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文化、食、自然の魅力あふれる飛越エリアに行こう 【1】文化編

母屋だけで512㎡あり、33畳の大広間や30mに及ぶ土間通路がある

 岐阜県飛騨地域と富山県南部地域は、古くから経済的、文化的にさまざまな結びつきがあり、飛越と呼ばれている。庄川峡や西穂高岳などの豊かな自然に恵まれ、多くの体験ができる上、山の幸と海の幸、両方を堪能できる。馬場家や森家、飛騨の古い町並みなどの伝統的な家屋や、井波彫刻といった歴史的な遺産も数多く存在する、自然・食・文化の宝庫だ。
今回は飛越エリアの文化を紹介する。

北前船で栄えた廻船問屋の馬場家、森家

 富山市北部の岩瀬エリアには江戸時代から明治時代にかけて、廻船問屋が20軒ほど連なっていた。その筆頭が馬場家だ。岩瀬五大家の一つであり、北海道と関西を結ぶ北前船で巨万の富を得て建てられた旧馬場家住宅は、東岩瀬最大級の町家で、2016年に国の登録有形文化財となった。
若くして夫を亡くした家主の馬場はるは、85歳になるまで商売と子どもたちと家を守りぬいた。また、はるはそれまで富山になかった旧制高等学校を創設するために多額の寄付を行うなど、馬場家が築いたばく大な財を教育に還元した。富山県教育の母と呼ばれている。

母屋だけで512㎡あり、33畳の大広間や30mに及ぶ土間通路がある

 馬場家では、くぎ隠しに松のモチーフが使われていたり、庭の灯篭(とうろう)の形がそれぞれ異なっていたりと、気付かないような所にも細かなデザインが施されている。建物の各所にはガラスが多用されており、暗くなりがちな日本家屋に光を取り込む工夫が見られる。また、水回りでもステンドグラスが色鮮やかに光っていた。繊細なデザイン一つ一つに当時の繁栄が見てとれる。

室内を彩るステンドグラス

 馬場家の米蔵をリニューアルして2020年にオープンしたのが「KOBO Brew Pub」。チェコ人のオーナーが管理し、チェコスタイルのクラフトビールを醸造している。蔵の高い強度を生かし、内部をリノベーションして当時の蔵をそのまま使っているという。

当時の米蔵を醸造所として活用している

 ビールは全部で10種類。地元の呉羽梨を使った馬場ヴァイツェンや、富山の地酒である満寿泉の酒かすを使ったビールなどを製造・販売している。1カ月に1回仕込みがあり、そのタイミングで提供できるものが変わるので、定番も、季節限定のフレーバーも両方味わいたい。

チェコスタイルのビールを醸造するタンク

  1878(明治11)年に建てられた森家も岩瀬五大家の一つ。トイレに世界遺産の屋久島の屋久杉を使っていたり、小豆島の50トンの一枚岩を土間に置いていたりと、立派な素材を活用して建てられた。

 入ってすぐのところにある一番広い「オイの間」は商談の部屋で、川が流れるようによどみなく商売が流れるようにという意味を込めて、畳のデザインが川の流れをイメージされている。また、上座の中央に畳が半畳あり、商売“繁盛”を願ってデザインされた。森家は、1994年に富山県の江戸時代以来の民家建築の構造・意匠を引き継いだ優れた意匠の町家として、国の重要文化財に指定された。

オイの間。中央の畳の敷き方は川の流れを表現している 写真提供:(公社)とやま観光推進機構

「瑞泉寺」で井波彫刻に圧倒される

瑞泉寺のお堂。手の込んだ彫刻はどれも見応えがある

  北陸最大のお堂で知られる瑞泉寺。瑞泉寺のある富山県南砺市の井波地区は彫刻が有名で、町全体が日本遺産に認定されている。バス停の看板も木で彫られており、あちこちに木彫りでできた猫がくつろぐ「木彫りのまち」だ。瑞泉寺は町の中でも象徴的な場所で、信仰の場としてはもちろん、数多くの素晴らしい木彫りの作品も楽しむことができる。

町のあちこちで木彫りが楽しめる

 木彫りのまちと呼ばれるようになったきっかけは1762年の火災の後に、京都の東本願寺の彫刻師が瑞泉寺を再建したこと。寺の入口の山門には、雲水一疋龍(うんすいいっぴきりゅう)がにらみを利かせている。この龍は、後の大火で山門が火事になった時に門から飛び出して火を消したという伝説がある。迫力あるこの龍も一見の価値がある。

雲水一疋龍の瞳にだけ色が入っている

 瑞泉寺の「太子堂」には聖徳太子の2歳の尊像がある。この聖徳太子の像は基本的に寺の300年続く伝統行事として毎年行われる太子伝会の時にだけ見ることができる。太子堂の屋根を支えている手挟みは1本の木からできており、その一つ一つにも龍や鳳凰(ほうおう)などの細かい彫刻が彫られていた。丁寧に細かく彫られた手挟みが、当時の技術の高さを表している。

太子堂の手挟みはそれぞれデザインが異なる

飛騨古川の町並みを守る古民家風ホテル

 岐阜県のJR高山本線飛騨古川駅から歩いて10分ほどのところにある宿「SATOYAMA STAY NINO-MACHI」は古い町並みを守るというプロジェクトをきっかけに、町になじむようあえて木造で建設された。建物の木は伊勢神宮の式年遷宮で御神木にも使用される岐阜県の東濃ひのきで造られている。宿の家具もほとんどがオーダーメードという。

 NINO-MACHIのほかにも、古民家をリノベーションしたTONO-MACHIもある。

飛騨古川の町並みになじむデザイン

 コンセプトはイタリア発祥の、古民家を客室に見立てる分散型ホテル「アルベルゴ・ディフーゾ」。町中の居酒屋などで地元の食事を楽しんでもらうため、夕食の準備はない。宿を管理している山田慈芳さんは「この宿を拠点に町を楽しんでもらいたい。また、普段の生活から離れてこの静けさも味わってほしい。そんな思いも込めて、時計もテレビも置いていません」と語る。

 古川は江戸時代の古い町並みや白壁の土蔵、色とりどりの鯉が泳ぐ瀬戸川があることで知られる。こだわりが詰まった宿で、旅の疲れをいやしながら町を散策してみては?

ゆったりと過ごせる広めの和室

かわいらしい家具や小物も地元の職人によって作られたもの

室町時代の風景を眺めながら蒸し寿司を

 武将・江馬氏は、室町時代から戦国時代にかけて、姉小路氏や三木氏と争いながら北飛騨(現在の岐阜県北部)を治めていた。

 昭和40年代に室町時代の枯れ山水の庭園の石が出土したことで、ここが江馬氏館の跡地と判明し、庭園や館が同じ場所に復元された。1980(昭和55)年には国の史跡に認定されている。

室町時代の枯れ山水が復元された庭園

 江馬氏館では、江馬氏が客人をもてなしたといわれている、珍しい蒸し寿司のランチを堪能できる。昔は正月や祭りの際にちらし寿司を食べていたが、寒い時期は冷たくなってしまう。それをおいしく食べる方法はないかと、蒸して食べ始めたのがきっかけで、今では神岡の名物になっている。

 雄大な山々を借景にした枯山水を見ながら蒸し寿司をいただく。案内をしてくれた「神岡街歩きガイド」の霜出邦道さんは、まわりには高い建物が一切ないので「館から眺める景色は戦国時代に江馬氏が見ていた景色とそれほど変わっていないのではないでしょうか」と教えてくれた。

レンコンやたまごが乗った神岡名物の蒸し寿司

 VISIT岐阜で江馬氏館ツアーを予約すると、江馬氏館跡庭園と蒸し寿司に加えて、地元の観光ガイドがひだ宇宙科学館カミオカラボや神岡城、高原郷土館を丁寧に案内してくれる。見どころも盛りだくさんの飛騨市を満喫しよう。

 文化遺産が数多く残る飛越エリア。日常から一昔前にタイムスリップした気分になれる。歴史に触れて知識を深める旅はいかが?

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