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ご当地パン萌え再び 【蝶花楼桃花 コラムNEWS箸休め】

 「チョコブリッコ」。なんとも斬新なネーミング。これは、北海道のご当地パンである。

 ご当地パン萌(も)えな私。いろいろな土地へ伺う落語家になってから、おのずと増えた小さな趣味。おいしいパンが食べたいのとは少し違って、誤解を恐れず言うならば、それが目の玉が飛び出るうまさでないことは承知なのである。素朴な味やパッケージ、その商品にまつわる歴史に興味がある。

 しかし、このチョコブリッコとは、まだ自分が落語家になるとはみじんも思っていない中学生のときに出合っていたのだ。しかも、東京で。私は高校生まで渋谷区の恵比寿に住んでいた。代官山駅から数分のところ。こう言うとお金持ちだとか、オシャレな家を想像するかもしれないが、とんでもない。私が子どものころの恵比寿はガーデンプレイスもなければ、アトレもない。だだっ広いエビスビールの工場あたりで、よく泥警(どろけい)をしていたものだ。家もこぢんまりとした社宅だし、ごくごく普通の家庭の子どもであった。

 そんな中学生の少女桃花は、学校帰りに恵比寿南2丁目にあったコンビニ「am/pm」で、チョコブリッコを発見。銀色の袋にアイドルの女の子が歌っている、見たことのないパッケージ。パンというよりはケーキに近く、チョコレートスポンジの間にはクリーム、まわりをチョコレートでコーティングしたもの。

 これが・・・なんともおいしいッ!  また食べたいと思い、他のコンビニで探すも見つからず。なぜか恵比寿南2丁目の「am/pm」にしかなかったのだ。しかも入荷はいつも一つか二つ。遅めの時間になると売り切れてしまうので、やがて私は入荷時刻までチェックするようになっていた。なぜ、この店舗にだけ置いてあったのかは謎である。

 そんな大好物だったチョコブリッコも、高校生になり、実家も引っ越しをした私は出合うことはなくなり忘れていく。

 そんな中、先日、寄席の出番前に松坂屋上野店の「ご当地パンフェア」で、現代テイストになったチョコブリッコにナント! 再会を果たしたのだ。

 昔のほうが分厚かった記憶があるのは、私が小さかったからか、それとも物価高騰のための姿なのかは分からない。

 歳(とし)を重ね、記憶の中でのチョコブリッコなら食べ切れる自信はないが、幸か不幸か中年桃花にも食べ切りサイズ。懐かしのチョコブリッコは、やはりいろんな記憶とともに目の玉が飛び出ない程度に最高のおいしさだった。

蝶花楼桃花(ちょうかろう・ももか)/東京都出身。春風亭小朝さんに弟子入り後、二ツ目・春風亭ぴっかり☆時代に「浅草芸能大賞」新人賞を受賞。2022年3月、真打ちに昇進し「蝶花楼桃花」と改め、七代目・馬楽さんの没後途絶えていた歴史ある亭号を復活。昇進披露興行、初主任興行、企画にもかかわった全出演者女性による主任興行「桃組」はいずれも大入りを記録。

(KyodoWeekly 2023年5月29日号より転載)

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