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撮影時の恐怖を語る被災者フィリピン地震の衝撃動画 【水谷竹秀✕リアルワールド】

 衝撃的な動画だった。

 3階建てのビルが左右にゆらゆらと揺れている。1階と2階はフィリピンを代表するファストフードチェーン店「ジョリビー」が入居し、そのシンボルであるハチのキャラクターと真っ赤な看板が取り付けられている。振動のせいで2階の窓ガラスが落下した。まだ中に客がいるのか、外で制服姿の店員が大きく手招きし、数人が慌てて出てきた。その瞬間だった。

 「オーマイガット!」

 そんな叫び声とともに、ビルが一気に崩れ落ち、あたり一面に砂ぼこりが渦巻いた。悲鳴が一斉に挙がった。

 現地時間6月8日午前7時半過ぎ、フィリピン南部ミンダナオ島沖を震源とするマグニチュード7・8の地震が発生した。21日現在、死者77人、負傷者は1339人に上り、31人の行方が依然として分かっていない。民家は約1万4千戸が全壊し、約6万8千戸が一部損壊だった。余震は発生から1週間以上も続いている。15日にはマグニチュード6・2の地震も起きた。

 同島ジェネラルサントス市中心部の商業施設や大学は倒壊し、幹線道路の一部も崩壊した。この日は新学年の初日に当たり、登校していた多くの生徒たちが避難した。サランガニ湾に面した同市は、国内最大のマグロの水揚げ量を誇り、市内には多くの缶詰工場や加工工場が並ぶ。

 冒頭の描写は発生時、同市中心部の様子を捉えた約1分30秒の動画で、あまりの衝撃に日本のメディアでも放送された。

 撮影したのは同市在住のジェネリン・ディナガさん(36)。発生から1週間後、電話取材に応じたジェネリンさんによると、同日朝、娘を小学校に送った帰り道、姪と一緒にジョリビーで朝食を取っていた時だった。

 「私は姪っ子の動画をスマホで撮影していました。海外で働く彼女の母親に送るためです。そしたら突然、地面が揺れ始めた。間もなく、店内にいた多くの客が悲鳴を挙げて出口へと駆け込み、揺れが大きくなりました。天井からも何か崩れ落ちてきました」

 ジェネリンさんは姪を連れて外に逃げ出した。スマホを取り出し、録画を始めて1分もしないうちに、目の前でビルが崩れ落ちた。

 「恐怖とショックで、言葉にできないほどのどうしようもない状態でした。中にいた人は全員、逃げられました」

 小学校にいた娘も無事だった。そこから10キロほど離れた自宅も損壊はなく、同島ダバオ市で働く夫は翌日、心配してバスで戻ってきた。余震は夜も起きるため、怖くて眠れない日々を送っている。

 「電気は復旧しましたが、商業施設が倒壊して、営業していないので買い物ができない。救援物資も少なく、飲み水も減っています。このまま食料が持つかどうか……。子どもたちもトラウマを抱えてしまいました」

 そう語るジェネリンさんの声は、ひどく疲れ切っていた。

【KyodoWeekly(株式会社共同通信社発行)No.25からの転載】


水谷竹秀(みずたに・たけひで)ノンフィクションライター。1975年生まれ。上智大学外国語学部卒。2011年、「日本を捨てた男たち」で第9回開高健ノンフィクション賞を受賞。10年超のフィリピン滞在歴をもとに「アジアと日本人」について、また事件を含めた現代の世相に関しても幅広く取材。

  • 地震で倒壊したジェネラルサントス市内の大学(ジェネリンさん提供)

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