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【キウイ、秘密を探る旅】<下> NZ市民も多彩に調理、「健康と食」を楽しむ 95%が輸出、雇用と農家の収入に影響大

キウイフルーツはさまざまな料理に利用できる。ダニエラ・アーミテージさんがニュージーランドの伝統的なデザート「パブロバケーキ」を作ってくれた。

 

 キウイフルーツの産地で、世界50カ国以上に輸出しているニュージーランド(NZ)。現地の人はどのようにキウイを食べているのだろうか。そのままフルーツとして食べるのはもちろんだが、さまざまな料理に利用できそうだ。栄養士のダニエラ・アーミテージさんがオークランド市内の実家で、実際にいくつかの料理を作ってくれた。

アーミテージさんの実家。両親と妹も出迎えてくれた=オークランド

 アーミテージさんは、栄養士と生理学の学士号を取得し、料理・菓子専門学校「ル・コルドン・ブルー」のロンドン校で料理を学んだ経験を持つ。現在は栄養価を考えたレシピアイデアを伝えるデジタルプラットフォームを創設し、情報発信している。

 ▼多様な文化を融合

 そもそもニュージーランド料理とはどんな料理なのだろう。アーミテージさんは、「NZ料理はさまざまな文化の影響を受けている」として、四つの特徴を挙げた。①先住民マオリの伝統的な食べ物の影響②英国・欧州の入植者が導入した食材・調理技術③南太平洋の近隣諸国の影響④現代的で幅広い国際料理―。

 キウイフルーツについては、栄養効果を強調した。特に「腸の健康効果」と「豊富なビタミンC」について説明してくれた。「キウイには不溶性と水溶性、両方の食物繊維がある」と指摘。「慢性便秘症の79人を対象とした研究で、1日2個のキウイを4週間食べると、便の硬さや排便頻度が改善されることがわかった」という。「ビタミンC豊富なキウイ2個で、1日の推奨ビタミンC摂取量の100%以上取ることができる」とも教えてくれた。

「パブロバのルビーレッド キウイソースがけ」を作るアーミテージさん。祭日やクリスマスによく食べ、キウイのトッピングが多いという。

 ▼皮のまま食べてもOK

 アーミテージさんは「キウイフルーツは健康的な食事の一部として毎日の食事に加えるほか、おやつとしても向いている」として食べ方を列挙した。「スムージーに加える」「フルーツの串としてベリーなどとともに」「自家製アイスキャンディー」「ヨーグルトと一緒に」などなど。

 生で食べる時は半分に切り、スプーンで果肉をすくい取るのがお薦めとか。ニュージーランドでは皮のまま食べる人もいるという。この日は「パブロバのルビーレッド キウイソースがけ」「グリーン キウイとはちみつゼリーのトライフル」「サンゴールド キウイとミントを使った爽やかなサルサ」の3品を作ってくれた。

「トライフル」は英国発祥のNZ伝統的なデザート。「グリーンキウイの程よい酸味がうってつけ」だという

「ニュージーランドは人口より羊の方が多い」と話すアーミテージさんの父トニー・アンコビッチさんはラム肉を焼いてくれた。

ラム肉に乗せた「サンゴールド キウイとミントを使った爽やかなサルサ」

 ▼腸の健康の重要性

 もう一人、栄養士のアナリース・メイさんは、ゼスプリ本社で「腸の健康セミナー」と社内のキッチンスタジオで料理のデモンストレーションを披露した。

アナリース・メイさんは栄養学者。「腸と脳はいくつもの点で物理的、生化学的につながっている」と解説した=タウランガのゼスプリ本社

 セミナーでは「腸と脳の関係」についての重要性を話してくれた。メイさんは「人体に住み着く40兆の細菌の大部分は腸内に存在する」と説明。そのため「腸の健康は気分や免疫の働き、メンタルヘルスなどに関わってくる」という。近年「腸内フローラ」という言葉を聞くようになったが、バランスの良い腸内細菌をつくり出すことが人間の生活にとって大事なようだ。

 メイさんは前菜として「キウイとアボカドを使ったサルサのレタスカップ」、メインは「マリネステーキ、キュウリのサラダ添え」、デザートには「小切りにしたキウイとリンゴのクランブル」を作ってくれた。

「マリネステーキ」を作るアナリース・メイさん=ゼスプリ本社

 ▼ゼスプリ・システム

 ニュージーランドでは、そのまま食べるだけでなく、多彩な料理の食材としてもキウイフルーツを利用していた。一大産地を抱えるNZから、どのような過程を経て日本に届くのだろうか。

 海外への輸出・販売を手がけるゼスプリ インターナショナルは、農園から店頭まで一貫して管理する「ゼスプリ・システム」を採用している。①農園での栽培・収穫②残留農薬検査③パッキング(箱詰め)を経て保冷船で日本へ輸送。日本での輸入検査を終えても港の保冷倉庫で保管し、食べ頃になるまで「追熟」する。

 このうち、ゼスプリ本社があるタウランガに近いパッキング施設(選果場)を見た。

広い選果場では大勢が箱詰め作業に従事していた=タウランガに近いベイ・オブ・プレンティ地方のテ・プケ

 ▼日本人のワーホリも

 ニュージーランドで生産されるキウイフルーツの約95%が輸出用だという。選果場は生産農家がオーナーで、ゼスプリはNZ国内で38の選果場を使用している。その中のオークランドなどNZ北東地域、約900軒の果樹園から収穫されるキウイが集まる施設「イーストパック・クォーリーロード」を見学。収穫期とあって多くの職員が忙しそうに手を動かしていた。

「形や軟らかさなどをチェックし、はじかれたキウイは輸出せず動物の餌になることも」と話すクリート・アクハタさん

 案内してくれたのはクリート・アクハタさん。収穫期などには約4000人が働くが、季節要因が大きいため、40%は季節ワーカーで、トンガやサモア、パプアニューギニアといった周辺諸国からの労働者が多いという。アクハタさんは「ワーキングホリデーの日本人もいる」と教えてくれた。時給も日本の最低賃金よりは高いようだ。

選果場には収穫されたばかりのキウイが大量に運ばれる

 施設ではベルトコンベヤーで運ばれたキウイをサイズごとに振り分け、18個、22個、25個入りなどに分けられて箱詰めされる。ほとんどが輸出用だが、一定の基準を満たさないものは一部国内用に出荷される。生産農家にとっては、ここでの振り分けが収入を左右することになる。

収穫期にはニュージーランド周辺諸国から働きに集まってくるという

 ▼“秘密”を食べる

 日頃、何気なく食べているキウイフルーツ。現地を訪ねてみると、「20年間かけて開発した新品種」「腸内環境や脳への影響」「厳選されたキウイだけが輸出される管理体制」などさまざまな“キウイの秘密”を知ることができた。

 ニュージーランドで収穫を終えたキウイフルーツが今、ちょうど日本の店頭にうずたかく積まれている。見た目は地味だが、切ってみるとカラフルな果実が姿を現す。料理への活用も多彩だ。この時期に味わってみたい。

オークランド市内のスーパーはさすがにキウイフルーツがいっぱいだった(4月中旬)

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