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【がんを生きる緩和ケア医・大橋洋平「足し算命」】足し算命1828=5年を迎えて

【がんを生きる緩和ケア医・大橋洋平「足し算命」】足し算命1828=5年を迎えて

2024年4月8日=1828
*がんの転移を知った2019年4月8日から起算


船上から眺める神戸港

船上から眺める神戸港

▽忘れられない日

 2019年4月8日。これが、がんを生きるようになって最も忘れられない日付となった。転移が発見されたあの日である。そういえば5年前も、今年と同じ月曜やった。医者に肝臓への転移が写るCT画像を見せられた場面と共に、未だ鮮明に脳裏に刻まれている。

 そして滅茶苦茶へこみ、1週間ほどで体重がさらに3キロ減った。そりゃそうや。抗がん剤のしんどい治療や、胃切除の後遺症である消化液逆流などなど、苦しい日々をがんばって生きてきた。それなのに転移するなんて。

 「この10カ月間は意味なかった。大量の消化管出血で発病した時点で、あのまま死んでいたならば、転移の苦しみを味わうこともなかったのに」

 5年前当時はこうまで思っていた。でも、今日までしぶとく生きてこられた。おかげさまで今を生きている。

 転移が分かった2019年4月8日を「1」として、1日に1つずつ足していくことにした。これが「足し算命」。カウントダウンで減っていく「余命」と比べて、だんだん増えていくのがいい。
この2024年4月8日で足し算命は、なんと5年=1828を迎えた。大感激、大感謝である。※編注:365日×5年は1825だが、うるう年2回分と起算日をカウントしていることで+3となる

▽新たな悩み

 ところが最近、新たな悩みが出現してきた。それは・・・3月上旬からだろうか、腹痛が続いていることだ。日記を綴るタイプではないので正確な時系列でないことをお許しくださいな。

 もちろんがん患者に腹痛など日常茶飯事だ。例えば開腹手術も受けていることから消化管の動きも障害されることは珍しくなく、腸閉塞も起こり得る。その一歩手前で、救急車搬送されたこともある。そこまでの激痛でなくても腹痛は生じたり消えたりしている。でも今回はどこか違う。強い痛みではないが出たり消えたりが普段以上に続く。主治医に相談したところ、検査を受けることになった。

 結果やいかに。とりあえず受けた検査からは痛みにつながるような所見は現れなかった。まずはひと安心。

 でもそうなると新たな二つの心配が頭をよぎる。一つ目は、んじゃあ痛みはなぜ、どこから出てるんや。そしてもう一つ、自分は検査をすべて受けた訳やない。しんどい検査はまだやってない。具体的には内視鏡検査である。これは苦手や、“超”がつくほど。これを受ける可能性が残っている。要するに痛みの原因は、特定できてない。分からないことは人を不安に陥れる。スッキリしない。

 実はおととし2022年4月にも同じような文章を綴ったが、あの時は自覚症状がないのに検査で転移を疑わせる異常が発覚した。ところが今回は逆のケースだ。自覚症状があるにも関わらず、実施した検査では異常所見が見つからない。どっちも心中穏やかやない。では一体どうすれば・・・

ひと際そびえる神戸ポートタワー

ひと際そびえる神戸ポートタワー

▽みな運命

 やっぱりオレにはこれや。人生みな運命(さだめ)。良い結果も悪い結果もすべて運命。さらにその原因を特定できぬこともしばしば。だったら分からぬことをあれこれ悩んでもキリはない。キリなきことは意味もなし。意味ないことは、そう。放っておく。結局はここに落ち着く。すると気ぃ楽に生きられる。

 ここいらで今日もやりますか。何を?って・・・この時期はG1レースが目白押し。新聞片手に頭を捻りながら一日を楽しみまぁす!

 ところでユーチューブらいぶ配信、しぶとく続けてます。チャンネル名「足し算命・大橋洋平の間」。配信日時が不定期なためご視聴しづらいとは察しますが、どこかでお気づきの際にはお付き合いくださいな。ご登録も大歓迎。応援してもらえると恐れながら生きる力になります。引き続きご贔屓のほどを。わたくしが生きている限り何卒よろしくお願い申し上げまぁす!

(発信中、フェイスブックおよびYouTubeチャンネル「足し算命・大橋洋平の間」)


おおはし・ようへい 1963年、三重県生まれ。三重大学医学部卒。JA愛知厚生連 海南病院(愛知県弥富市)緩和ケア病棟の非常勤医師。稀少がん・ジストとの闘病を語る投稿が、2018年12月に朝日新聞の読者「声」欄に掲載され、全てのがん患者に「しぶとく生きて!」とエールを送った。これをきっかけに2019年8月『緩和ケア医が、がんになって』(双葉社)、2020年9月「がんを生きる緩和ケア医が答える 命の質問58」(双葉社)、2021年10月「緩和ケア医 がんと生きる40の言葉」(双葉社)、2022年11月「緩和ケア医 がんを生きる31の奇跡」(双葉社)を出版。その率直な語り口が共感を呼んでいる。


このコーナーではがん闘病中の大橋先生が、日々の生活の中で思ったことを、気ままにつづっていきます。随時更新。

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