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真っすぐ、心震わすロックバンド 【音楽の森 山崎あみ】

 ロックバンド「SUPER BEAVER」は、ピュアな歌詞世界と骨太なサウンド、心を震わす歌声で、たくさんの支持を集めています。そして、浮沈を乗り越えてきた男性4人組です。
 私が出合ったのは2021年。アーティストが一発撮りに臨むYouTubeの人気音楽チャンネル「THE FIRST TAKE」に、ボーカルの渋谷龍太さんが出演して、バラード曲「人として」を歌った時です。

 ピアノとストリングスが音を合わせながら待つほかには、スタンドマイクしかないスタジオ。静かにフレームインしてきた渋谷さんは、ヘッドホンを着け、少し息をして、「お世話になります。よろしくお願いします」。
 イントロはなく、「人は騙(だま)す―」と歌声を響かせると、ピアノの和音が寄り添う。「信じ続けるしかないじゃないか」というサビが胸に迫ります。

 こんな人がいたんだ! 私は雷が落ちたような衝撃を受けました。彼らの曲を聴いていくと、一瞬一瞬、聞き逃したくないほど歌詞がいい。きれい事だけじゃなく、人間の汚い面も全部、真っすぐに伝える。「こういうふうに私も生きたいな」と思わせてくれるから、心が浄化される感覚があります。

 歌声の説得力がすごいので、渋谷さんの作詞かと思ったら、大半はギターの柳沢亮太さん。柳沢さんは昨年、私がDJを務めるラジオ番組にゲスト出演してくださって、文字通り真っすぐで丁寧な方でした。彼が描く世界に憑依(ひょうい)されたかのように、渋谷さんは歌っているんですね。

 4人は同じ高校の先輩後輩や幼なじみで、05年に結成。09年にメジャーデビューしますが、11年にはインディーズに戻ってしまいます。でも、そこから年間100本以上、ライブに打ち込みます。ひたむきにライブを重ねることで人気を広げ、18年4月、ついに日本武道館での単独公演を成功させました。チケットは即完売。20年、メジャー再契約を果たし、今に至ります。契約先はかつてと同じレコード会社。すごいことです。
 苦境の時、メンバー脱退や解散に至るバンドも珍しくない中、彼らは誰1人抜けなかった。伝えたい確固たる音楽があって揺るがなかった。

 ボーカルの渋谷さんは、普段のキャラクターは面白くて、「片方の手をぶつけたら、もう片方の手もぶつけないと気が済まない」という癖をテレビ番組で明かしていたことも。その独特の感覚と文才を生かして最近、エッセー集&小説「吹けば飛ぶよな男だが」を出版しました。ぜひ、〝SUPER BEAVER沼〟にハマってみてください。


山崎あみ(やまざき・あみ)/1997年生まれ、東京都出身。音楽大卒。interfm「MUSICIock」(略称みゅじろく。月―木曜午前7時~8時55分)メインDJ。ポッドキャスト番組「山崎あみ『うるおう』リコメンド」(うるりこ。金土曜更新。共同通信社制作)出演中。講談社「with」専属モデル。

(KyodoWeekly 2023年5月1日、8日合併号より転載)

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