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9年ぶりのハワイで、 心の扉が少し開いた 【平井理央 コラム 直線・曲線・斜め線】

 この夏、娘と9年ぶりにハワイへ行ってきました。 

 私にとって、子どもの頃の旅行の記憶は、今でも心の中にたくさんの「カケラ」として残っています。あのとき見た景色、食べたもの、家族と笑った時間。大人になった今でも、ふとした瞬間に蘇ってくる。 娘の中にも、いつかふと思い出すような「旅のカケラ」が残ったらいいな。そんな思いもあって、9年ぶりにハワイへ向かいました。

 ところが、旅を終えてみると、思いがけずたくさんのカケラを手にしていたのは、娘だけではありませんでした。私自身も、新しいカケラを思いもかけず手にしました。というと大げさかもしれませんが、その一つが、「食べてみないと、分からない」ということ。

 私は昔から、味の想像がつかない食べ物の組み合わせが、ちょっと苦手。酢豚のパイナップルとか、サラダのりんごとか。「美味しいよ」と言われても、なんとなく敬遠してしまいます。 

 そんな私に、ホノルル在住の先輩アナウンサーが教えてくれたのが、ダイヤモンドヘッド近くの「ボガーツカフェ」で、アサイーボウルとチャーハンを一緒に頼むという食べ方。 

 「え? 甘いアサイーとチャーハン?」 半信半疑で試してみたら、これが最高でした。甘くて冷たいアサイーと、塩気のある温かいチャーハン。交互に食べると、甘い、しょっぱい、冷たい、温かい…と、味覚の無限ループ。自分では絶対に思いつかなかった組み合わせに、すっかりハマってしまいました。 

 さらにマノア地区では、ロコに人気だというポキ専門店へ。口コミで見つけた「ほうれん草を混ぜた酢飯にジンジャーポキ」という組み合わせにも挑戦しました。 

 これも、最高。ほうれん草が酢飯の酸味をまろやかにして、そこにジンジャーの爽やかな風味のポキ。想像できなかった組み合わせなのに、食べてみるとちゃんと美味しい。

 そして気づいたのです。「想像できない=自分には合わない」ではないんだな、と。 

 43歳の私の人生観が、アサイーボウルとチャーハンでひっくり返るわけではありません(笑)。 

 変化は、きっと小さい。でも、人生って案外、こういう小さな「やってみよう」の積み重ねで、少しずつ広がっていくのかもしれません。 知らないものを、自分の経験や先入観だけで「これは違う」と決めつけてしまうのは、食べ物に限ったことではないはず。 

 娘との思い出を作ろうと思って出かけた、9年ぶりのハワイ。 

 帰ってきた私は、娘の笑顔と一緒に、たくさんの新しい「好き」と、少しだけ柔らかくなった価値観を持ち帰ってきました。 

 そして今、私の「食への心の扉」は、すっかり全開です。 

 次はどんな「ありえない組み合わせ」に出会えるんだろう。 

 そんなことを楽しみにできるようになったことも、この旅がくれた、思いがけないお土産でした。

【KyodoWeekly(株式会社共同通信社発行)No.35からの転載】


平井理央(ひらい・りお) 1982年東京生まれ。2005年、慶應義塾大学法学部卒業後、フジテレビ入社。スポーツニュース番組「すぽると!」のキャスターを務め、オリンピックをはじめ国際大会の現地中継などに携わる。13年フリーに転身。ニュースキャスター、スポーツジャーナリスト、女優、ラジオパーソナリティー、司会者、エッセイスト、フォトグラファーとして活動中。

 

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