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生成AI時代の「ガンガンいこうぜ」 よんななエコノミー 吉無田修

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 生成AIブームが続いている。チャットGPTが公開されてから、もう3年以上がたった。新しいモデルが発表されるたびに、その賢さに驚かされる一方で、自分のビジネスが変化に適応できるのか、危機意識を感じる人も少なくないだろう。メディア事業の在り方を考えている私自身もそうだ。

 AIの役割は大きく広がった。最初は検索の代わりとして注目され、次に相談相手になった。今は、仕事の一部も担う存在へと進みつつある。文章の要約や翻訳、企画のたたき台づくり、アイデアの壁打ち。こうした使い方は一般化した。経営の世界でも、DeNAの南場智子会長が「AIオールイン」を掲げて全社的な変革を進めているように、AIを経営の軸に据える動きが強まっている。

 AIというと、小学生の頃の記憶が蘇る。1990年に発売され、日本中を熱狂させた「ドラゴンクエストⅣ」だ。このゲームが斬新だったのは、仲間キャラクターに一つ一つ細かく命令するのではなく、「ガンガンいこうぜ」「いのちだいじに」といった作戦を選び、あとは任せる仕組みを取り入れていたことだった。漫画家の故・鳥山明さんが描いた個性豊かなキャラクターが、自分の作戦に従って戦っているように感じた。

 もちろん、当時のプログラムと生成AIの仕組みは別物だ。それでも「細かな手順を指示するのではなく、大まかな方針を示して委ねる」という発想は、最近のAIエージェントによる自動化とどこか重なる。かつてはゲームの新機能だったものが、いまは仕事の進め方そのものを考え直させる現実になってきた。

 ただ、AIに任せれば何でもうまくいくわけではない。ときに、ずれた答えを勢いよく返してくる。だからこそ「どこを目指すのか」を人間の側がきちんと示さなければならない。任せる相手が優秀になるほど、任せる側の意思が問われる。

 世界のAI開発競争に目を向ければ、米国や中国が先行し、日本の存在感は乏しい。日本が注目されるのは、アニメやゲームのキャラクターをめぐる知的財産権の問題であることが多い。日本のコンテンツの強さを示す一方で、技術の主導権を握れていない現実の裏返しでもある。

 コンテンツの権利を守るのは大事だが、それだけでは物足りない。かつて「ドラクエ」がゲームの中に新しい仕掛けを忍ばせたように、日本の得意の柔らかな発想で、AIの世界でもイノベーションを生み出せないだろうか。

 生成AI時代の「ガンガンいこうぜ」とは、AIにすべてを委ねることではない。AIとともに新しい価値を創り出すことが求められる。難しく見える技術を、誰もが使える道具へと変えていく。停滞を打破する鍵は、案外、遊び心なのかもしれない。
(共同通信デジタル事業部 吉無田修)

【KyodoWeekly(株式会社共同通信社発行)No.17からの転載】

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