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MZ世代に「おまかせ」ブーム 【平井久志×リアルワールド】

 韓国の国民1人当たりの名目国内総生産(GDP)は日本とほぼ同じ水準になっている。そうした中で、韓国のMZ世代(ミレニアム世代+Z世代=1980~2010年生まれ)を中心に「おまかせ」がブームになっている。

 韓国では、高級すし店などで以前から店側に料理を任せる「おまかせ」メニューがあったが、年配の高所得者がこうした店で食事をするイメージが強かった。

 しかし、2020年ごろから、この「おまかせ」が高級すし店から居酒屋、レストランなどにも拡大、最近ではカフェなどでも「おまかせ」がある。

 コーヒーの「おまかせ」はいろいろな種類のコーヒーをゆっくりと飲ませるスタイルで、「コーヒー」と「おまかせ」を合わせた「コマカセ」という新語が生まれた。紅茶の場合は「ティマカセ」だ。焼き肉店では牛肉のおまかせが「牛」(韓国語でウ)と合わせて「ウマカセ」という。韓国の伝統料理である「スンデ」(腸詰め)にまで「おまかせ」が流行(はや)っている。

 しかし、問題は価格である。「おまかせ」という言葉が付くだけで、価格はアップする。もちろん店によって価格は千差万別だが、高級すし店などもケースによっては数10万ウォン(数万円)もする高いものもある。それまでの「コース」を「おまかせ」と名前だけ変えて値上げするという批判も出ている。

 最近の「おまかせ」ブームを支えているのは年配の高所得者ではなく、MZ世代であることも興味深い。

 MZ世代は、「おまかせ」を注文し、SNSで写真や動画をアップし、これを見た人たちがまたその店を訪れるという消費の連鎖が起きている。「おまかせ」をSNSにアップすることが、MZ世代の「プチぜいたく自慢」だという指摘もある。

 この「おまかせ」を巡って面白いアンケートがあった。ソーシャルマッチングアプリ「正午のデート」が利用者1万2千人を対象に、「初めてのデートで相手が『おまかせ』料理の店で会うことを提案したら、どうするのか」という調査だった。

 男性は、「行って割り勘にする」がトップで31%、その次が「行って自分が払う」で28%、「他のメニューを提案する」で21%という順だった。

 女性で最も多かったのは「他のメニューを提案する」で38%、以降は「行って割り勘にする」で27%、「デートを断る」で15%だった。

 韓国でも、特に若い世代には「割り勘」が少しずつ広がっているが、既成世代では男女の場合は男性が、職場では上司が支払う文化が強く残っている。

 初めてのデートで高価な「おまかせ」は負担と考える人が多かったようだ。

 同じアンケートで「初めてのデートで食事代を払う場合、最大いくらまで使えるか?」という質問には男女とも「5万ウォン(約5千円)」がトップ(男性42%、女性43%)だった。

 一部では日本語の「おまかせ」という言葉を使わず、韓国語を使うべきだという意見も出ているが、韓国で「おまかせ」は根付くのだろうか?

平井久志(ひらい・ひさし)/共同通信客員論説委員。2002年、瀋陽事件報道で新聞協会賞、朝鮮問題報道でボーン・上田賞を受賞。著書に「ソウル打令 反日と嫌韓の谷間で」(徳間文庫)、「北朝鮮の指導体制と後継 金正日から金正恩へ」(岩波現代文庫)など。

(KyodoWeekly 2023年5月29日号より転載)

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