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怪しい空気になったら・・・ 【辛酸なめ子 コラムNEWS箸休め】

 もし、飲み会で怪しい雰囲気になったり、誰かが権力者の相手をしなければならない状況になったりしたら、どのように振る舞えばよいのでしょう。松本人志氏を巡る報道を受けて、(絶対呼ばれないですが)自分がその場にいた場合を考えてしまいます。威圧的なオーラに負けそうですし、もし断ることができても、代わりの誰かが〝献上〟されてしまうかもしれない。ホテルの火災報知器などを作動させ、皆でその隙に逃げるくらいしか思い付きません。

 これを機に、「アテンド」という男性中心の悪しき風習を見直したほうがいいように思います。今回の件に限らず、金と名誉を手にした男性は、女性をはべらせたがる傾向にあるようです。ある韓流スターが50人くらいの女性を集めてホテルでパーティーしていた、ハワイ在住の某人気画家も来日時ホテルに30人くらいの女性を集めていたという噂もあります。もちろん、その人のファンだったら一緒に時間を過ごせるのはうれしいことでもあるかもしれません。呼ばれる女性は厳選されていると思いますが、せっかく美人に生まれても、お持ち帰り要員みたいに扱われてしまうのはさびしいです。

 男性の方も権力を誇示したいのかもしれませんが、飽くなき欲求は満たされることがなく、むなしい行為です。猫カフェで餌を買って、猫をはべらせて楽しそうなおじさんくらいが罪がなくていいような・・・。

 コロナ禍は飲み会が開かれなくなって、お店的には大変でしたが、内心ホッとしていた人も多そうです。女性集めに奔走していた若手芸人もその時期は平和に暮らせていたのではないでしょうか。

©️2024 Nameko Shinsan

©️2024 Nameko Shinsan

 コロナ禍が明けて、世の中ではまた飲み会が活況です。もし飲み会で下心の気配を感じたら、女性はまったりした空気にならないようハキハキとしゃべるのがおすすめです。また、ギラギラした欲望をそぐために、仕事の夢やマネープランなどを語るのもいいかもしれません。肉体的にエグい話をして萎えさせる方法も。先日、男女が食事をしていて、女性が爪がはがれた時の写真を男性に見せて引かれる場面に遭遇しましたが、それもその後、変なムードにならないための牽制(けんせい)だったのでしょうか。

 権力を持つ男性やその〝手下〟があの手この手で籠絡しようとしてきた場合、女性側も対抗する防御策を常に考えておいたほうがいいでしょう。退廃的な飲み会の空気を正すのは自分くらいの自信を持って・・・。

辛酸なめ子(しんさん・なめこ)/漫画家、イラストレーター、コラムニスト。1974年東京都生まれ、埼玉県育ち。武蔵野美大短期大学部卒業。著書に「女子校育ち」(筑摩書房)、「スピリチュアル系のトリセツ」(平凡社)、「無心セラピー」(双葉社)、「電車のおじさん」(小学館)、「大人のマナー術」(光文社新書)など多数。

(KyodoWeekly 2024年1月29日号より転載)

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