AIの活用と管理の間に落差 リスク対応後回し浮き彫り アビタス教育総合研究所
最先端の人工知能(AI)の開発を手がける米IT企業6社のトップが米トランプ大統領と、自主的にAIの安全性確保に努める「AI自主規制」の合意文書にサインした。各企業は開発する最先端AIがハッキングや不正アクセスなどをしないよう社内の自主的な管理監視体制の構築に努めるという。
日本でも企業のAI活用に伴い、最先端AI暴走の脅威とは次元が違うが、情報漏えいや誤情報の活用、知的財産権侵害など予期せぬAIリスクを見越した社内のAI管理体制構築の必要性への認識は高まっている。しかし、各種調査を見ると、AI管理体制の社内構築はAI利用推進の取り組みに比べるとあまり進んでいないのが実態のようだ。
米国公認会計士や公認内部監査人の国際資格講座事業などを展開しているアビタス(東京都渋谷区)の研究機関「アビタス教育総合研究所」(同)が9月に発表した、IT・情報サービス業を除く企業の管理職以上の正社員350人(30歳~65歳)を対象に実施した企業のAIガバナンス体制を調べた「生成AIの業務利用と管理体制に関する実態調査」によると、AIの業務利用に関するルールやガイドラインが「整備され、従業員にも十分に浸透している」と答えた割合は15.1%にとどまっていた。
この調査の結果を分析したアビタス教育総合研究所の毛利弘通所長は「AI活用のスピードに企業内の管理体制の構築が追い付いていないことがうかがわれる結果となった。AIの活用とガバナンスの間に大きなギャップ(落差)がある」と話す。
さらにAIの業務利用に関するルールやガイドラインに関する設問で最も多かった回答は「必要性を含め、まだ十分に検討されていない」で、20.9%を占めた。毛利所長は「AI管理に関するルールやガイドライン整備の必要性への認識すら不十分という企業も少なくなかった」と述べ、AI管理を巡る企業間の“認識”の落差も大きい、と強調した。

企業のAIガバナンス体制を調べる「生成AIの業務利用と管理体制に関する実態調査」を実施したアビタス教育総合研究所の毛利弘通所長(右)とアビタス執行役員の柳尾彰大さん=2026年10月2日、東京都渋谷区
このようなAIの活用に前のめりで管理がおざなりになっている現状は、会社が管理している以外のAI に関する従業員の利用状況の把握にも表れている。自社管理外のAIを「従業員が業務で利用しているか」を聞いたところ、「利用している可能性はあるが実態を把握できていない」(18.3%)と「状況を把握しておらず、分からない」(26.3%)は合わせて44.6%に上り、半数近くが自社管理外AIの利用状況を正確には把握できていなかった。このような状況から毛利所長は「従業員がどのAIを使っているか把握する仕組みが多くの企業ではまだ不十分であることが分かる」と分析。
ただ「一律に会社管理外のAI利用を禁止すれば事足りるわけではなく、従業員の利用状況把握の仕組みづくりと並行して、AI利用の安全性確保の環境整備や会社として入力してよい情報の明確化などを同時に推進することがとても重要だ」と述べる。
AIを利用して実際に起きたトラブルやヒヤリハットに関する事例調査(複数回答)では「特に発生していない」は29.7%と約3割にとどまり、「発生状況を把握していない」は31.1%だった。トラブル・ヒヤリハットの発生事例回答は合わせて63.9%で、最も多かったトラブル・ヒヤリハットは「誤情報をそのまま業務に使用」(17.1%)。次いで「著作権侵害の可能性」(15.7%)「(AI制作物を)利用顧客らに提供し問題が生じた」(13.1%)「機密情報をAIに入力」(12.9%)「管理外AIを業務使用」(5.1%)の順で続いた。
毛利所長は「トラブル、ヒヤリハットの発生に関しても、従業員のAI使用状況と同様に、把握体制が整っていない企業が少なくない。AI使用のルール・ガイドラインの策定やAIの利用実態・トラブルの把握などAIに関する総合的な仕組みを円滑に社内に構築するには、AIリスクを確認・評価する専門人材がどうしても必要になる」と説明する。

AIリスク専門人材の確保に関するアンケートの回答結果=アビタス教育総合研究所提供
このAIリスクを確認評価するAIリスク専門人材の確保に関しては「まったくいない」(19.1%)「あまりいない」(29.1%)合わせて48.2%に上り、「十分にいる」(11.1%)と「ある程度いる」(24.6%)の合計35.7%を上回っている。
このようなAIリスクの専門人材確保の必要性は、AI社会の進展に伴い今後さらに高まっていくとして、アビタスは今後、AI監査・ガバナンスの国際資格「AAIA」の取得講座を今年6月に開設、同講座事業の拡大を目指している。アビタス執行役員の柳尾彰大さんは「現状ではAIリスク管理は現場での対応が少なくないですが、AIリスク管理体制の構築は経営層の関心を集める優先度の高い経営課題になっていくはずです。経営層の認識が変わればAIリスクの専門人材の需要は一気に増えると思います。受検資格が限定されている国際資格AAIAの講座だけでなく、一般向けのAIリスク管理の基礎講座も10月から開く予定です」と話す。
この国際資格AAIA(Advanced in AI Audit)は、1969年にアメリカで設立されたISACA(情報システムコントロール協会)が新設した、AIの監査・ガバナンスに特化した国際資格。米国公認会計士や公認内部監査人、日本の公認会計士などが受検できるという。
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