」のAI自動翻訳英文をチェックした結果を報告する同社開発設計統括部の藤崎実さん(右)と向井恵子さん
向井さんは「チェックしてとても高い品質の英文に翻訳されていたと感じました。当社のように海外に輸出する重機の取扱説明書の翻訳では、例えば日本語から英語に翻訳する場合、言葉を加えたり差し引いたりすることは通常は好ましくない、とされています。汎用AIの自動翻訳によくみられるこうした言葉を加える意訳や翻訳しにくい日本語を英文に翻訳せず抜いてしまうことが、今回の検証事例ではありませんでしたので、翻訳の質の高さを実感しました」と話した。
こうした翻訳の“質の高さ”は今回翻訳精度の検証対象にした重機の取扱説明書のような文書の翻訳では、特に必要不可欠な要素という。藤崎さんは「米国のような訴訟大国では、重機の取扱説明書に“誤訳”があった場合、例えば、日本語の説明書にあった部分が英文の説明書には書いていなかったり、日本語の意味を間違えて翻訳されたりした場合は、それが事故原因とされて訴えられるリスクになることがあります。こうした訴訟リスクを回避するためにも正しい訳が、重機の取扱説明書の翻訳では重要になります」と語った。
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