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地域でみんなの夢を叶える福祉 ながよ光彩会の挑戦 沼尾波子 東洋大学教授 連載「よんななエコノミー」

 長崎県長与町にある社会福祉法人ながよ光彩会の取り組みは、福祉の概念を大きく変えるものだ。一人一人の夢を地域のみんなで叶(かな)える、そんな「福祉」を実践している。

 特別養護老人ホームかがやき、障害福祉事業GOOOOOOOD(グッド)のほか、「みんなのまなびば み館(かん)」、JR長与駅でのGOOOOOOOD STATION運営など多角的に事業を展開する。

 かがやきでは、入所者の自己実現をみんなで工夫する。例えば、認知症が進行した祖母が孫の結婚披露宴に出席できる方法はないか。関係者が相談してできることを考え、披露宴でのサプライズを実現した。祖母の思い、家族の思いを形にするために、みんなが挑戦する。

 職員の夢を叶える職場でもある。ゼロ歳児からの子連れ出勤を認めているほか、副収入を稼ぐことも可能な体制を取る。子連れではケアに集中できないという声もあったが、むしろ、赤ちゃん1人が数人のおばあちゃんをじーっと集中させることができるという。職員の子どもが「ただいま」と言って入ってくる開かれた空気がある。

 かがやきの施設内に開設した就労継続支援B型事業所GOOOOD KAGAYAKIでは、県内企業から受け入れた木の端材からキーホルダーを製作したり、コーヒー豆を焙煎(ばいせん)し販売する。地域の資源を活用した循環型社会の構築への貢献、さらに職員の趣味と特技が高じた香りとコクのある美味(おい)しいコーヒー作りを多様な就労の形で実現できる環境も整えた。制度上、就労支援事業は65歳になると利用できなくなることから、介護保険事業所を併設し、高齢になっても同じ仕事を担い、お小遣いを稼げる環境を用意する。

 町の中心部では「み館」を運営する。テーマは「まちのリビング」。子どもから高齢者まで、いろいろな人が訪れる。職員のほか、地域の老若男女が自分の得意なことを「せんせい」として「きょうしつ」を開く。お掃除などのお手伝いをするとポイントをためてお菓子に交換する仕組みもある。お菓子はパチンコ店からの寄付だという。みんなで作って食べる「らふキッチン」も開催する。地域でいろいろな人が出会い交流する場を創出するとともに、一般の人には縁遠い福祉施設で働く人々が地域とつながる場にもなっている。

 2023年9月から、正午以降無人になるJR長与駅の管理も担っている。車いすの人や障害のある人も安心して利用できるよう、集改札や介助などを担う。さらに市が所有する駅内のホールで、カフェやショップを運営、就労支援事業で作ったコーヒーなども販売する。

 地域の暮らしや仕事のなかに「福祉」があり、一人一人が豊かに働き、つながることができる場が創出されている。

【KyodoWeekly(株式会社共同通信社発行)No.15からの転載】

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