KK KYODO NEWS SITE

ニュースサイト
コーポレートサイト
search icon
search icon

コナミデジタルエンタテインメントが「エデュテイメント祭り!」開催  ゲームの教育活用セミナーに教育関係者が多数参加

(右から)新機能について説明する開発者の岡村憲明氏とエデュテイメントプロデューサーの正頭英和氏
(右から)新機能について説明する開発者の岡村憲明氏とエデュテイメントプロデューサーの正頭英和氏

 近年、文部科学省のGIGAスクール構想によって1人1台端末、校内ネット環境の整備が進んでいる。しかしながら、使用できるアプリや教育版ゲームの活用などで地域間格差や不満を感じている保護者や教育関係者もいるかもしれない。

  今年1月、学校教育機関向けに「桃太郎電鉄 教育版Lite ~日本っておもしろい!~(以下、桃鉄 教育版)」の無償提供を開始した、コナミデジタルエンタテインメント(東京)は、ゲームの教育活用(エデュテイメント)をテーマに、教育関係者向けのセミナーイベント「エデュテイメント祭り! presented by 桃太郎電鉄」を12月2日に都内で開催し、多くの教育関係者が参加した。

  同イベントでは、「桃鉄」と同様に教育版を展開している「マインクラフト(Minecraft)」(Microsoft) の担当者を招いた特別講演や、「エデュテイメント、教室でやってみた!」「特別支援におけるエデュテイメントの活用」「現場、教育委員会、文科省、3つの立場から語る教育の現状と未来」の三つのワークショップを実施。特別支援学校における活用事例、教育委員会、文部科学省の関係者などを招いたパネルディスカッションなどが行われた。

  「桃鉄 教育版」は、1988年に登場した国民的ボードゲームの「桃鉄」を、学校教育で利用できるよう、WEBブラウザやタブレットなどでの操作を可能にしたデジタル教材。「日本全国を巡って物件を買い集め、資産額日本一を目指す」というゲーム性を生かし、授業を通して地理や経済などが学べる教材として、すでに5千校以上の教育機関が導入。小学校での普及率は約18%に上るという。

  「桃鉄 教育版」は、北海道から沖縄までの7地域と全国の八つから学びたい地域を選択してプレーすることができる。その特徴は、専門家による地理情報の表示、管理ツールによる時間設定、物件編集のほか、ゲーム演出の制限(攻撃カードなど)などにより、教育現場にマッチさせた仕様に開発されているということ。(最新版は今月7日から利用が可能)

  また「桃鉄 教育版」の導入教科では、社会・地理が最も多く、小学校では新聞作りや行ってみたい街の発表などで活用されているという。中学校では「収益率」「金融」「グルメ(食育)」などをテーマにさまざまな授業で活用されており、高校の地域学習では、地元商店街を活性化させるプランニングをゲーム内にアウトプットさせる活用事例が紹介された。

桃鉄活用事例の紹介
桃鉄活用事例の紹介

  そしてワークショップ「現場、教育委員会、文科省、3つの立場から語る教育の現状と未来」では、文部科学省GIGAスクール構想総括担当の武藤久慶氏、京都府の公立小学校教諭坂本良晶氏、大阪府枚方市で教職員研修を担当する浦谷亮佑氏が登壇して、教育関係者とディスカッションが行われた。

ワークショップ「現場、教育委員会、文科省、3つの立場から語る教育の現状と未来」の一場面。左から武藤久慶氏、浦谷亮佑氏、坂本良晶氏
ワークショップ「現場、教育委員会、文科省、3つの立場から語る教育の現状と未来」の一場面。左から武藤久慶氏、浦谷亮佑氏、坂本良晶氏

  ICTやAIを教育現場で活用するための発信を精力的に行っている坂本氏は、ゲームの教育活用=エデュテイメントについて、教育現場や保護者から「どうせゲームでしょ」という否定的な声が少なくないと現状について解説した。さらにエデュテイメントの導入では、教科学習でどのように活用するかなどプランニングが重要で、教育委員会から理解が得られないことが大きな壁になると説明した。

  坂本氏は探求学習で「桃鉄 教育版」と「マインクラフト教育版」の活用事例では、子どもたちがゲーム内で地元地域を紹介する動画を制作して、行政にプレゼンテーションを行った事例を紹介した。加えて坂本氏はエデュテイメントの可能性について「生徒に課題設定することで子どもたちの学びを加速させるブースターになる。そのためには確かな目的や誰にどう伝えるかという意識が必要」と述べた。

ワークショップ「エデュテイメント、教室でやってみた!」の一場面
ワークショップ「エデュテイメント、教室でやってみた!」の一場面

 

  教育委員会の立場から浦谷氏は、「桃鉄 教育版」を積極的に導入した枚方市での活用事例を紹介した。しかし、教育現場にいきなりエデュテイメントを導入することは難しく、導入に際して段階を踏んだプロジェクトの事例や、研究会を立ち上げた事例などを紹介した。

ワークショップ「特別支援におけるエデュテイメントの活用」の一場面
ワークショップ「特別支援におけるエデュテイメントの活用」の一場面

 そして武藤氏は行政の立場から、エデュテイメントの導入で「教育委員会の理解とデジタル環境における地域間格差」についての問題を挙げて、「ゲームに対する否定的な思いを解きほぐす必要がある」と今後の方向性について言及した。セミナーに参加した教師からは、使用アプリの自治体間格差、生徒の入力スキルなどの問題、導入にあたっての管理職へアプローチの仕方など教育現場から切実な質問や相談が相次いだ。

  後半に行われたトークセッションでは、小学校教諭で「桃鉄 教育版」エデュテイメントプロデューサーの正頭英和氏、マイクロソフトの田中達彦氏、桃鉄教育版開発者の岡村憲明氏(コナミデジタルエンタテインメント シニアプロデューサー)が登壇した。

特別企画トークセッションの一場面
特別企画トークセッションの一場面

 

 冒頭、正頭氏は「桃鉄 教育版」プロデュースの経緯について、「例えばぶり大根を渡した時においしいなどと評価しますが、大根を渡したら『おいしいね』ではなく、どう料理しようかと考えます」と述べ、「日本の先生は素材の工夫がすごいので、桃鉄は桃鉄の素材のままで提供しようと考えました」と説明。

 また正頭氏はエデュテイメントの重要性について、「2023年のAIの登場により、興味や関心が多様な問題の解決に特に重要になった」と言及。さらに子どもたちの8割以上が自分のやりたいことが分からない中、2割の子どもたちは、自分の「体験」にひもづけてやりたいことを明確にしているので、「だからこそ体験の提供は重要」だと強調した。

 マイクロソフトの田中氏は、「マインクラフト」のユーザー数について、日本は世界で2番目に多いが「マインクラフト教育版」のユーザー数はオーストラリア(人口約2500万人)の約1/5でしかなく、日本の教育現場ではエデュテイメントの浸透が遅れていると指摘した。また岡村シニアプロデューサーは、開催したエデュテイメント祭りについて、「もっといろいろなゲームメーカーに参入していただいて、情報共有も含めて今後は一緒にやっていきたい」と期待を寄せた。

編集部からのお知らせ

新着情報

あわせて読みたい