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住宅の温熱環境と健康に「関係あり」 LIXILがプレスセミナー開催

 株式会社LIXIL(東京都品川区)が12月14日、大阪市内で「冬の断熱・ヒートショックプレスセミナー」を開催し、近畿大学の生物理工学部人間環境デザイン工学科の藤田浩司准教授がLIXILと共同で実施した「住宅内温熱環境と居住者の健康に関する研究」について講演した。

PH01)セミナーで講演する近畿大学生物理工学部の藤田浩司准教授
セミナーで講演する近畿大学生物理工学部の藤田浩司准教授

 

 住宅は従来、「快適」をコンセプトとしてきたが、住宅の温熱環境と「健康」には関係があることが近年、分かってきた。日本の年間死亡者数約140万人のうち10万人は、「寒さ」による何らかの影響で亡くなっている。代表的なのがヒートショックだ。

 「ヒートショックとは、温かいところから寒いところへ行くと血圧が急に上がるなどして脳卒中、心筋梗塞などを引き起こす」

 「冬における住まいの中での寒暖差と住宅の断熱に関する意識調査」(2023年LIXIL調べ)によると、寒暖差を感じる1位は「朝、起床して布団から出る時」だという。「夜間の布団の中は30度程度あるが、暖房を入れない寝室の温度の平均は10度くらい」だからだ。

 寝室の他にリスクがあるのは浴室だ。入浴中の死亡事故は年間1万9千人。昨今の交通事故死者数は3500人程度(2022年)なので、その4、5倍に相当する。なぜ、入浴中に亡くなるのか。藤田准教授は「入浴時間とお湯の温度」で説明する。

 「体温が38度を超えると熱中症のリスクがある。お湯の温度が高いほど体温が早く上がる。42度のお湯の場合、10分漬かると体温が38度に達する。寒い家ほど高いお湯の温度にする傾向があるため、寒い家ほど入浴中に倒れるリスクが高い」

入浴中の死亡事故数 ※出典:平成29年1月25日 消費者庁ニュースリリース「冬季に多発する高齢者の入浴中の事故にご注意ください!」、警察庁「平成25年中の交通事故死者数について」
入浴中の死亡事故数

 

 WHOは「住まいと健康に関するガイドライン」で、寒さによる健康影響から居住者を守るための室内温度として18度以上を勧告している。ところが、日本の住宅のほとんどは18度未満だ。「北海道、新潟、千葉、神奈川は18度以上だが、それ以外は18度未満。西日本には18度以上の府県が一つもない」のだ。

 日本の住宅の断熱基準が初めて示されたのは1980年(等級2)。したがって、それ以前の住宅の多くは無断熱だ。1992年(等級3)と1999年(等級4)に、断熱性能の基準をさらに高めた。「現在の基準を満たした住宅(等級4)は全国の10%程度で、残りは基準を満たしていない」ために、日本の家は寒いのだ。

現在の省エネ基準に満たない住宅は日本の家の約90%
現在の省エネ基準に満たない住宅は日本の家の約90%
※出典:社会資本整備審議会 建築分科会資料(2021年国土交通省)

 

 暖房した熱は、住宅のいろんなところから逃げていく。その約60%は窓からだ。さらに、「引っ越し先の家の断熱性能が上がると、各種疾患の症状が出にくくなる」という調査結果と組み合わせて導き出したのが、今回発表された研究内容だ。

 「1980年基準の低断熱の家36%を対象に、4人家族の家に対して、居室の全ての窓に内窓を設置すると温熱環境がどう変わるのか、医療費をどのくらい削減できるのか」を算出し、「これまでは冷暖房費の削減効果(30年間で73万円)しか言えなかったのが、医療費を足すことで1.34倍の98万円の削減効果があると言えるようになった」という。住宅の断熱等級に家族構成を加味してパーソナライズ化した経済効果を算出したのは、今回が初めてだ。

「住宅内温熱環境と居住者の健康に関する研究」の結果概要
「住宅内温熱環境と居住者の健康に関する研究」の結果概要

 

 窓の断熱効果を上げるには、窓ガラスの交換、外窓の交換、内窓の設置などの方法が挙げられる。LIXILの内窓「インプラス」なら、1枚あたり最短1時間程度で設置できて手軽だ。外窓の傷みが気になるなら、取替窓「リプラス」がおすすめだ。こうした窓の断熱リフォームは、防音性能も上がるというメリットもある。

 講演後、LIXILのLHT技術研究所主任研究員の吉田吏志さんが、「窓断熱の商材の売り上げが3倍。いかに注目されているかがわかる。猛暑なのに冷房費が安くなった、テレワークでも音が気にならず仕事の効率が上がった、といった声がある。生活の質だけではなく医療費の削減効果を伝えることで、来年も窓断熱リフォームに力を入れていきたい」と語った。

LIXILの内窓「インプラス」
LIXILの内窓「インプラス」
取替窓「リプラス」
取替窓「リプラス」

 

 日本の住宅の断熱性能の改善は、政府を挙げて取り組む課題の一つだ。2022年に世界的にも最高レベルの等級5~7の断熱等級を新設し、2025年には新築住宅に対し断熱性能等級4への適合が義務化される。環境省が実施する、断熱窓へのリフォーム工事を対象にした補助事業(先進的窓リノベ2024事業)も、令和4年に引き続き令和5年度補正予算案に盛り込まれた。窓断熱のリフォームには、今が好機といえそうだ。

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