和製テイラー、坂口有望さん 【山崎あみ コラム音楽の森】
坂口有望(さかぐち・あみ)さんを私が知ったのは、彼女が14歳の時にギターの弾き語りをしている動画でした。曲は、バンド「クリープハイプ」が30歳手前の男性に向けて作った応援歌「二十九、三十」。限界を迎えたサラリーマンの心に渦巻く投げやり、吹っ切れ、哀愁を表現している彼女の姿に衝撃を受けました。
歌声は、とてもクリアで耳にスッと入ってくる透明感がありながら、素朴さや親しみやすさを持っていて、叫びに近いような力強さと説得力もある。この曲自体、歌うのが難しいと言われていますが、9年たった今もYouTubeに新規のコメントが書き込まれるほど、多くの人の心に残るカバーを、14歳にして歌い上げていたのです。
ソングライターでもある坂口さんご本人が制作する楽曲では、ワードチョイスのセンスが爆発しています。メジャーデビュー・シングル「好-じょし-」(2017年)がTikTokでバズったのですが、サビの「君がいなくなったって ご飯はおいしい ちゃんと味もする」というフレーズだけで、強さと弱さ、かわいらしさやちゃっかりしている一面・・・。女の子の人柄や雰囲気が想像できます。さらに彼女の歌詞は、聴き手の想像力を超え、新しい感覚を与えてもくれます。
ご本人は「ストレートに言葉を紡ぐというよりは、歌詞カードを読んで、『こんなことを歌っていたんや』って発見できて、鳥肌が立つみたいな方が好きだ」と話しています。坂口さんの楽曲は宝探しに近いと感じます。歌詞の中に、隠された感情を見つけるのが楽しいのです。思わず使いたくなる粋なフレーズがちりばめられている部分でも、そう感じます。女の子のリアルなみずみずしい感情や言葉にできない本音を、物や出来事や景色に置き換え、彼女にしかできないオシャレな表現をする。そんなところから、和製テイラー・スウィフトだと私は思っています。
X(旧ツイッター)でも、坂口さんはセンスを発揮していて、「『有望ちゃんって怒ったりするの?』と聞かれることがありますが、半年根に持った挙げ句、曲にしたりするので、より悪質です」「ヒーローとかプリキュアってどうやって生計立ててたんや」といった、日常に転がっている、かわいくクスッと笑えるエピソードをつづっています。実際に坂口さんにお会いする機会があったのですが、関西弁ではつらつ、サバサバとお話しする姿がすてきで、よりファンになりました。皆さんも、和製テイラーがつくる〝宝探しゲーム〟に、ぜひ参加してみてください。
【KyodoWeekly(株式会社共同通信社発行)No. 28からの転載】
山崎あみ(やまざき・あみ)/ 1997年生まれ、東京都出身。音楽大卒。タレント・モデル。1st写真集「Cantabile」(ワニブックス)の他、デジタル写真集も発売中。YouTube番組「うるおうリコメンド」(略称うるりこ。共同通信社制作)出演。
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