道から宿場町を見直す―中津川市が実証実験 JR東海と組み、自走するまちづくりへ

岐阜県中津川市はJR東海(名古屋市)と連携し、地域内外の人が中山道の宿場町として栄えた中心市街地の価値を探る地域デザインプログラムを進めている。参加者がまちを歩き、住民の話を聞きながら、見過ごされてきた路地や空き家、道の価値を読み直す取り組みだ。今秋はその調査を一歩進め、11月21日に中心市街地の道路で実証実験を行い、道を、人が集い憩う公共空間として活用できるかを確かめる。
今秋のプログラムは10月14日に始まり、11月22日まで続く。10月17~18日に現地をフィールドワークし、路上で試す仕掛けを試作。その上で11月21日に中心市街地の道路上で本格的な実証実験を行い、結果を検証する。小さな実践を重ねて都市を変える「タクティカル・アーバニズム」の考え方だ。集めたデータは参加者自身が読み解き、市とともに中心市街地のまちづくりを考える材料にする。
▽構想の出発点

中津川市は2026年1月、JR東海と、地域と継続的に関わる「関係人口」の創出に向けた連携協定を締結した。中山道の宿場町を舞台にした地域デザインプログラム「LOCAL RESEARCH LAB 中津川」には、これまでに延べ200人以上が参加。地域に根を張る「土の人」と、外から新しい視点を持ち込む「風の人」が共にまちを歩き、見過ごされてきた路地や空き家の価値を読み直してきた。


人口減少が進む中、民間の企画力やネットワークを行政の課題解決にどう生かすか。中津川市とJR東海が取り組むのは、歴史ある中心市街地の価値を問い直し、自ら動く人を育てる地域経営だ。官民連携をイベントの共催で終わらせず、今ある資源を見つめ直すところから、まちの再設計へとつなげる。リニア中央新幹線の新駅開業を待たずに変化を起こそうとする試みは、他の自治体にも示唆を与える。
市は、リニア中央新幹線の岐阜県駅(仮称)が市内にできるのを見据え、まちづくりを進めてきた。中山道の宿場町として栄えた歴史を持ちながら、地域の内側では「何もない」と見過ごされがちだった。古民家や街並みの価値が、今の言葉で語り直されないまま眠っていた。
転機は2022年秋。市の担当者と出会ったJR東海の担当者が、観光地ではない路地裏や、歴史の痕跡が残る空き家に強くひかれた。両者は意気投合したが、時機が合わず1年の空白を経て、当たり前の風景を読み直す構想にたどり着く。
プログラムは25年3月のセミナーを皮切りに動き出した。市は26年1月29日、JR東海と「中心市街地まちづくりにおける関係人口創出促進に係る連携と協力に関する協定」を結び、連携を正式に位置付けた。関係人口の創出を目的とする協定は、市が企業と結ぶのも、JR東海が自治体と結ぶのも初めてだという。
▽外部の知恵を重ねる
プログラムの企画・運営は、JR東海グループのJR東海エージェンシー(東京都港区)が担う。JR東海と共に運営する共創人口創出事業「conomichi(コノミチ)」で培った経験を生かし、市内外から参加者を募る。
協力するデザイン会社KESIKI(東京都港区)のメンバーはリサーチディレクターを務める。人類学やデザインの知見を基に、現地の手触りや気付きを引き出す調査を設計する。
26年3月15日には、岐阜大学が市内に設けた「地域ラボ・中津川」が主催するイベントを共催し、双方の成果を持ち寄ってまちの将来像を話し合った。

こうした官民の連携は、行政だけでは集めにくい編集や企画の専門人材を民間のネットワークで呼び込み、「土の人」と「風の人」の異なる視点を重ねて価値を読み直す仕組みだ。参加者の中心は30~40代の専門人材だという。
参加者は道端の石碑や商店主との何気ない会話から、見過ごされていた価値を拾い上げてきた。運営側によると、中心市街地を人に薦めたいかを尋ねた地元住民の点数は、参加前の5.3点から9.0点に上がった。プログラムで出会った市内外の4人は「中津川商店」を立ち上げ、月例イベントやポップアップ店を始めている。
26年6月の現地調査には、一橋大学の学生12人を含む計38人が参加した。中山道、駅前通り、川と路地の三つのテーマに分かれてまちを調べた。成果は「リサーチブック」にまとめる。
▽路上で試す
今秋のテーマは、車社会の進展で人から遠ざかった「道」を捉え直すことだ。
参加者は10月17~18日に現地をフィールドワークし、路上に置く仕掛けを試作する。28日のオンライン回では、人の反応をどう測るかを専門家と検討する。11月21日には中心市街地の道路で実証実験に行い、反応を確かめる。実験の後は、参加者が道の使い方を練り直す。
外部の後押しも得た。日本デザイン振興会(東京都港区)は26年4月、JR東海が申請したこの取り組みを2026年度デザイン助成の対象に選んだ。応募36件から選ばれた4件の一つで、助成額は50万円。旧中山道沿いの古民家や公共施設を生かし、地域内外の人が使える試作の拠点をつくる計画だ。
宿場町の路地を歩いて価値を探す活動は、公共空間で試し、確かめる段階へ進んだ。中津川の官民連携が自走できるか。11月の路上実験が最初の試金石になる。(株式会社共同通信社 垂見和磨)

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