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【はばたけラボ 子育て質問箱】 コロナ禍でますます運動不足に 体力を付けるために学校では何ができる?

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 未来世代がはばたくために何ができるかを考えるプロジェクト「はばたけラボ」。食べること、くらすこと、周りと関わること、ワクワクすること・・・。今のくらしや感覚・感性を見直していく連載シリーズ。今回は、弁当作りを通じて子どもたちを育てる「弁当の日」の提唱者・竹下和男(たけした・かずお)先生が、コロナ禍でますます深刻になった子どもの運動不足問題について答えます。

 ●運動能力が下がり全速力で走ることもできません。どうしたらいい?

 【質問】
 小学校3年生の娘がいます。コロナ禍の影響で、明らかに運動能力が下がっていると感じます。元々運動が苦手なのもあって、巣ごもり生活にすっかりなじんでしまいました。他の子と比べて、全速力で走ることもできません。学校でもっと運動させてもらえないでしょうか。

 ▼それぞれの子に応じた身体能力が育つ、手つなぎ鬼がおすすめ

 【竹下和男先生の回答】
 子どもたちの体力の低下は、コロナ禍以前も深刻な課題でしたが、コロナ禍でさらに深刻になりました。ご心配なさっている通り、サッカークラブや野球教室に通って週に何度も汗びっしょりになるほど運動しているかと思えば、全く体を使わなくなった子どももおり、子どもたちの体力の二極化が進んでいます。約3年間、思いきり遊ぶことをさせてこなかった負の遺産は、年齢の低い子ほど大きく残っています。でも焦らないことです。

 私が小学生の学級担任だった時、よく体育館で鬼ごっこをさせていました。跳び箱やマット運動では、汗を流すほどの運動量になりません。技術向上のために説明する時間や順番待ちの時間があるからです。ところが鬼ごっこだと、全員を走り回らせることができます。

 スポーツの得意な子が最初に鬼になると、すぐに誰かにタッチできます。タッチされた子は、鬼と手をつなぎます。「手つなぎ鬼」です。3人になると両端の子が手を広げると幅が広がるので、逃げる魚を追う網のようになります。そして4人になったら、鬼は2人組の鬼に分裂するのです。3人よりは機動性がありますし、挟み撃ちもできるようになります。鬼は増え続けるので、必ずみんなが鬼に捕まってしまいます。

 実は獲物を狙う、あるいは捕食者から逃げるという設定は「生きたい」という本能の反応なので、アドレナリンが出て全速力で活動します。これは速さを競うかけっこと違って、まさに「命懸け」の反応です。客観的なスピードに関係なく、当事者の能力を高めていきます。

 鬼になって手をつないで追いかけていると、手を通して友だちの作戦が伝わってきます。不思議と一心同体の気分になってきます。逃げまどう友だちの動きに対応することも、手をつないでいる友だちを気遣うことも、コミュニケーション能力です。分裂を繰り返しつつ鬼が増えていく「連帯感」と増殖する「危機感」で、体育館は興奮のるつぼと化します。常に冷静な判断と機敏な行動が求められるから、それぞれの子に応じた素晴らしい身体能力が育っていきます。

 45分の授業のうち、最後の5分だけの「鬼ごっこタイム」をお勧めします。学校での実施が難しかったら、近所の年齢層の違う子どもたちと始めてみることです。子どもは「遊びの天才」といわれます。みんなが楽しむためのルール作りも勝手にしてくれますよ。

 竹下和男(たけした・かずお)
 1949年香川県出身。小学校、中学校教員、教育行政職を経て2001年度より綾南町立滝宮小学校校長として「弁当の日」を始める。定年退職後2010年度より執筆・講演活動を行っている。著書に『“弁当の日”がやってきた』(自然食通信社)、『できる!を伸ばす弁当の日』(共同通信社・編著)などがある。

 #はばたけラボは、日々のくらしを通じて未来世代のはばたきを応援するプロジェクトです。誰もが幸せな100年未来をともに創りあげるために、食をはじめとした「くらし」を見つめ直す機会や、くらしの中に夢中になれる楽しさ、ワクワク感を実感できる体験を提供します。そのために、パートナー企業であるキッコーマン、クリナップ、クレハ、信州ハム、住友生命保険、全国農業協同組合連合会、日清オイリオグループ、雪印メグミルク、アートネイチャー、東京農業大学、グリーン・シップ、ヤンマーホールディングス、ハイセンスジャパンとともにさまざまな活動を行っています。

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