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心をこめた食事が人と人をつなぐ 西東京市こども食堂げんき 沼尾波子 東洋大学教授 連載「よんななエコノミー」

 この10年で「こども食堂」という言葉はすっかり市民権を得た。認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえの調査によれば、2012年に東京都大田区で始まったこども食堂は、16年には300カ所余りだったが、25年には1万2600カ所を超え、全国の中学校数を上回るまでになったという。

 一言でこども食堂といっても、その姿は実に多様である。月1回から毎日まで、数人が食卓を囲むところから、100人以上が集まるところまである。目的も、おなかをすかせた子どもへの食事の提供、孤食の解消、食育、地域交流など幅広い。子どもに限定しない「みんなの食堂」もある。コロナ禍で会食が難しくなった際にも、弁当や食材を配布するなど、子どもや子育て世帯とのつながりを保つ活動が続けられた。

 先日、東京都西東京市の「こども食堂げんき」を訪ねる機会を得た。市内で虐待を背景に子どもが亡くなったことをきっかけに、地域の子どもを見守り、見えにくいSOSを受け止めたいとの思いから、一人の住民が自宅を改修、地域で支え合いながら活動を続けているという。月に1回、地域の子どもや親子が訪れ、食事を取る。

 ここには、子どもや親子が、誰でも参加できる。支援を必要とする人だけを対象にせず、誰もが来られるからこそ、困りごとを抱えた人も気兼ねなく参加できるという。会場には福祉の専門家もおり、何げない会話から困りごとの「つぶやき」が聞こえてくると、話を聞き、必要に応じて相談支援につなげる。食事を共にしながら、関係を丁寧に育んでいる。

 この日の昼食は、中華丼にサラダ、スープ、デザート。食材を丁寧に調理した、とても美味しい食事だった。手軽にファストフードで食事を済ませることのできる時代、手をかけて作られた食事を味わい、誰かと食卓を囲むという営みが暮らしの基本にあることを、改めて感じる機会となった。

「こども食堂げんき」で調理するボランティアスタッフ=9月13日

 一方で、こども食堂の運営は決して容易ではない。行政支援は地域によって異なり、寄付やボランティアによって支えられているところも多い。物価高騰が続くなか、以前ほど食材の寄付が集まらなくなっているという。各地でこども食堂がネットワークをつくり、食材や情報を共有して活動を支え合っているという。企業や団体との協力も広がりをみせる。

 家族で食卓を囲み、団らんすることが必ずしも当たり前ではない時代に、こども食堂は、食を通じて人と人をつなぎ、子どもを地域で見守る場となっている。食べることは命を支えるだけでなく、誰かと時間を共にし、つながりを育むことでもある。そんな暮らしの原点ともいえる営みが地域で広がり、各地でつながりを広げていることに「げんき」をもらった。

(東洋大学教授 沼尾波子)

【KyodoWeekly(株式会社共同通信社発行)No.39からの転載】

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