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アート探訪も「お、ねだん以上。」 ニトリ会長が手掛ける小樽芸術村が10周年! 葛飾北斎の肉筆画「雪中美人図」をついにお披露目

 明治から昭和初期にかけて北日本随一の経済都市として発展した北海道・小樽。その歴史を象徴する重厚な近代建築や倉庫群を再生し、一大アートエリアへと変貌させた「小樽芸術村」が、今夏、開館10周年を迎える。年間24万人が訪れるこの複合ミュージアムを運営するのは、ニトリホールディングス創業者の似鳥昭雄氏が代表理事を務める「似鳥文化財団」だ。2016年の開館以来、型破りな情熱とユーモア、規格外のビジネス視点で、美術館を世界の一級品が集まる「村」へと拡大し続けている似鳥氏に、本プロジェクトのビジョンを聞いた。

■「好き」と「衝動」で始めた美術館

 現在小樽芸術村は、観光名所の運河近くにステンドグラス美術館(旧荒田商会・旧高橋倉庫)、旧三井銀行小樽支店(重要文化財)、似鳥美術館(旧北海道拓殖銀行小樽支店)、西洋美術館(旧浪華倉庫)、浮世絵美術館の5館が点在する。いずれも徒歩で回れる距離感で、半日から1日かけて巡る楽しさも人気の一つとなっている。

―美術館を始めたきっかけは、ステンドグラスだったそうですね。

 オークションでステンドグラスを買ったんです。すごく大きくて置き場所がなかったので、札幌市内の美術館を探したり、長崎の友人に「寄贈するから飾りませんか」と尋ねたり。でも「飾る場所がありません」と断られてしまいました。そのとき、自身で美術館を始めてはどうかと言われたのがきっかけです。

 小樽に古い倉庫があると聞いて見に行ったら、昔の板張りが残っていました。その状態を生かして美術館にしたらいいんじゃないかと思って最初に手掛けたのが、ステンドグラス美術館でした。オープン直前の館内で初めて、光が透き通ったステンドグラスを目にしました。あまりにきれいで、やって良かったなと思いました。照明は、蛍光灯ではなくてLEDを使いました。当時はまだ珍しかったと思います。光が強いのに熱くならないし、電気代も安いし、すごく良かったですよ。

―ステンドグラス美術館はカップル客も多いですね。

 見てきれいなものは、老若男女、万国共通、みんな好きですよね。(小樽芸術村の)来場者数の約4割をステンドグラス美術館が占めるほど、圧倒的な人気です。実は改装費用は5館のうちで一番かかっていないんですけどね。

 2番目にオープンした旧三井銀行小樽支店は、外観も内観も優雅で美しかったので、すごく気に入りました。その次が、旧北海道拓殖銀行小樽支店かな。当時はホテルだったのを交渉して、似鳥美術館にしました。

―「芸術村」の構想は当初からあったのですか。

 最初は二つか三つあればいいかなと思っていました。でも、いろいろな美術品を見たり買ったりしているうちに、やっぱり三つじゃ足りないと思って(笑)。いいステンドグラスも手に入ったし、似鳥美術館が満杯になってしまったので「四つ目を見つけよう」と探したのが、西洋美術館です。

 建物よりも改装費が高くなり、建物の約10倍かかりました。あまりに広くて何でも入るので、当時はもう十分かなとも思ったんです。ところが、またどんどん美術品が増えてきて、「やっぱり浮世絵は別棟で欲しいな」と思って、2025年7月に浮世絵美術館が完成しました。

■流通小売業も美術館も、大事なのは「お客様」

―音声ガイドや解説テキストを無料で楽しめるほか、体験コーナーや休憩スペースも多くて、どの館もホスピタリティーが充実しています。

 やっぱり、お客様に満足してもらうのが大事ですからね。流通小売業も美術館も同じです。お客様の立場に立って考えないといけません。他の美術館を見ていると、音声ガイドがあっても有料なので、利用する人はあまり多くありません。でも、音声ガイドを聞いた方が楽しめますから、小樽芸術村では無料にしました。あと、どの美術館にも座れる場所をつくりました。美術館は床も硬いし、ずっと見て回っていると、疲れますよね。疲れたら休めるように、あちこちに椅子を置いています。

西洋美術館で実際に座ることができる椅子。他に休憩用椅子もアンティーク品ばかりだった

―個性の異なる美術館をはしごできるのは、アート好きにはたまりませんね。しかも5館共通券が3000円(※オンライン価格)とリーズナブルで驚きました。

 そうですか(笑)。

―収蔵品は年々増えているそうですね。

 毎年10トントラック2~3台分の美術品が新しく入ります。だから、いつ来ていただいても、常に新しいものを見ていただけると思います。しょっちゅう展示替えをしているので、飽きることがありません。

 ステンドグラスだけでも、開館当時の倍ぐらいのコレクションになりました。当初は英国製ばかりでしたが、今はイタリアやフランスなど、世界中の作品が集まっています。似鳥美術館の1階で展示しているステンドグラスは、米国のルイス・C・ティファニー(ティファニー社創業者の長男で芸術家)の作品です。ほとんどがニュージャージー州の教会に飾られていたものです。私の娘が教会の近くに住んでいたので、写真を撮ってきてもらって、それを忠実に再現しました。元の教会はいま建物だけが残っているそうで、本当はその建物を買って、日本に持ってきたいんですけど、何十億円もかかってしまいますからね・・・(笑)。

―浮世絵の企画展も充実しています。

 コレクションは1800枚ぐらいになりました。浮世絵は取り扱いに一番気を使うんです。顔料ではなくて草木、花、自然のもので描かれているので、長く展示すると色が薄れてしまいます。紫外線もだめだし、強い光も当てられません。だから展示期間は30日程度にしています。

 そういえば、「浮世絵美術館の春画コレクションは世界一だ」と、ある専門家の方に言っていただきました。近くパリの日本エキスポで春画展をやるそうで、うちの所蔵品を6枚貸し出しします。私もぜひ見に行きたいですね。春画は意外と女性にも人気があるんですよね。まだ展示できていない作品がたくさんあるので、浮世絵美術館の倉庫を展示室に改装していて、夏には完成予定です。

―10周年に合わせて、見どころがたくさんあると聞きました。

 5月末ごろから西洋美術館に、高さが6メートルぐらいあるドイツ製のステンドグラスを新しく展示しています。ドイツの国民性なのか、手を抜くということがない、素晴らしい作品です。ロシアのクレムリンにある「マラカイトの間」も新しくなりました。

 今後は動くものもやっていこうと思っています。機械仕掛けの天馬を西洋美術館に置くつもりです。あと、余市にあるニトリ観光果樹園に恐竜公園をつくるのですが、そこから小さい子供の恐竜を美術館の広場に持ってこようかなとも思っています。120センチぐらいの大きさで、動いたり鳴いたりします。

■目標はさらに大きく、目指すは10館

―ずばり小樽芸術村の「ロマンとビジョン」とは。

 ないです(笑)。でも、よく周りから「何館までできるんですか?」と聞かれます。そのときは「10館くらいやりたいね」と答えています。私は、何でも目標は大きく言うんです。目標設定を大きくすると、不思議とそこに近づいていくものなんです。

―クラシックカー博物館の構想もあるとか。

 今、30台ありますが、展示場所がなくて探しているんです。米国フォード社の初期のモデルは日本で唯一です。ひどくさびついていたのを手入れして、エンジンをかけたらちゃんと動くようになりました。車内は運転台しかなくて、スピードもゆっくりですが、120年前の車ですからね。すごいでしょう。あと、1万7000台以上のミニカーを寄贈いただいたので、これも展示場所を探しています。

―あっという間に10館を達成しそうです。

 次の「場所」を探しているんですよね・・・。あと、西洋美術館と同じように、日本だけの美術館をつくりたいですね。室町時代から戦国時代、江戸時代のものなど、日本のものだけを集めて展示したいです。

―芸術村は観光地・小樽の新たな魅力創出につながっています。

 2025年の入館者数は24万人を超えました。数年以内には30万人を目標にしています。どこまでいくか楽しみです。こんなに多くの方に来てもらえるとは、思っていませんでした。好きな美術品を手に入れて、それを飾って、お客様が楽しんでくれる。こんな幸せなことはないと思っています。

―オークションにも参加されますか。

 参加しています。オークションは「どうしようかな、買おうかな、やめようかな」といろいろ悩んで苦しみます。だから、手に入れた瞬間が、最高のスリルとサスペンスで、喜びのピークです(笑)。手に入れた後はたま~に見に行くぐらいですね。新しいものへの興味が尽きません。

―昨年、葛飾北斎の肉筆画「雪中美人図」を6億2100万円で落札して話題になりました。予想額をはるかに超える高評価で、北斎作品の落札額としては最高でした。

 すごく気に入って、どうしても欲しかったんです。高くても3億円かなと思っていたんですが、戦前に国の「重要美術品」に認定されているということで特に高かったです。描かれてから200年以上たっているのに、描いた当時のように色鮮やかで、まるで新品です。きっと200年もの間、ずっと大切にしまわれていたのだと思います。

 肉筆画は、世界に一つだけしかないのがいいですね。つまり「本物」なんです。私は葛飾北斎の大ファンです。北斎は自分で「70歳までは取るに足らない作品だ」と言っていたそうです。70歳になってから肉筆画を描き始めて、80代でさらに生き生きと描けるようになり、そうして数え年90歳で亡くなった。100歳まで生きて描き続けるつもりだったんですよね。だからか、北斎の肉筆画は、絵が動き出すような感じさえします。私も北斎を見習って、80代、90代でますますいい作品、会社づくりをしようと思っています。

―「雪中美人図」はついに今夏、お披露目ですね。

 はい、表具を直すなど精緻な修復作業もすべて終わりました。7月18日(土)から浮世絵美術館で一般公開します。小樽芸術村開館10周年を迎える節目に、皆さまにご紹介できる運びとなり、うれしく思っています。

 * * * * 

 小樽芸術村浮世絵美術館では、7月18日(土)から葛飾北斎の肉筆画「雪中美人図」を公開するほか、「小樽芸術村開館10周年記念 名品撰」を開催する。詳細は小樽芸術村公式サイト

■小樽芸術村浮世絵美術館

〒047-0007 小樽市港町5-4  電話 0134-31-1033(代表)

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