職人と出会うオープンファクトリーイベントRENEW〜福井県越前鯖江地域 沼尾波子 東洋大学教授 連載「よんななエコノミー」
眼鏡やバッグなど、日ごろ製品を使っているだけでは、その背景にある作り手の思いや技術になかなか気づけない。だが産地を訪ね、職人やデザイナーと対話すると、一つの製品が生まれるまでの創意工夫や技術の積み重ねが見えてくる。
先日、福井県鯖江市を訪れ、眼鏡や漆器、繊維をはじめとするものづくりの繊細さと精巧さに圧倒された。そのきっかけがオープンファクトリー。製品の製作現場を一般に公開し、工房や企業と来訪者がつながるきっかけを創る。製品が生まれる現場を見て、職人から直接話を聞き、その価値や背景を知ることで製品のファンが生まれる。中にはここで働きたいと産地を訪れる人も現れるという。
このオープンファクトリーイベントの草分け的存在の一つが、福井県鯖江市・越前市・越前町で毎年秋に開催されるRENEWである。2015年に22社で始まったこのイベントは大きく成長。今では越前漆器、越前和紙、越前打刃物、越前箪笥、越前焼、眼鏡、繊維という7つの地場産業を横断して約120の事業者が参加する。25年には、3日間の開催期間に延べ5.5万人が訪れた。
RENEWの意義は、来訪者を呼び込むことだけではない。工房見学や来訪者との交流は、作り手自身が技術や仕事の価値を再認識する機会にもなる。「もう少し続けてみよう」「新しい商品をつくってみよう」という意欲とともに、下請け中心だった企業による自社商品開発やファクトリーショップ開設、若者の就職・移住など、産地の新たな動きにもつながっている。
RENEWは、事業者にとって年に一度、新たな挑戦を披露する「舞台」でもあるという。参加する工房や企業の中には、新商品やワークショップを企画したり、若手社員に企画を任せたりするところもある。毎年訪れるリピーターも多いため、前年とは違うものを見せようという意識も生まれる。イベントに向けた準備の過程そのものが、事業者同士で産地の将来を考える機会となっているそうだ。
最近では、RENEWで培った経験をもとに、運営母体の一般社団法人SOE/RENEW実行委員会が通年型の「産業観光」を展開する。一年を通じて工房見学やものづくり体験を提供し、国内外から旅行者を受け入れるほか、越前和紙をテーマとした工芸宿「SUKU」の運営、デザイン経営を学ぶスクール、企業と若者を結ぶ就業・移住プログラム「産地のくらしごと」などにも取り組む。
ものづくりを次の世代につなぎ、持続可能な産地をどうつくるか。オープンファクトリーを入口に、越前鯖江地域の取り組みは広がりを見せる。26年のRENEWは10月9〜11日に開催される。
(東洋大学教授 沼尾波子)
【KyodoWeekly(株式会社共同通信社発行)No.35からの転載】













