KK KYODO NEWS SITE

ニュースサイト
コーポレートサイト
search icon
search icon

「気づくことが第一歩」 【平井理央 コラムNEWS箸休め】

 先日、私の高校の同級生でもある小児精神科医の内田舞さんの新著を読みました。彼女はハーバード大学で准教授として働きながら、臨床の現場にも携わり、さらには3人の男の子のママでもあるスーパーウーマンです。素顔は、明るくておしゃべりが大好きな心優しいチャーミングな女性で、会うと大きなパワーをくれる私の大好きな友人の一人です。

 実は、高校の時は話したこともなかったのですが「突き抜けた頭のいい人!」で有名だった彼女のことは知っていました。数年前のことですが、現在は何をしているか気になる同級生を調べてくれる「あいつ今何してる?」というテレビ番組で、彼女の名前を挙げさせてもらいました。そこから連絡先を交換し、年に1〜2回彼女が帰国したタイミングで会うようになりました。

 私は高校の頃、彼女が高校という狭いコミュニティーにおいて、人と群れることなくわが道を進みながらも、決して1人で進んでいるのではなく、周囲と楽しく過ごしているところをすごいなと感じていました。彼女は彼女で、当時タレント活動をしていた私が、朝のテレビ番組に出演した後に学校のマラソン大会に参加し、勢いよく走っている姿を見てカッコいいと思っていてくれていたそうです。互いに当時は、その思いを伝え合えなかったのですが、20年の時を経て、つながれました。

 新著のタイトルは「ソーシャルジャスティス」。日本語に直訳すると「社会的正義」という少し構えてしまいそうになるのですが、今の日本の閉塞(へいそく)感や生きづらさがどこから来ているのかを紐解きつつ、そんな中どう生きるかを彼女らしい冷静な分析と人間愛を織り交ぜた考察が盛り込まれた一冊です。読み終わると、やはり彼女と会った後のようなポジティブな気持ちと、何か自分にもやれることがあるのではと、勇気をもらえるすてきな体験でした。

文春新書

 中でも本の中で紹介されていた〝Silence is Complicity(沈黙は共犯)〟という、Black Lives Matter運動で広く使われることになったフレーズを見たときは、ドキっとしました。人種差別だけでなく、子供の頃でいえば、いじめへの見て見ぬふり、今大きく扱われているセクハラ問題や、さまざまな差別など、被害者がいることが分かっていながら、そこを見て見ぬふりをすることは「共犯」であるというメッセージです。

 自分自身はどうなのか? 共犯者にはならないぞ。ではどうやって?

 「気づくことが第一歩」という彼女の言葉をしっかりと心に刻み込みながら本を閉じました。

平井理央(ひらい・りお)/1982年東京生まれ。2005年、慶應義塾大学法学部卒業後、フジテレビ入社。スポーツニュース番組「すぽると!」のキャスターを務め、オリンピックをはじめ国際大会の現地中継などに携わる。13年フリーに転身。ニュースキャスター、スポーツジャーナリスト、女優、ラジオパーソナリティー、司会者、エッセイスト、フォトグラファーとして活動中。

(Kyodo Weekly・政経週報 2023年7月10日号掲載)

編集部からのお知らせ

新着情報

あわせて読みたい