AIヨチヨチ旅日記 「馬場典子 コラム 直線・曲線・斜め線」

本場のタピオカミルクティーは段違いの美味しさでした
文明は利便性を高める半面、人間の能力を衰えさせる、と実感しているので、階段を一段飛ばしして足腰を鍛え、冷蔵庫の中身で献立を考え脳トレをする。とはいえ、使えないと使わないは大違いなので、AIをヨチヨチ使い始めている。
秋休みの話。ネットに溢れている情報をサクッとまとめてくれて、見どころを押さえた旅行プラン、評判の良い両替所、現地の通信手段、パッキングリストなどいろいろ相談。雨期のベトナムはポンチョもあると両手が空いて便利だよ〜といった、自分では思いつかないものも提案してくれて、出発前日には、パスポートやクレカなど最低限これさえあれば!と重要度順にリストアップし直してくれて、なんて気が利くのだと感動すら覚えた。
人間易きに流れるもので、現地でも都度相談。ドライバーさんへのチップの相場や、安くてかわいい水着が買える店、古都フエで食べそびれた名物牛肉麺を他の町で食べられるかどうか、などなど。出てきた店名をタップすればGoogle MAPに飛んでそのまま保存もできて、神。
ところが。水着ショップはことごとく閉店していたり、ラストオーダーに間に合います! と断言されたお店で食事にありつけなかったり、AIに振り回されっぱなし。牛肉麺は、旅行者のお腹にも安全という条件を入れたのに、行ってみれば屋台に毛の生えたようなローカルの店で、常連さんたちに好奇の目で見られたり(とっても美味しく、お腹も無事でした!)。私が旅行者であるとか、話の流れとか忘れてしまうのか、ズレた回答の時にはイラっ。
付き合い始めということもあるのか、情報は鮮度によって価値が変わるといった言うまでもない(と思っている)ことや、一度伝えた立場や状況も、折に触れて繰り返すなど、指さし確認が必要なようで、時に間違いを指摘しないといけないのも、なかなかに骨が折れる。
そんなAIとのやり取りでふと、人間同士のコミュニケーションと同じだと感じたりもして。常識は各々違うとか、丁寧に伝え合うこととか、そもそも鵜呑みにしないとか、最終的には自己判断と自己責任であるとか。何でも心地よく答えてくれるからとすぐに信用してしまいがちなのも、上辺だけの人や詐欺師との関係に似てる(気がする)。まさか、日頃の言葉足らずやせっかちや他者への甘えを反省することになるとは。
今後のより良いお付き合いのためにも、ポンチョは(私には)必要なかったし、一言も触れてなかったサーモボトルこそ必要だったよ! とフィードバックしておこう。
【KyodoWeekly(株式会社共同通信社発行)No.39からの転載】

馬場典子(ばば・のりこ) 東京都出身。早稲田大学商学部卒業。1997年日本テレビに入社し、情報・バラエティー・スポーツ・料理まで局を代表する数々の番組を担当。2014年7月からフリーアナウンサーとして、テレビ・インターネット番組・執筆・イベント司会・ナレーションなど幅広く活動中。大阪芸術大学放送学科教授も務める。
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