行革甲子園 沼尾波子 東洋大学教授 連載「よんななエコノミー」
夏と言えば高校野球の季節である。高校球児は甲子園を目指して汗を流すが、自治体にもユニークな「甲子園」がある。
愛媛県は、行政改革の技法やアイデアを発表する「行革甲子園」を主催している。全国各地の自治体職員が日々の業務の中で生み出した創意工夫や改革の成果を持ち寄り、その内容を共有し合う大会で、2年に1度開催される。
2012年に愛媛県内の自治体を対象として始まり、16年からは全国の市区町村を対象とする大会へと発展した。現在では、自治体の行政改革や業務改善の優れた実践を共有する場として知られ、全国から100件近いエントリーがある。
かつて行政改革といえば、人員削減や歳出削減など、効率化や財政健全化が主な目的とされていた。しかし、人口減少や少子高齢化が進み、地域課題が複雑化する今日では、限られた人員や財源の中で、いかに住民サービスを維持・向上させるかが問われている。そこで、デジタル技術や生成AIを活用した業務改善、データを活用した政策立案、地域住民や民間事業者との連携・協働、さらには職員の働き方改革など、自治体による「新しい行政運営」を実現する取り組みが「行政改革」として発表されている。
24年には、京都府福知山市の廃校利活用の取り組みがグランプリを受賞した。廃校を活用した事例そのものは全国に数多く見られるが、福知山市の特徴は、その活用先を決定するプロセスにある。市は、廃校16校の利活用を希望する事業者を広く募集、現地見学バスツアーを実施し、多様な事業者から提案を募った。さらに金融機関と連携して事業者とのマッチングを進めるとともに、小学校への思い入れが深い地元も参加して事業者選定を行い、廃校の利活用を図ったという。
このほかにも、自治体が1日単位での勤務や短時間勤務が可能な求人サイトを開設して雇用機会の確保と人手不足解消に取り組む例や、庁内DXの推進により業務効率化を図る事例、職員が固定席を持たないフリーアドレスの導入事例など、保守的と思われがちな行政現場において、改革に向けたさまざまな挑戦が行われている。企業と連携・協働するケースも増えてきた。
行革甲子園の応募事例や発表内容は、愛媛県のウェブサイトでデータベース化されている。ある自治体で生まれた工夫が他の自治体へ広がり、それぞれの地域の実情に応じて発展していくことが期待される。
26年は、8月28日に松山市で開催される。生成AIの進化に伴い、自治体でも業務改善や住民サービス提供体制の見直しが進む。行政需要の多様化・高度化が進む中で、全国の市区町村からどのような創意工夫に富んだ取り組みが披露されるのか、大いに注目したい。
(東洋大学教授 沼尾波子)
【KyodoWeekly(株式会社共同通信社発行)No.29からの転載】
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