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「どうする家康」第30回「新たなる覇者」 家康の成長を感じさせる決断の行方は【大河ドラマコラム】

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「どうする家康」。8月6日放送の第30回「新たなる覇者」では、織田家中で信長の後継者争いが繰り広げられ、その間で主人公・徳川家康(松本潤)が、徳川家の存続をかけて立ち回る姿が描かれた。

 信長亡き後、羽柴秀吉(ムロツヨシ)と、信長の妹・市(北川景子)およびその再婚相手・柴田勝家(吉原光夫)の間で、後継者争いが勃発。市と家康の親しい関係を知る徳川家臣団は、口々に「柴田殿を助けるべきと存じます」「お市様と共に秀吉を討ちましょうぞ!」と気勢を上げる。だが、そこに現れた本多正信(松山ケンイチ)は「織田家臣の多くは秀吉に調略された」と状況を客観的に分析。さらに「これはあくまで織田家中の争い。我らはただ静観し、勝った方に、おめでとうございまする、と言いに行くが上策かと」と進言すると、石川数正(松重豊)や酒井忠次(大森南朋)の後押しもあり、家康は「様子を見る」と冷静に決断を下す。

 この決断にはやや驚かされた。これまでだったら、考えるまでもなく「助けに行くんじゃ!」と、家臣たちの制止を振り切ってでも援軍を送ろうとしたはず。それだけ、主君として家康が成長した証と言えるかもしれない。そして結果的に柴田勢は破れ、市も勝家と共に命を落とすことになった。

 家康の冷静な決断が功を奏した形だが、史実を踏まえると、これが後々、様々な形で家康のその後に影響を及ぼしそうなのも事実。例えば、市の娘・茶々(白鳥玉季)。市と家康の古くからの関係を知る彼女は、徳川からの援軍が来ないと知ると、「徳川殿はうそつきということでございます。茶々は、あの方を恨みます」と家康を批判。市と別れて城を出る際には、「母上の無念は茶々が晴らします。茶々が天下を取ります」と言い残している。茶々が後に、秀吉の跡継ぎ・豊臣秀頼の母になることを考えれば、これらの言葉が何を意味するのか、一目瞭然だろう。

 さらに、茶々の妹たち、初や江も、いずれ徳川と豊臣の運命を左右する存在となっていくに違いない。

 そしてもう一つ、この回の家康の決断で注目したのが、旧武田領を巡って争っていた北条家との和睦だ。和睦の際、北条方から提示された「上野の譲渡」という条件を即断で受け入れた家康だが、井伊直政(板垣李光人)が「臣従してくれたばかりの真田から、その地を取り上げることになります」と語ったように、これが真田との争いの火種となる。その真田からは、徳川の強敵となる真田信繁(幸村)がやがて頭角を現してくるはずだ。

 徳川の存続を第一に考えた上での家康の決断だったが、後々振り返ってみると、この回は思った以上に大きなターニングポイントになるのかもしれない。

「禍福は糾える縄の如し」

「人間万事塞翁が馬」

人の運命の不思議さを言い表したそんな言葉を思い出すような回だった。

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