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「特集」GWの過ごし方 「フリーダム」に 国内旅行や帰省 後半に人出増か

鳥海高太朗
航空・旅行アナリスト


前半と後半に分かれる

 間もなくゴールデンウイーク(GW)。新型コロナウイルスの分類が「5類」になった昨年5月8日からもうすぐ1年となり、旅行のスタイルもコロナ前の状況に戻りつつある。今年のGWは4月27日(土)からスタートするが、前半と後半に大きく分かれることになる。前半は27日(土)、28日(日)、29日(昭和の日)の3連休、後半は5月3日(憲法記念日)、4日(みどりの日)、5日(こどもの日)、6日(振り替え休日)の4連休となる。例年だと平日を2日ほど休むことができれば9連休が成立するが、今年に関しては谷間が3日間あり、仮に3日間全てを休むことができれば10連休となるが、多くの人は前半と後半に分かれる形になる。結果的に長期間の休みを取ることができる人は限られ、国内旅行が中心となるGWになりそうだ。

 4月4日にJTBが発表したGW期間中の旅行動向の見通しにおいても、まだ5類になる前の昨年に比べると海外旅行へ出かける人は67・7%増となっているが、2019年と比較すると44%減となっている。海外旅行については、海外旅行に出かけにくい日並びであることに加えて、円安や海外の物価高による旅行代金の高騰が影響していると考えられる。それに対して、国内旅行はコロナ前の19年の5%減まで回復する見込みとなっている。

増える推し活目的の旅

 今年のGWは、「フリーダム」な過ごし方になりそうだ。1年前まではまだマスクをして外出や旅行に出かける人が多く、新型コロナの感染拡大を気にしている人も多かった。「フリーダム」という言葉は、新型コロナを意識せずに、また周りの人の目を気にすることなく自由に行動できるという意味である。

 飛行機や新幹線などで旅行や帰省をする人も多い一方で、自宅周辺の近場でのんびり過ごす人も多く、旅先も距離に関係なく、行きたい場所へ出かける傾向が見られる。コロナ禍が明けて以降、全体的な旅行トレンドにおいて、旅行先でやりたいことを明確化した上で旅のプランを立てる人が増えている。「このホテルに泊まりたい」「現地でしか食べることができないおいしいものを食べたい」「この温泉でリフレッシュしたい」「この景色が見たい」「話題のスポットに足を運びたい」などといった目的に加えて、「好きなアーティストのコンサートやイベントに出かける」「大谷翔平選手をロサンゼルスで観戦する」「アニメや漫画・コミックのイベントに参加する」などといった推し活目的の旅も増えており、現地で自分の欲求を満たすことができる「リアル」に楽しむ旅が主流となっている。

ドジャース3試合観戦も

 筆者は野球観戦が趣味で、現地時間3月28日にロサンゼルスで行われた大谷翔平選手と山本由伸投手が所属するロサンゼルス・ドジャースのホーム開幕戦シリーズを現地で観戦したが、まさに「リアル」であり、大谷選手の打球スピードはテレビで見ている以上に速く、興奮する瞬間であった。

 GW前半のドジャースはビジターゲームが続くが、現地時間5月3日(金)、4日(土)、5日(日)にはホームのドジャースタジアムでアトランタ・ブレーブスとの3連戦が行われる。3日、4日の2試合をロサンゼルスで観戦して、現地5日発の便に乗れば6日のGW最終日に帰国することができるほか、筆者がよく利用しているロサンゼルスを深夜1時前に出発するANAの深夜便に5日のゲームを観戦してから搭乗すればGW明けの7日の朝5時過ぎに羽田空港に帰国することも可能であり、最大3試合を楽しむことが可能だ。

 例えば、5月2日の夕方に日本を出発し、現地を5日に出発して6日に帰国する場合の航空券も燃油サーチャージや空港税などの諸経費を含めても往復15万円台で購入可能となっており、現地でのホテルや観戦チケット、食事代、移動費などが必要であるが、GW期間中だからといって価格が急上昇しているわけではない状況になっている。同様にハワイ行きの航空券もGW期間中、往復10万~15万円程度で購入できる便もあるなど、旅行先にもよるが、特にハワイやロサンゼルス方面への航空券はGW期間中に限るとコロナ前よりも割安に販売されているケースもある。

 ただ、現地でのホテルや滞在費用を考えると、全体の費用は増加傾向であるが、それでも大谷選手を現地で生で観戦したい日本人観光客の需要があり、GW期間中のゲームは多くの日本人が訪れることになりそうだ。

注目スポットは「福井」

 日本国内に目を向けてみると、国内の宿泊料金が昨年以上に高騰しており、既にコロナ前よりも平均単価が上がっているホテルも多い。以前のようになんとなく旅に出てお金を使う人は減っており、しっかり自分のやりたいことにお金を使う流れになっている。現在、日経平均株価もバブル期以来の高値水準になっているが、少なくとも旅行にかける費用は増えていない状況だといえる。予約状況において取材を続けてみると、前半の3連休よりも後半の5月3日からの4連休で国内旅行や帰省を考えている人が多い傾向にある。

 冒頭にも触れているが、今年は谷間が3日間あり、この谷間を1日だけでも休むことができれば、かなり割安に旅に出ることができる。今回のGWの注目スポットとして、まずは福井県が挙げられる。

 福井は今年3月16日に北陸新幹線が敦賀まで延伸したことで、東京から乗り換えなしで行けるようになり、新幹線開業以降、観光客が増加している。まだ福井県へ旅行で出かけたことがない人も、実際に訪れてみると素晴らしい場所が多く、修行僧が修行に励む姿を垣間見ることができる「永平寺」、サスペンスドラマの舞台としても有名な「東尋坊」、泉質がよく足湯スポットもある「あわら温泉」をはじめ、近年の福井のイメージとして定着しつつあるのが「恐竜」である。

 北陸新幹線の開業を機にJR福井駅周辺にも写真を撮ることができる恐竜スポットが増え、福井駅から車で40~50分ほどかかるが「福井県立恐竜博物館」の展示は迫力があり、訪れてほしいスポットである。GW期間中は臨時列車も設定されており、ピーク日やピーク時間帯を少しずらすことで指定席券の確保も可能となっている。

「のぞみ」は全席指定

 指定席といえば、東海道・山陽新幹線「のぞみ」は、年末年始に続いて、GW期間中の4月26日(金)~5月6日(振り替え休日)までの11日間は、全車指定席での運転となる。つまり、指定席券を購入できないと「のぞみ」に着席することができないことから、「のぞみ」を利用する場合には早めに指定席券を確保する必要がある。既に5月3日のピーク日を中心に満席になっている列車もある。飛行機についても同様の傾向となっている。

 年末年始の傾向をみると、「のぞみ」が全車指定席になったことで、自由席が引き続き設定されている「ひかり」の自由席の混雑が目立った。「のぞみ」の指定席が確保できない場合は、「ひかり」「こだま」を利用するか、もしくは自由席特急券で「のぞみ」を立席利用することになる。最近ではスマートフォンやパソコンからリアルタイムで予約ができるが、頻繁に空席状況をチェックすると空席が出る場合もあるので、日々チェックすることを心掛けていただきたい。ただ今年は、新幹線・飛行機ともに少し日程をずらすことで席を確保できるので、まずは空席をチェックすることから始めていただきたい。

目立つグルメイベント

 今年のGWは飛行機や新幹線などで遠くへ旅行に出かける人が多い一方、日帰りや1泊などで出かける人も多い。昨年以上にGW期間中のイベントが多く、特にグルメイベントの開催が目立つ。東京スカイツリー(東京都墨田区)では台湾グルメを集めたイベント、お台場(江東区)では世界のビールのイベントや肉フェス、駒沢オリンピック公園中央広場(世田谷区)ではギョーザのフェス、横浜赤レンガ倉庫(横浜市)界隈でもドイツビールやドイツグルメを集めたイベントなどが開催され、昨年以上に多くの人が集まりそうだ。

 また最近の傾向としては、天気予報を見ながら、直前に出かける場所を決める人も多い。高速道路については、NEXCO中日本の発表によると、下りのピークは5月3日・4日、上りのピークは5月3~5日になるという渋滞予測を発表しており、車移動についても後半の4連休に集中し、日帰りや1泊での旅行が多いことも意味している。天気が良ければ、相当な渋滞が予想されることから、車での移動を考えている人は最新の渋滞情報をチェックしつつ、スマートフォンの地図アプリを活用した最短ルートをチェックするのが望ましいだろう。

 日帰りでの旅行も増えるなかで、今年注目なのが静岡県の浜松市である。浜名湖では現在「浜名湖花博2024」が開催中で、GW期間中も多くの花に囲まれながら最新テクノロジーとの融合も含めて堪能することができ、またギョーザ、ウナギ、海鮮などの静岡グルメ、さらには同県内の各店舗でしか食べることができない「炭焼きレストランさわやか」(本社・袋井市)の人気メニュー「げんこつハンバーグ」など、おいしい食べ物も多く今年の注目スポットになりそうだ。間もなく始まるGW、どこも混雑することになるが、いろいろと情報収集をしながら楽しいGWを過ごしていただきたい。

航空・旅行アナリスト 鳥海 高太朗(とりうみ・こうたろう) 1978年千葉県生まれ。成城大学経済学部卒。食品会社、コンサルタント、城西国際大学観光学部助手を経て現在、帝京大学理工学部航空宇宙工学科非常勤講師。専門は航空会社のマーケティング戦略。昨年YouTube「鳥ちゃんねる」を立ち上げ、利用者・専門家双方の視点から情報発信している。

(Kyodo Weekly 2024年4月22号より転載)

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