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癒やされないマッサージ 【蝶花楼桃花 コラムNEWS箸休め】

 マッサージのために働いているといっても過言ではない時代があった。噺家(はなしか)って、ただ座ってしゃべってるだけに見えて、けっこう体じゅう凝りまくるのよ。 

 駅前のクイックマッサージや、エステのようなオイルマッサージ、アクロバティックなタイ古式マッサージ・・・ありとあらゆるマッサージに行くのが軽く趣味化していた。私の好みは、指圧は強めで、話しかけてはこないコミュニケーション放置タイプ。

 これであれば、男性女性どちらでもウエルカムだ。マッサージ師さんと会話を楽しみ、それが好きでストレス発散になるような方もたくさんいるだろうけど、私はリラックスしに行くところと思っているので、極力会話は減らしたい。

箸休め
筆者近影(撮影:御堂義乘)

 マッサージに没頭したいのよ。そんな時に、一番嫌な質問は「ご職業はなんですか?」、これだ。「着物関係の仕事です」と、うそをついているような、いないような返事と決めている。これで勝手に、着付けの先生や呉服屋勤務だと勘違いしてくれるのだ。

 「落語家です」なんて言おうものなら、矢継ぎ早に質問が飛んできて、仕事のようになってしまうか、変な人扱いされるかどちらかの結末だろう。

 あとは、気持ちが良いかをやたらと聞いてくるのも困る。数分に1回聞いてくるから、「気持ち良いですよ」と何度も言っていたら、帰りがけ「お客様に気持ち良いですと言われるのが、僕の癒やしなんです」と言われた時は、こちらがお代を請求したい気持ちになった。私が癒やされに来たのに!  キィ!  ってね。 

 でも時に値段ではなく、相性のいいマッサージ師さんに出会えた時のトキメキは恋愛のごとくだ。

 とにかく職人のように、無言で私の凝りをほぐそうとしてくれる。リラックスし過ぎて、寝入ってしまうような。

 なんだか、マッサージ=恋愛のようになってきた。詮索せずに、自分の理想を相手に求めない、そんな人がいいってことだね。空気や、感覚の合う人ってことだもん。

 あれ?   これって・・・無言で「自分、不器用ですから」の高倉健さんってこと?   書いてて気がついちゃった。私の〝任侠映画好き〟がこんなところにも!? (これについても、いつか書かせてもらいますね)。これからは私の好みのタイプに〝マッサージのうまい高倉健のような人〟を追加しよう。

【KyodoWeekly(株式会社共同通信社発行)No. 2からの転載】

桃花流おいしい食べ方 【蝶花楼桃花  コラムNEWS箸休め】 画像2

蝶花楼桃花(ちょうかろう・ももか)/東京都出身。春風亭小朝さんに弟子入り後、二ツ目・春風亭ぴっかり☆時代に「浅草芸能大賞」新人賞を受賞。2022年3月、真打ちに昇進し高座名を「蝶花楼桃花」と改める。昇進披露興行、初主任興行、企画にもかかわった全出演者女性による「桃組」はいずれも大入りを記録。今年4月、東京・名古屋・大阪で「春の独演会」を開催。

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