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世界に誇れる富山のホタルイカ 中川めぐみ ウオー代表取締役 連載「グリーン&ブルー」

 富山湾の春の風物詩、ホタルイカ。青く発光する姿が幻想的で、一目見たい、食べたいと、世界各地から観光客が訪れる。ただ、世界に誇れるのは、美しさや味わいだけではない。

 県内でもホタルイカの有数の漁獲量を誇る、滑川(なめりかわ)漁港。こちらではホタルイカ自体はもちろん、水産全体としての生業(なりわい)や、豊かな海を未来へ残そうと、さまざまな取り組みが行われている。今回はその中から四つをご紹介したい。

 一つ目が漁法だ。富山湾ではホタルイカを獲(と)るのに、定置網漁法が使われる。海中に大きな網を設置して、自然にホタルイカが入るのを待つという、どちらかといえば“守り”の漁法だ。

 ホタルイカは春の夜、産卵のために深海から沿岸の浅瀬へと浮上してくる。漁師はこの移動ルートを読み、産卵を終えて深海へ帰ろうとする個体を網の中へ導く。こうすれば産卵前の個体を獲らないので、翌年以降に多くの命をつなぐことができる。

 二つ目は定置網に使う素材。近年では海洋プラスチックゴミが環境問題として注目されるが、実はその多くは漁具が原因となっている。一方、滑川では、なんと400年以上前に稲わら(稲の収穫後に残る茎や葉を乾燥させたもの)を主原料とした網が開発されたとされ、その技法が現在まで引き継がれているのだ。

 理由はいくつかあるが、やはり「最終的に朽ちて海に還(かえ)る天然素材を使うことで、長期的に海を汚さない」という配慮が強いという。

定置網を編む漁師さんたち

 

 三つ目はホタルイカの扱いだ。滑川漁港は多い日には数トンもの漁獲量がある。それにも関わらず、漁師さんたちは網に入ったホタルイカを、人力のタモで掬(すく)い上げる。こうすることで繊細なホタルイカを傷付けず、ストレスも最小限に抑えられるのだ。

 さらに漁港にある深層海洋水の分水施設を生かし、水揚げしたホタルイカの保管用にと、出漁前にわざわざくみ上げて船に積んでいく。海洋深層水は非常に冷たく、洗浄性もあるため、鮮度抜群でおいしく食べてもらう工夫だという。

 四つ目は漁師さんたちの思いだ。温暖化などの影響により、各地で漁獲量の減少や魚種の変化が続く中、なんとか地域に水産という生業や文化を残そうと、新たなチャレンジを始めている。自分たちでPRしようと朝セリイベントを実施したり、漁港近くにある観光施設と一緒に自分たちをキャラクターにしたステッカーを作ったりしている。

 ホタルイカは獲れる海域が限られており、この資源があるだけでもすごいことだ。ただ、実はそれ以上に世界に誇れるのは、ホタルイカを中心とした産業・文化をつなぎ続ける“人”そのもにあるのではないだろうか。

なかがわ・めぐみ (株)ウオー代表取締役。「釣り・漁業×地域活性」を軸に日本各地で観光コンテンツの企画・PRなどを行う。漁業ライターや水産庁・環境省などの委員も務める。

【KyodoWeekly(株式会社共同通信社発行)No.14からの転載】

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