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持続可能な社会の実現に貢献する  サステナビリティ方針を公表 クリナップ竹内宏社長インタビュー

 

 日本で初めて「システムキッチン」を発売した会社をご存じだろうか。1949年創業のクリナップ(東京都荒川区)だ。創業時は、小津安二郎監督の『東京物語』のシーンに出てくるような座卓、つまりちゃぶ台の製造・販売をしていた。終戦、高度経済成長期、バブル経済とその崩壊、「失われた30年」・・・、この間、人々の暮らしや、家族の在り方が多様化し、生活に不可欠なキッチン(台所)という場所も変化してきた。そんな中、同社は企業理念である「家族の笑顔を創(つく)ります」の実現に向け、さまざまな暮らし方の提案をする一方、持続可能な社会の実現にも貢献することを目指した「サステナビリティレポート2023」(レポート2023)をこのほど公表した。竹内宏社長にこの50年を振り返りながら、レポート2023の取り組みについて聞いた。

インタビューに応じる竹内社長

 

▼システムキッチン発表から50年

——システムキッチンという言葉は社会に定着しました。

 「当社が日本初のシステムキッチンを発表したのが1973(昭和48)年で、今年で50年になります。私は1979(昭和54)年に、営業職で入社しました。ただ、当時は、単品の流し台が主流でしたから、システムキッチンは普及しておらず、会社全体の売り上げの数%しかなかったですね」

——50年間の変化をどう感じていますか。

 「この50年を振り返ってみますと、まず感じるのは、システムキッチンの価格です。発売当初は、普通の家庭の方には手が届かないような価格帯でした。それが、1983(昭和58)年に売り出した、業界初の簡易施工型のシステムキッチン『クリンレディ』が手の届くような価格帯として、多くの消費者に支持されました。当時のキャッチコピーは「買えちゃうシステムキッチン 『クリンレディ』」で、ご記憶の方もいらっしゃるでしょう。この『クリンレディ』のヒットが、家庭でのシステムキッチンの浸透につながるとともに、業界全体にキッチン周りのシステム機器の将来性を気付かせてくれた商品だと評価しています」

——システムキッチンの機能性も追求してきました。

 「使い勝手のいいキッチンを目指し、どんどん進化をしてきました。今でも使われる方の利便性を考え続けています。機能性の大きな変化と言えば、1998(平成10)年に業界初となる、オールスライド形式、それまでの扉を開けるやり方から、全部スライドに変えたことがあげられます。昔は流し台もそうですけど、キッチンの扉を開けて手前のものを取り出さないと、奥にあるものが取り出せなかった。それは不便だと考えて、すべて引き出しにしたのです。さらに一年後の1999(平成11)年、当時のキッチンの一番下がデッドスペースだったのですが、ここも収納できるように引き出しにいた『フロアコンテナ』をつくり、収納力アップにつながりました。この『オールスライド形式』と『フロアコンテナ』は他のメーカーさんも採用され、業界のスタンダードになっています。わが社にとっても、業界にとっても画期的な商品開発だったといえます」

 「日本の場合、欧米と比べて、住宅環境の違いから、狭いところでも使い勝手がいいという機能性がとても重視されてきました。先ほどもお話しましたが、対面キッチン、収納力アップ、鍋などの取り出しやすさ、蛇口から出る水の音が静かなサイレントシンクなど、比較的狭い空間の中でも、快適に家事がこなせるキッチンの追求に取り組んできました」

 「さらに、ここ数年の新型コロナウイルス禍で、リモートワークをされる方も増え、キッチンが仕事場にも活用されることが多くなりました。間取りを柔軟にできるキッチンテーブルを本格発売し、仕事場であり、家族の誰もが食事作りに参加できる、そんなキッチンの多様化を提案しました」

クリナップ「未来キッチン イラストコンテスト」

 

▼「脱LDK」キッチン

——レポート2023を公表した狙いは。

 「国連のSDGs(持続可能な開発目標)の採択、新型コロナ禍、国内外の自然災害の多発など、私たちが住む社会環境の変化に、クリナップとしても対応していかなくてはいけない、と考えているからです。企業理念である『家族の笑顔を創(つく)ります』」を事業活動の中で具現化することで、『社会の笑顔』を創ることにつなげたい。企業は『社会の公器』であるという自覚を持ち、持続可能な社会の実現に貢献していきたい、そんな思いで、公表させていただきました。もともと2021年度に長期ビジョン『サステナブルビジョン2030』を発表しており、今回は時代環境の変化も取り入れながら、サステナビリティ方針、クリナップグループ環境ビジョン2050を新しく策定しました」

 「これまでもさまざまな取り組みをしてきています。大きなものの一つが、昨年からスタートさせた『未来キッチンプロジェクト』です。『キッチンから心豊かな未来を創(つく)る』をコンセプトに新しいプロジェクトを立ち上げました。当社と武蔵野美術大学の研究室との産学連携となる『未来キッチンラボ』で、社会課題解決にもつながる未来のキッチンを議論しています」

 ——キッチンが社会課題解決につながるのですか。

 「まず、家を飛び出して地域コミュニティーでも機能する『脱LDK』のキッチンという新しい考え方を導入しました。これを実現につなげるために、移動可能なキッチンを試作しました。車に積めるシンクユニット、フィルターメーカーの協力を得ながら開発した循環ろ過装置を備えることで移動を可能にしたのです。普段は、地域社会のコミュケーションの場として活用いただけるほか、非常時には、災害時の避難所などでも使えるキッチンとなります」

 「さらに、小学生を対象とした未来のキッチンのイラストコンテンストも実施しています。未来をつくる子どもたちと一緒にこれからのキッチンを考えてもらい、子どもたちがサステナブルについて学ぶきっかけをつくりたいからです。このほか、ステンレスキッチンのリサイクルにも取り組んで、サステナブルな社会の実現に向けて取り組んでいます」

——竹内社長はキッチンで料理はされるんですか。

 「今、単身赴任中で、あまり凝ったものは作れませんが、料理はします。出身が大阪で、戻ったときは、キッチンでキャベツを切るなどして、お好み焼きをよく作りますね。『男子厨房(ちゅうぼう)に入るベからず』、という時代は遠い昔の話となり、わが社の若手の男性社員と話していても、料理が好きだという人も多いですね。キッチンが男女を問わず、笑顔があふれる魅力的な空間になってほしいと思います。さらに、移動キッチンを活用していただくなどして、地域でも笑顔が生まれる、そんな取り組みを進めていきたい」

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