中小企業の半数以上が新規顧客・販路の開拓に取り組み 将来見通しには悲観ながらも、海外進出に挑戦する企業も
大同生命保険(大阪市)は全国の中小企業経営者を対象に、景況感に加えさまざまなテーマを設定したアンケート調査「大同生命サーベイ」を2015年10月から毎月実施している。2025年4月度のテーマは「新規顧客・販路の開拓」。全国の5985社の中小企業経営者を対象に、4月1日から28日にかけて訪問、またはZoom面談で調査を行った。
■将来見通しが悲観的な中、半数超が新規顧客・販路の開拓に取り組み
「現在の業況」(業況DI)は▲12.3pt(前月差+0.8pt)で改善したものの、「将来の⾒通し」(将来DI)は▲1.3pt(前月差▲1.2pt)と悪化。米国の関税施策等、先行き不透明の中、将来の見通しに対して、前月からマイナスに転じ、マイナス幅も拡大。悲観的な見方が広がっている。
そのような中、新規顧客・販路の開拓に「取り組んでいる」企業は、前回調査と比べ若干減少したものの53%と半数を超えた。従業員規模が大きいほど積極的に取り組み、規模が小さい企業では「取り組む必要がない」と回答する企業の割合が高かった。業種別では「製造業」「卸・小売業」「サービス業」で、半数以上の企業が取り組みを行っていた。
開拓に向けての具体的な取り組みとしては、「新しい商品・サービスの開発」(36%)、「自社ホームページやSNS情報発信」(32%)に取り組んでいる企業が多かった。業種別の傾向としては、「製造業」「卸・小売業」では「新しい商品・サービスの開発」に取り組む企業の割合が多い一方、「建設業」では「自社ホームページやSNSでの情報発信」「従業員教育の強化」に取り組む企業の割合が高くなっていた。
新規顧客・販路の開拓に「取り組んでいる企業」の直近1年間(2024年4月~2025年3月)の「顧客数の増減」は、50%が「増加した」と回答し、「取り組んでいない企業」(15%)との差が明確になった。売り上げについても同様に、新規顧客・販路の開拓に「取り組んでいる企業」(48%)と「取り組んでいない企業」(24%)の差が明確になった。顧客数・売り上げともに、「宿泊・飲食サービス業」「教育・学習支援業」で「増加した」企業が多かった。
■課題と期待する支援は?
新規顧客・販路の開拓に取り組んでいる企業は、課題として「商品サービス力の強化」(41%)、「開拓に必要な人材の確保」(35%)、「市場・顧客ニーズなどの情報収集・調査分析ノウハウの習得」(35%)を挙げた。期待する支援(行政支援以外も含む)は、「補助金・助成金などの支援」(42%)、「取引先の紹介」(41%)の割合が高かった。
新規顧客・販路開拓上の工夫について経営者からは、「IT活用・SNSでの発信などのノウハウをスタッフ全員で共有し、発信の頻度や情報の視点を増やした」(その他サービス業/南関東)、「他社ができないようなことなど提案型の商品やサービスを提供することでお客さまがお客さまを呼んでくださり、新規顧客が増えた」(製造業/北陸・甲信越)、「定期的にオリジナルの新商品開発を行っている」(製造業/東海)などの声が寄せられた。
■海外進出に挑戦、前向きな企業も
海外進出についても尋ねた。「海外進出をしている(過去、検討中含む)」と回答した企業は10%。「関心はあるが具体的に取り組めていない」と回答した企業は11%だった。業種別では、「製造業」(19%)・「卸・小売業」(12%)の順で多かった。従業員規模別では規模が大きくなるほど、そして若年層の経営者ほど、「海外進出している」と回答する割合が高かった。
海外進出している国で最も多かったのは「中国」(40%)で、以下、「ベトナム」(25%)、「台湾」(24%)、「タイ」(24%)と、アジア圏の国が上位に入った。
海外進出の課題は、「信頼できるパートナーの確保」(51%)が最多。経営者からは、「現地の方と良好なコミュニケーションが取れるよう外国人の従業員を雇用している」(製造業/北陸・甲信越)、「今後に向けてSNSを通じて多言語での発信を行っている。特に海外のインフルエンサーで自社に関係する情報を発信している人をフォロー、リサーチしている」(小売業/南関東)、「社外での良きアドバイザーを得ることや、現地での人脈を得ることが必要」(製造業/近畿)、「日本独自の商品の認知度が上がってきているので、現地の方とのニーズや好みに、いかにマッチするかが重要。特に取引先と連携して最新の情報を取得することを意識している」(小売業/九州・沖縄)などの声が寄せられた。
調査を監修した神戸大学経済経営研究所の柴本昌彦教授は、「将来の景況感に不安が残る中、新規顧客・販路の開拓に取り組んでいる企業が半数を超えている一方、規模の小さい企業では、十分に取り組めていないことも分かった。『新しい商品・サービスを開発』『情報発信を強化』することで、開拓の効果が期待できることも明らかになったが、開発力の強化・人材確保・ノウハウ習得といった課題を解決することも必要となる。課題解決に向けて、『補助金・助成金の支援』『取引先の紹介』が期待されており、このような面のサービスの利用も解決の一歩と言える」とコメントしている。