【映画コラム】世界が揺らぐとき、人間は何をするのか…『DIGGER/ディガー』『ディスクロージャー・デイ』
『DIGGER/ディガー』(10月9日公開)

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石油採掘会社のCEOとして君臨するディガー・ロックウェル(トム・クルーズ)の、利益しか考えない強欲な行動によって氷河に亀裂が生じ、地球規模の環境災害が発生する。コンプソン大統領(ジョン・グッドマン)から事態の収拾を命じられたディガーは、世界を救うべく立ち上がるのだが…。
何とも大仰な設定だが、まず目を引くのは、そんな型破りな主人公を演じるトム・クルーズだ。特殊メークによって白髪交じりの髪と突き出た腹を持つ、見るからに俗悪な石油王へと変身。『トロピック・サンダー/史上最低の作戦』(08)で演じた、はげ頭で金に汚い映画プロデューサー役以来ともいえる大胆なイメージチェンジで、これまでのイメージを自ら笑い飛ばすかのような怪演を見せる。
ディガーは、自分の欲望によって地球を危機に陥れながら、今度は自分自身が世界を救う英雄になろうとする。自分で問題を起こしておいて、自分で解決しようというのだから、何とも虫のいい話だ。その身勝手さを徹底して戯画化することで、環境破壊だけでなく、金と権力を手にした者が世界を思い通りにできると考える傲慢(ごうまん)さまで笑いのめしている。
もっとも、本作は「強欲な石油王が環境危機を引き起こす」という設定だけでは語り切れない。物語が進むにつれて、最初に提示された世界が少しずつ別の様相を見せ始めるからだ。ここから先は、何が起こるのかを知らずに見た方がいい。
この予測不能な展開こそ、アレハンドロ・G・イニャリトゥ監督らしさなのかもしれない。『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』(14)では、俳優と役柄、現実と幻想の境界を揺さぶりながら、映画と演劇そのものを題材にした。本作でもまた、物語の前提そのものを揺るがす仕掛けによって、観客の予想を裏切っていく。
そのシュールさとブラックコメディーのシニカルな味わいには、スタンリー・キューブリック監督の『博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか』(64)を思わせるところもある。地球規模の危機という深刻な事態を扱いながら、登場人物たちはどこか滑稽。その滑稽さが、かえって事態の異常さを際立たせる。
撮影は、『バードマン~』『レヴェナント:蘇えりし者』(15)でもイニャリトゥ監督と組んだ名手エマニュエル・ルベツキ。リズ・アーメッド、ザンドラ・ヒュラー、ジェシー・プレモンス、マイケル・スタールバーグら実力派が共演する。
環境風刺、ブラックコメディー、そしてイニャリトゥならではの予測不能な映画的仕掛け。トム・クルーズの怪演に目を奪われているうちに、観客は思いもよらない世界へと連れていかれる。
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