【K-POPもKドラマも深読みしたら韓国が見えた】#MOMOはなぜ、同い年のアナウンサーを「友達」と呼んだのか――韓国語「チング」のもう一つの意味
K-POPや韓国ドラマは、エンターテインメントであると同時に、韓国社会を映す鏡でもある。何気ない言葉やしぐさ、習慣の背景をたどると、その国ならではの価値観や歴史、人との関わり方が見えてくる。この連載では、韓国カルチャーを入り口に、知っているようで知らない韓国を読み解いていく。

▽同い年と分かったら「友達」?
2026年7月、フジテレビの生活情報番組「ノンストップ!」公式YouTubeチャンネルに、TWICEの日本人ユニットMISAMOへのインタビュー動画が公開された。インタビューしたのは、フジテレビの小山内鈴奈アナウンサー。動画のタイトルにも「“同い年”女子トーク」とあるのだが、その中に、私には引っかかる場面があった。
小山内アナは1996年9月生まれ、MOMOは同年11月生まれ。二人が同い年だという話になったときだ。MOMOが小山内アナに向かって「友達〜」と声を上げるのである。
どこか妙ではないだろうか。同い年だと分かったからといって、その場でいきなり「友達」になるわけではない。
この場面を見て、私は以前、教え子から聞いた話を思い出した。
教え子がK-POPアイドルと映像通話をしたときのことである。会話の途中で、お互いが同い年だと分かった。すると、画面の向こうのアイドルが、日本語で「ともだち、ともだち」と繰り返したという。
彼女は戸惑った。「友達になろう」という意味なのだろうか。もちろん推しからそう言われればうれしい。でも、なぜ同い年だと分かった瞬間に突然「友達」なのか。
▽「友達」だけでは分からないグという言葉だ。
チングは、韓国語を勉強し始めるとかなり早い段階で「友達」の意味で習う。韓国国立国語院の『韓国語基礎辞典』でも、第一の意味は「互いに親しく付き合う人」と説明されている。
ただし、そこにはもう一つの意味が載っている。「年齢が同じくらいか、自分より下の人を、親しみを込めて呼ぶ言葉」である。つまりチングは、日本語の「友達」だけでなく、「同じくらいの年齢の人=同輩」や「年下の人=目下」の呼び名でもあるのだ。
この二つの意味を、一つの発言の中で使い分けた例がある。2021年にKBSで放送された特別番組「Let’s BTS」で、BTSのVがARMYについて語った場面だ。
「ARMYは自分にとってかけがえのないチングだ」と話したVは、その直後に、「もちろんチングはジミンだけだけど」と付け加える。日本語の「友達」の意味で捉えると、「友達はジミンだけなのに、ARMYも友達なの?」と矛盾する。さらに、他のメンバーもいる中で「チングはジミンだけ」と言ったのに、当のジミンは表情を変えない。そのため、日本のファンが紹介する動画では「テテの公開告白に動じないジミンさん」といったタイトルも付いているのだ。
しかし、チングのもう一つの意味を思い浮かべると、このシーンを矛盾なく理解できる。Vは、ARMYには「友達」、ジミンにはグループで唯一同い年であることから「もちろん同い年のメンバーはジミンだけだけど」と事実を述べたシーンだったのではないか。
▽同い年も年下も「チング」
ここで「同輩」の意味を確認しておこう。同輩とは「年齢、地位、身分などが自分と同じくらいの人や、同じような立場の仲間」のことで、目上と目下の「上下関係」に対して「横の関係」を指す。こうした意味でチングが使われる場面をもう少し見てみよう。
子どもを公園で遊ばせているところへ、同じくらいの年齢の子どもがやって来たとする。韓国では、自分の子どもに対して「チングが来たよ。一緒に遊ばない?」と声をかけることがある。「友達」と訳すと、「知らない子なのに、なぜ友達なのか」となってしまうだろう。しかし、ここでのチングは、二人がすでに親しいことを指してはいない。「あなたと同じくらいの年齢」という意味である。
また、年下が年上に失礼な言葉遣いをしたとき、年上が「俺がお前のチングか?」と注意することがある。これは「友達ではない」と友情を否定しているのではなく、「私はお前と同輩ではない。同輩に対するような話し方をするな」という意味である。
さらにチングは、辞書に書かれていたように、「目下」の相手について話すときにも使われる。たとえば、BTSのナムジュンとホソクが、年下のVについて「このチング、昨日こっそり一人でおいしいものを食べていたんだよ」と話すような場合である。ここでの「このチング」は、Vを自分たちの友達だと説明しているのではない。日本語の「この子」や「こいつ」に近い。
では、二人が「同い年」なのではなく、「親しい」ということ自体を強調したいときはどうするのだろう。「ジミンとはチネヨ(親しいです)」などと言えば、年齢関係ではなく、二人の親しさに焦点を当てることができる。
一方、Vが年上のジンについて「友達です」と言いたい場合、「ジン兄さんとはチングです」という表現には違和感がある。年上の相手は、通常チングとは呼ばない。チングという言葉が「同輩」や「目下」と紐付けられているからだ。「ジン兄さんはチナンヒョン(親しい兄さん)です」などと表現する。
▽MOMOの日本語に表れた韓国語の感覚
MOMOは日本語の母語話者である。しかし、長く韓国語の人間関係の中で活動してきたMOMOには、同い年だと分かった瞬間に、「タメだ!」の感覚で「友達」と言ったのではないだろうか。そう考えると、この発言はすんなり理解できる。
日本人も、同い年だと分かった途端に距離が縮まる感覚を知っている。「え、タメじゃん!」と盛り上がった経験のある人は多いだろう。そんな時、韓国では「パンガプタ、チングヤ(会えてうれしいよ、チング)」と声をかけることがある。チングは、まさにそんな場面で口にする言葉でもあるのだ。
日本語では「友達」と「タメ」は別の言葉だが、韓国語のチングは、「親しい人」と「同輩や目下の人に親しみを込めた呼び名」の意味が重なっている。
MOMOが小山内アナに言った「友達〜」も、教え子の推しが繰り返した「ともだち、ともだち」も、Vの「チングはジミンだけ」も、「友達」という日本語だけでは十分に説明できない。そこには「同い年」という関係の認識が重なっていると考えると、すんなり理解できる。
チングを「友達」の意味でだけ捉えていると見えないものがある。推しがチングと言ったとき、それが親しさを表しているのか、年齢関係を表しているのか、少し立ち止まって考えてみてほしい。
筆者プロフィール
たんふる先生(韓活韓国語ラボ)。韓国語・韓国文化研究者。NHKラジオ語学講座講師や韓国ドラマの字幕翻訳を手がけ、韓国ドラマ専門誌「もっと知りたい!韓国TVドラマ」(休刊)では「ドラマで学ぶ韓国語」を15年間連載。現在は「GOING SEVENTEEN」全123話・字幕約11万行やBTSのバラエティー字幕をデータ分析し、「推しが実際に話す韓国語」を読み解いている。分析の詳細はnote「韓活韓国語ラボ」で公開中。
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