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消費トレンド「矛盾の日常化」 【平井久志×リアルワールド】

 このコラムで昨年5月、韓国のMZ世代(ミレニアム世代+Z世代=1980~2010年生まれ)で日本の「おまかせ」がブームになっていると書いたが、最近は急速にこのブームが冷却化しているという。韓国の変化は早い。

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 韓国の有力紙「朝鮮日報」は昨年11月28日付で「ミドル級〝おまかせ〟が次々に廃業する理由は?」と題した記事を掲載した。同紙はおまかせブームを引っ張ったすし屋を、昼食5万ウォン(約5585円)以上、夕食10万ウォン(約1万1170円)以上の「エントリー(入門)級」、昼食8万ウォン(約8936円)以上、夕食15万ウォン(約1万6755円)以上の「ミドル級」、昼食10万ウォン(約1万1170円)以上、夕食20万ウォン(約2万2340円)以上の「ハイエンド級」の3クラスに分類した上で、最近ミドル級のすし屋の廃業が相次いでいると報じた。23年に入ってのおまかせブームはコロナ禍が終わってのリベンジ消費がこれを支えてきた。同紙はこのブームにストップをかけたのは、コロナ後の日本旅行熱ではないかと分析した。

 同紙は、韓国の消費者がコロナ後に円安の日本を旅行し、本場のすし屋のリーズナブルな価格やサービスなどを経験し、韓国の「おまかせ」へ行く価値を見失ったのではと分析した。おまかせブームでは、それまでのコース料理やセット料理を「おまかせ」と言い換えただけで値段を上げたものもあっただけに、淘汰(とうた)されるのは自然ともいえた。

 そんな中で、韓国の大手広告会社「テホン企画」は韓国の今年の消費トレンドは「(高い)おまかせを食べながらコスパを探る」という「矛盾の日常化」となると予測する報告書を出して注目された。

 報告書は、急浮上したトレンドが急に冷めたり、まったく反対の消費傾向が共存したりするような現象が今年は起きると指摘し、この現象を「矛盾の日常化」と名付けた。

 その一例が、若者世代で人気を集めたゴルフや、おまかせが急に人気がなくなったことを挙げた。また、人々は高い「おまかせ」を食べながら、コスパの良いものを探そうと決意したり、これからは支出をなくそうと決意したりするという矛盾した行動を取るという。

 また、激辛の「麻辣湯」や、果物を甘い飴(あめ)で包んだ激甘の「タンフル」(甘いフルーツ)という極端な味付けが人気を集める一方で、人工甘味料や化学添加物を減らした素朴なものを求めるという相反したトレンドが併存する現象を挙げている。

 報告書は長期化する不況や急変する世相の中で、消費者の関心や嗜好(しこう)はますます多様化するとした。

 中央日報によると、テホン企画のカン・スンヘ・インサイド2チーム長は「誰がより興味深く、意外性があるように、賢く連想、連結して演出するかが対応の鍵」と指摘し「結局、最も必要なのは、人だけができる考えと企画力」とした。

 こうなってくると、人間の矛盾した消費傾向はAI(人工知能)では予測できないということなのだろうか。そうならば、面白い。そう、人間は不可解な存在なのだろうから。

【KyodoWeekly(株式会社共同通信社発行)No. 2からの転載】

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平井久志(ひらい・ひさし)/共同通信客員論説委員。2002年、瀋陽事件報道で新聞協会賞、朝鮮問題報道でボーン・上田賞を受賞。著書に「ソウル打令 反日と嫌韓の谷間で」(徳間文庫)、「北朝鮮の指導体制と後継 金正日から金正恩へ」(岩波現代文庫)など。

 

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