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食べないなんて、もったいない! “未利用魚”を活用して「エシカルフード」を開発

未利用魚活用プロジェクトのメンバーたち
未利用魚活用プロジェクトのメンバーたち

 たくさん取れるのに、食べればおいしいのに、さまざまな理由で食用にならず、飼料中心になったり廃棄されたりする魚たち。そんなもったいない「未利用魚」を商品化して広めていこうという取り組みが行われている。

 このような地域の課題に対して、地域・自治体・企業などが単体で挑んでも、なかなか解決することが難しい。CCCMKホールディングス(東京)は、同社が発行する「Tカード」に蓄積されたデータを活用し、生活者や業界を超えたさまざまな人たちと対話を重ねながら、“持続可能な食”を目指した生活について考える共創型プラットフォーム「Tカードみんなのエシカルフードラボ」に取り組んでいる。そのシステムを利用し、愛媛県・八幡浜の「アイゴあふれるオイル漬け」と千葉県・船橋の「コノシロやわらか煮」の2商品を開発し、このほど発売された。

 愛媛県八幡浜市で取れる「アイゴ」は、太く鋭いとげを持ち、食用の処理が難しいこと、特有の臭いを防ぐためには適切な鮮度処理・加工が必要となることから、ほとんどが食用として活用されていない。さらに、アイゴが海藻を食べることが一因とも指摘される藻場の「磯焼け」も問題になっているという。そのアイゴをワインに合うプレミアムおつまみ「アイゴあふれるオイル漬け」に。八幡浜産のアイゴ、愛媛県産温州みかんの皮、愛媛・大州産の木おけ仕込みしょうゆ、てん菜糖、オーストラリア・クリスマス島製造の食塩など、素材にしっかりこだわった。また、加工の段階で出るアイゴの骨や頭は、魚のアラを飼料や肥料にリサイクルする加工業者に回し、商品製造過程での魚の廃棄ゼロを実現。ナッツのおいしさが溶け込んだエキストラバージンオリーブオイルごと、たっぷりバゲットなどにのせてもおいしい。パスタやサラダなど、アレンジも豊富にできる。120g、メーカー小売希望価格税込み935円。「信濃屋」(東京)六本木ヒルズ店で先行販売し、7月中旬以降に信濃屋全店で展開する。

「アイゴあふれるオイル漬け」
「アイゴあふれるオイル漬け」

 千葉県・船橋漁港に揚がる江戸前(東京湾)の「コノシロ」は、幼魚の「シンコ」「コハダ」のうちは江戸前ずしの代表的なネタとして高値で取引されるが、成魚になると小骨が口に障るのが難点。食用にするには手間がかかるため、飼料などとして使われることが多いが、取引価格はかなり低いという。そのコノシロを、下処理や加工の技術を駆使し、食べやすい「コノシロやわらか煮」に。しょうが・しょうゆ・酒・みりん・、てんさい糖のみで味付けし、ふっくらやわらかに仕上げた。クセがなく上品なコノシロの味わいを引き立てるため、甘さは控えめに。しょうがのさわやかな香りとすっきりとした後味で食べ飽きないご飯にピッタリの味わい。料理のアレンジがしやすいよう、汁を多めに入れている。パッケージには、生物由来の資源から成分を抽出したバイオマスインキを使用している。常温で1年間保存可能。1尾同474円。オーガニック・自然食品「こだわりや」(東京)全店で扱う。

「コノシロやわらか煮」
「コノシロやわらか煮」

 CCCMKホールディングスは2018年に、「五島の魚プロジェクト」を実施。離島のため距離やコスト面の輸送課題を抱える長崎県・五島の未利用魚「ブダイ」を使った「五島のフィッシュハム」を、地元事業者・行政などの地域関係者、流通企業、T会員との意見交換をしながら開発した。

 今回は、2022年7月にプロジェクトを共に進めていくパートナーを決める「キックオフ・マッチング・セッション」を開催し、愛媛県八幡浜×「信濃屋」、千葉県船橋×「こだわりや」のコラボが決定。その後、各チームのプロジェクトメンバーによって、商品の企画開発・製造・販売へのステップを踏んだ。商品開発の過程では、約1.3億人のTカード会員のカードから得られるさまざまなライフスタイルデータを基に、「消費者に好まれる商品」「利用シーン・味・パッケージ」「ターゲット層やそのターゲットに向けた商品の考案」「商品の訴求の仕方」などを話し合った。環境問題や地域課題の解決に寄与する“エシカル”な食生活を取り入れているT会員も参加して生活者視点を提示した。

 例えばマグロやサバなどの人気の特定魚種に価値を集中させず、おいしくてもさまざまな理由で食用になっていなかった未利用魚にスポットを当て、価値を分散させることで、魚資源の枯渇を防ぐことを目指していく取り組み。アイゴもコノシロも、まずは味わってみれば、「世間に知られていないけれど、こんなにおいしい魚があったんだ!」と多くの人が思うはず。それはまた、知らなかった地域のことやその地域が抱える課題を知るきっかけにもなる。未来につながる食の循環を皆で作っていきたい――それが、このプロジェクトに込められた思いだ。

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