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野菜を「噛む」ことが血糖値変動のメカニズムに影響

咀嚼が食後のインスリン分泌を促すことを確認

野菜を「噛む」ことが血糖値変動のメカニズムに影響咀嚼が食後のインスリン分泌を促すことを確認 ―

 

詳細は 早稲田大学Webサイト をご覧ください。

<発表のポイント>

○ ゆっくりとよく噛んで食べることによる食後の代謝応答への影響は知られているが、これまで同じエネルギー量の食品を用いた咀嚼の有無による影響は検討されていなかった。

○ 野菜を「噛む」ことで、食後のインスリン分泌およびインスリン分泌を促すホルモンが刺激されることを確認した。

○ 野菜を「噛んで食べる」という食べ方の一つである咀嚼の重要性を、食後の代謝の視点より裏付けることを明らかにした。

早稲田大学スポーツ科学学術院の宮下 政司(みやした まさし)教授、同大学スポーツ科学研究センターの亀本 佳世子(かめもと かよこ)研究助手(当時)と、キユーピー株式会社(本社:東京都渋谷区、代表取締役 社長執行役員:髙宮 満)らの研究グループは、野菜(キャベツ)を「咀嚼して食べるとき」と「咀嚼せずに食べるとき」の食後における代謝への影響を調べたところ、噛むことで食後の血糖値を下げるホルモンであるインスリンがしっかりと分泌され、その作用機序の一つとしてインスリンの分泌を促す作用を持つホルモンであるインクレチンが食後の初期段階で刺激されることを発見しました。

 

本研究成果は、Springer Nature発行の『Scientific Reports』に「Effect of vegetable consumption with chewing on postprandial glucose metabolism in healthy young men: a randomised controlled study」として、2024年3月30日(土)にオンラインで公開されました。

 

■研究の波及効果や社会的影響

加齢に伴いインスリンの分泌が低下するため、野菜を「噛んで食べること」でインスリンの分泌が刺激される可能性が示唆された若年者を対象とした本研究の結果は大変意義深いと言えます。また、国が推進する食育推進基本計画では、「食育の推進に当たっての目標」の一つに、「ゆっくりよく噛んで食べる国民を増やす」ことが掲げられ、国民が生涯を通じ心身の健康を支える食育の推進の視点として「噛む」ことを推奨しています。しかしながら最近は、固い食べ物は敬遠され、やわらかい食品が好まれる傾向にあり、意識して「噛む」ことが求められているため、普段の生活の中の実践が期待されます。

 

■今後の課題

本研究では、野菜(キャベツ)を「咀嚼して食べるとき」と「咀嚼せずに食べるとき」の「咀嚼」に着目し、その代謝への影響を検討したかったため、用いたその他の食品として咀嚼せずに摂取できるゼリー飲料を用いました。食後のインスリン及びインクレチン分泌が促進されたにも関わらず、食後血糖値は条件間で差が認められなかったのは、試験食が一般的な食事とは異なるゼリー飲料であったことが理由のひとつとして考えられます。インスリンの分泌には、食事をして血糖値が上がることによって出るインスリンとインクレチンによって出るインスリンがあります。本研究において、野菜(キャベツ)を「咀嚼して食べる」ことが、どちらに作用、あるいは両方に作用したか不明ですが、魚や肉に含まれる脂肪酸がインクレチン分泌を促すことが知られていますので、今後、野菜と一般的な食事とを組み合わせ、「ゆっくりとよく噛んで食べる」ことで、本研究と同様に食後にインスリンやインクレチンの分泌が促進し、食後の血糖値の上昇を抑えられるかを幅広い年代や性別で調査する必要があります。

 

■研究者のコメント

野菜を「噛んで食べること」に着目し食後の糖代謝を検討した研究は珍しく、特にこれまでインスリンの分泌を促進するインクレチンの作用は不明でした。なぜ、「咀嚼」がインスリンの分泌を促すかに着目し、キユーピー株式会社との共同研究により、この疑問を調べることができました。野菜を「噛んで食べること」で増えたインクレチンは、食欲にも関わるホルモンであるため、今後、日常生活の中で「ゆっくりとよく噛んで食べる」ことを実践することで、食事の摂取量や体重にも影響があるか否かについても調査していきたいと思います。

 

■論文情報

雑誌名:Scientific Reports

論文名:Effect of vegetable consumption with chewing on postprandial glucose metabolism in healthy young men: a randomised controlled study

執筆者名(所属機関名):Kayoko Kamemoto*d, Yusei Tataka*e, Ayano Hiratsu *e, Chihiro Nagayama*e, Yuka Hamada*d, Koji Kurata*f, Michiko Chiyoda*f, Machi Ito*f, Masashi Miyashita*a,b,c

*a Faculty of Sport Sciences, Waseda University

*b School of Sport, Exercise and Health Sciences, Loughborough University

*c Department of Sports Science and Physical Education, The Chinese University of Hong Kong

*d Waseda Institute of Sport Sciences, Waseda University

*e Graduate School of Sport Sciences, Waseda University

*f R&D Division, Kewpie Corporation

オンライン掲載日:2024年3月30日(土)

掲載URL:https://www.nature.com/articles/s41598-024-58103-w

DOI:https://doi.org/10.1038/s41598-024-58103-w

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