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ポート番号ってなに? 【岡嶋教授のデジタル指南】

 家に届く手紙をイメージしてみてください。家族が複数いる場合、住所だけでは誰宛の手紙なのかは分かりません。インターネットの世界でも同じことが起こります。よく新聞などで「インターネットの住所」などと説明されるのがIPアドレスですが、それだけでは、届け先のコンピューターまでしか分かりません。

 大昔のコンピューターのように、「このコンピューターではアプリが1個しか動いていないぞ」という状態ならともかく、複数のアプリを同時並行で動かすのが当たり前の現在、これでは通信のときに困ります。着信した通信をそのコンピューター内のどのアプリに手渡せばいいか、判断できないからです。そこで登場するのが、「ポート番号」です。

 ポート番号とは、一言で言えば「アプリケーションを見分けるための番号」です。パソコンというマンションがあったとして、そのマンションを見分けることはIPアドレスでできます。そこから進んで、「マンション内の80号室でHTTP(ウェブ)が仕事してる」「110号室に行けばPOP3(メール受信)に巡り会えるぞ」となるのですが、この80や110をポート番号と呼んでいます。部屋だと腑に落ちなければ、郵便受けのように考えてもいいと思います。

 例えば、ウェブサイトを見ているとき、そのウェブサイトを見せてくれているコンピューターは「HTTP(80番ポート)」や「HTTPS(443番ポート)」という郵便受けを通じて、通信のデータを送受信しています。1個のコンピューター上(同一IPアドレス)でも、メールアプリはメール用のポート、ウェブアプリはウェブ用のポートを使い分けることで、データが混ざらず正しいアプリに届くようになっているわけです。

 ポート番号は16ビットの数値で表され、私たちになじみの深い10進数だと0〜65535番までが存在します。また、用途によってTCPポート(信頼性のある通信をする)とUDPポート(速度を追求した通信をする)に分かれています。

 このうち0〜1023番はウェルノウンポートもしくはシステムポートと呼ばれ、国際的に用途が決まっています。下記は一例です。

25番:SMTP(メール送信)

80番:HTTP(ウェブ通信)

110番:POP3(メール受信)

443番:HTTPS(ウェブ通信:暗号化)

993番:IMAPS(メール受信:暗号化)

 私たちは普段、こういった番号を意識していません。グーグルのウェブサーバーみたいなコンピューターが、「今日の気分は5000番ポートだ」などとやるとみんなが混乱するので、ウェルノウンポートが定まっているわけですが、私たちの手元のノートパソコンで、メールソフトが何番ポートを使っているかなんて、誰も気にしていません。好きな番号を使っても、世間に迷惑をかけたりしません。

 そこで、私たちのパソコンやスマホが通信を行うときには、基本ソフト(OS)がポート番号(「エフェメラルポート」と呼ばれる1024〜65535番の範囲)を自動的に割り当ててくれます。だから、私たち自身は「自分のスマホのブラウザーは、何番ポートを使っているんだ?」と意識しなくてみます。

 このようにポート番号を使い分けることで、通信の交通整理をしていると考えてください。例えば同じパソコンで同じタイミングに、ウェブブラウザーとメールソフトが同時に通信しても、ポート番号が異なっているので混乱が起きません。

 なお、ファイアウォールやセキュリティソフトでは、ポート番号を見て「この通信は許可する」「この通信は遮断する」といった判断を下しています。もちろん、別の情報も使いますが、判断根拠の一つです。例えば「うちの組織はウェブサーバーを運用していないのに、443番ポート宛ての通信が送られてきたら怪しいぞ」となるわけです。

 現代のコンピューターでは複数のアプリケーションが同時に並行して仕事をし、通信が飛び交っています。ポート番号は、その錯綜する通信が正しく目的地にたどり着くための、交通整理を担っています。

【著者略歴】

 岡嶋 裕史(おかじま ゆうし) 中央大学国際情報学部教授/中央大学政策文化総合研究所所長。富士総合研究所、関東学院大学情報科学センター所長を経て現職。著書多数。近著に「思考からの逃走」「プログラミング/システム」(日本経済新聞出版)、「インターネットというリアル」(ミネルヴァ書房)、「メタバースとは何か」「Web3とは何か」(光文社新書)、「機動戦士ガンダム ジオン軍事技術の系譜シリーズ」(KADOKAWA)。Eテレ スマホ講座講師など。

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