KK KYODO NEWS SITE

ニュースサイト
コーポレートサイト
search icon
search icon

広島の「被爆石」がスロベニアへ 平和願い、首都の植物園で除幕式

除幕を行う梅本道生ひろしま・祈りの石の会会長(左)とリュブリャナ市のデヤン・ツルネク副市長(中央は「祈りの石」)

 ヨーロッパの緑豊かな美しい国、スロベニア。その首都リュブリャナにある歴史ある大学植物園で現地時間の6月17日、ある除幕式が行われた。
 人々の視線の先にあったのは、力強いたたずまいの御影石。実はこれ、1945年8月6日に人類史上初の原子爆弾が投下された広島の爆心地から、わずか200メートルの場所で広島電鉄の路面電車の敷石として使われていた本物の「被爆敷石」だ。

 世界各国へ平和の願いを届けるため草の根運動を展開している日本の非政府組織(NGO)「ひろしま・祈りの石の会」(広島市)の活動の一環で、これまでに100を超える国と地域に「祈りの石」として贈呈されてきている。今回スロベニアへ贈られたこの石と植物園には、知られざる“物語”があった。

 

▽1990年代から活動

 除幕式には、リュブリャナ市のデヤン・ツルネク副市長や政府関係者、国会議員らが出席。式の冒頭、日本から訪れた「ひろしま・祈りの石の会」の梅本道生会長が「悲惨な核爆発の永遠の目撃者であるこの石が、声なきメッセージとして平和を欲する心を語り続ける。世界の子どもたちが戦争の脅威から解き放たれて育つよう心から願う」と思いを伝えた。

 続いてリュブリャナ大学植物園園長のヨジェ・バウツォン博士は「世界の平和がいかに脆弱であるかが露呈し、多くの紛争が起きている現代において、石、桜、そして広島の被爆樹木の子孫という、平和の象徴を強調することは、これまで以上に求められている」と、さらなる平和希求への決意を語った。

リュブリャナ植物園園長、ヨジェ・バウツォン博士

 「祈りの石」の活動が始まったのは1990年代。広島市民を中心に延べ約1万人もの人々が参加し、7年の歳月を費やして敷石の一つ一つに彫刻を施してきた。石の表面に目を凝らすと、平和を祈る女性の姿と「From Hiroshima」の文字が刻まれているのが分かる。

 国境や民族、思想の壁を越え、「二度と同じ悲劇を繰り返してはならない」という純粋な平和への願いが、この約50センチ四方、重さ約50キロの御影石に込められている。

 

▽石に込めた「平和のはかなさ」

 石の台座にはスロベニア産のカルスト石灰岩が採用された。台座のデザインを手がけたのは地元のデザイナー、マルコ・ドルピッチ氏だ。完成した記念碑の台座は、あえて“不安定”な印象を与えるユニークな形状をしている。ドルピッチ氏は、このデザインに込めた「平和のはかなさ」を次のように明かす。

 「平和とは、それを手にしている時は永遠で揺るぎないものに思えるが、人間の行動によって瞬時に破壊されてしまうものでもある。石もまた堅固で不変のものであるが、人間の力によって形を変えられ、制御されてしまうものでもある」

 

▽エノキを植樹

 「祈りの石」が設置されたリュブリャナ大学植物園は、1810年に創設された。現在は国の重要文化財に指定されている大学の研究機関であり、都会の喧噪(けんそう)から離れてリフレッシュできる市民の憩いの場としても親しまれている。

エノキの植樹が行われた

 同園と日本の間には、四半世紀以上にわたる深い交流の歴史がある。 1999年に日本から友情と協力の証しとして7種類の桜が贈られ、2000年には日本の皇族が記念植樹に訪れた。毎年春になると見事な桜が咲き誇り、現地の人々に「日本との友好のシンボル」として愛され続けてきている。

 今回の式典では、桜に続いてもう一つ、日本との絆を深める「緑の生命」が加わった。同園が2013年に広島平和協会へ依頼し、種子から大切に育ててきた「広島の被爆樹木の子孫」であるエノキの苗木だ。原爆の惨禍を耐え抜いた「石」の傍らに、未来へ伸びゆく「被爆樹木の緑」であるエノキが力強く植樹された。

 

▽大統領を表敬

 式典の翌18日には、会の関係者らはスロベニアのナターシャ・ピルツムサル大統領を表敬訪問し、被爆石に込められた広島の願いを伝えた。大統領からは同会の草の根の活動が「次世代の平和教育に果たす役割」について、高い評価と賛辞が寄せられたという。

 紛争のニュースが絶えない現代の世界情勢の中で、この記念碑が持つ意味はさらに重さを増している。美しい緑と桜に囲まれた植物園の一角に設置された「祈りの石」。それは広島と世界各地を平和の絆で結び、訪れる人々に調和と友愛の大切さを静かに、しかし力強く語りかけていく。

  • 除幕を行う梅本道生ひろしま・祈りの石の会会長(左)とリュブリャナ市のデヤン・ツルネク副市長(中央は「祈りの石」)

編集部からのお知らせ

新着情報

あわせて読みたい