「純血和牛ではない」のに世界一! 栃木の「足利マール牛」が国際ステーキコンテストで快挙

長谷川農場のブランドマネージャー 長谷川紀子さん。アムステルダムで開かれた表彰式で(2026年9月10日、Hotel ARENA)
「純血和牛ではない」日本の牛肉が、世界のステーキの舞台で頂点に立った。
栃木県足利市の長谷川農場が生産する「足利マール牛」が、世界各国の牛肉が集まる国際ステーキコンテスト「World Steak Challenge 2026」で、「World’s Best Grain-Fed Ribeye(世界最優秀グレインフェッド・リブアイ)」を受賞した。世界から450点を超えるステーキが集まり、60人以上の食肉専門家が各カテゴリーを審査する大会での快挙である。
受賞したのは、黒毛和種とホルスタインを掛け合わせた交雑種。日本で牛肉の価値を語る際には「和牛」「A5」「霜降り」といった言葉が注目されがちだが、足利マール牛は純血の和牛ではない。
しかも今回の審査は、産地や生産者などを伏せたブラインド方式。生肉と加熱後のステーキを専門家が評価し、そのスコアから各部門の最高賞を決定した。つまり「日本のブランド牛だから」といった先入観に左右されず、肉そのものの味が評価されたことになる。
受賞部門の「グレインフェッド・リブアイ」は穀物肥育された牛から切り出したリブアイという意味。リブアイは、日本でいうリブロースの中心部分にあたる部位だ。足利マール牛について審査員からは、きめ細かな霜降りとすっきりした上品な後味、ジューシーさ、柔らかさ、豊かな風味などが評価されたという。さらにサーロイン部門にも出品し、こちらもゴールドメダルを獲得している。
足利マール牛の大きな特徴が、その名前にもなっている「マール」だ。ワイン醸造後に残るぶどうの果皮や種などの副産物のことで、長谷川農場では、足利市のココ・ファーム・ワイナリーでワインを醸造した際に出る「マール」を乳酸発酵させ、牛の飼料として活用している。
ワインをつくった後の副産物を牛へ。牛の糞尿は堆肥化し、ぶどう畑など地域の農地へ還元する。地域で生まれたものを地域で循環させる仕組みだ。牛は27カ月以上かけてじっくり肥育し、赤身のうまみと適度なサシ、柔らかさのバランスを追求している。
長谷川農場が掲げるのは、「今日も食べたい、明日も食べたい牛肉」。一度食べて驚く特別な肉だけではなく、食べ終えた後に「また食べたい」と思える牛肉を目指してきたという。
交雑種は純血和牛を対象とする「Wagyu」カテゴリーには出品できない。だから世界各国の牛肉とともにリブアイ部門で勝負した。地域にあるものを生かしながら、自分たちが本当においしいと思える牛肉を追求し、肩書きではなく味そのものを評価してもらう。その挑戦が、世界一という結果につながった。
「まずは食べてから判断してほしい」。長谷川農場のブランドマネージャーを務める長谷川紀子さんが長年抱いてきた思いを、世界の専門家がブラインド審査で証明した形だ。和牛だけではない、日本の牛肉の新たな可能性を示した。

「World’s Best Grain-Fed Ribeye」穀物肥育された牛から切り出したリブアイの世界一という称号(左)
















