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朝比奈秋『受け手のいない祈り』が芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞 救急医療の極限を描いた衝撃作

 医師であり芥川賞作家の朝比奈秋(あさひな・あき)氏が、最新作『受け手のいない祈り』(新潮社・税込み2090円)で芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞した。常勤医として救急救命の最前線に立っていた自身の経験をもとに、過酷な医療現場の実態を真正面から描いた同書は、多くの医療従事者から「自分の現場そのものだ」と共感の声が寄せられている。

 朝比奈氏は2021年のデビュー以降、医療の現実と人間の内面を鋭く描く作風で注目を集めてきた。2024年には『サンショウウオの四十九日』で第171回芥川賞を受賞。本作はそれに続く単行本で、感染症拡大によって医療体制が逼迫した時期の救急現場を舞台に、青年医師・公河(きみかわ)の極限状態を描く。

 公河は、医大時代の同期が過労死したことを知りながらも、感傷に浸る間もなく運び込まれる患者の対応に忙殺される。近隣病院が夜間救急から撤退し、彼の勤務先が地域の“最後のとりで”となる中、徹夜の治療と手術が連日続き、勤務は70時間を超える。命を救った患者は日常へ戻る一方、自分たちは出口のない地獄に取り残される――その理不尽さと疲弊が、静かだが強烈な筆致で描かれる。

 朝比奈氏は受賞に際し、「あの状況から生きて戻れたのは不思議でならない」「医師時代の過酷な勤務から生まれたこの小説を読んでいただければうれしい」とコメント。作家・九段理江も「(自分の作品ではなく)この作品こそ芥川賞を取ると思っていた」と語る。

 医療崩壊が叫ばれる日本社会において、命を救う現場の裏側で、誰がどれほどの犠牲を払っているのか――本作は、“医療を利用するすべての人が読むべき一冊”だろう。

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