副業で稼ぎ続ける人は何が違う?「持ち運べるスキル」の磨き方
副業を始めた人の実際の月収は、平均でどれくらいだと思うでしょうか。Job総研が2025年に実施した「副業・兼業の実態調査」(社会人357人対象)によると、副業経験者の月収平均は5.4万円です。ところが中央値は3万円、最頻値はわずか1万円にとどまっています。「副業で月10万円」という理想を持つ人が多い中、実態は大きく異なります。この差を分けている要因のひとつが、「持ち運びできるスキル」を持っているかどうかです。
Bさん(44歳、大手IT企業の管理職)は昨年から副業コンサルティングを始めました。社内ではプロジェクト管理も会議の進行も得意中の得意です。ところが副業の現場では、なかなか継続依頼がとれませんでした。原因は、会社の内部ルールや社内文化に合わせて磨いてきたスキルが、外の市場では評価されにくいからです。結論を言えば、副業で稼ぎ続けるには「会社の外でも通用するスキル」を意識的に備えておく必要があります。
厚生労働省は、業種や職種が変わっても持ち運びができる職務遂行上の能力を「ポータブルスキル」と定義しています。このスキルを約15分の入力で診断できる「ポータブルスキル見える化ツール」を厚生労働省は無料で提供しており、特にミドルシニア層のホワイトカラー職種に向けて設計されています。ポータブルスキルは「仕事のし方(対課題)」と「人との関わり方(対人)」の2軸で整理され、合計9要素で構成されています。
では、「会社でしか通用しないスキル」とはどのようなものでしょうか。たとえば、特定の社内システムの使いこなし方、上司の好みに合わせた資料の書き方、社内の意思決定ルートを読む力などがあります。これらは会社内では高く評価されますが、転職先でも副業でも直接役に立つことはほとんどありません。長年「仕事ができる人」として評価されてきたとしても、それが社外でも通用するかどうかはまったく別の話です。
一方、副業市場で評価されやすいポータブルスキルの代表例は、「相手の課題を引き出して言語化する力」「難しいことをわかりやすく伝える力」「期日に期待以上の成果を届ける力」などです。これらは業種や職種を問わず、クライアントが対価を払いたいと感じる能力です。こうしたスキルは、会社員の日常業務の中でも意識次第で磨くことができます。社内向けの資料作成であっても、「相手にとってわかりやすいか」を意識して書いていくだけで、それは副業でも通用するスキルの土台になっていきます。
「人との関わり方(対人)」の面では特に、初めて会う相手と短時間で信頼関係を築く力が副業市場で非常に高く評価されます。「仕事のし方(対課題)」の面では、問題の本質を見極めて解決策を組み立てる課題設定力が特に有効です。会社員として積み上げてきた業務経験は、これらのスキルの土台になりえます。日々の仕事の中で「なぜこの問題が起きているのか」「どう解決するのが最善か」を意識して考え続けることが、ポータブルスキルを少しずつ育てることになります。
副業を始めて収入が伸びない人に多いパターンがあります。会社の看板に頼ろうとするケースです。「大手企業の管理職という肩書があれば信用されるはず」という発想で副業を始めると、会社名を出せない個人として動いたときに拠り所を失います。副業市場においては、会社の看板は一切関係ありません。クライアントが評価するのは、目の前の人間が自分の課題を解決してくれるかどうか、ただそれだけです。この現実を直視することが、スキルを磨き直すスタート地点になります。
今から始められることとして、次の3つをお勧めします。まず、自分のスキルを「会社でしか使えないもの」と「社外でも通用するもの」に仕分けしてみることです。次に、厚生労働省の「ポータブルスキル見える化ツール」で自己診断を受け、自覚していない強みを可視化することです。そして、小さな副業案件から始めて、社外の人が対価を払ってくれる理由を体験を通じて確かめていくことです。最初は時給換算が低くても、市場の反応から学べることは多いのです。
副業は、会社という鎧を脱いで自分の実力を試す場でもあります。思ったより稼げなかった、継続依頼がとれなかった、そうした経験は、市場があなたのスキルを正直に評価してくれたフィードバックです。ポータブルスキルを少しずつ積み重ねていくことで、副業の収入は確実に変わっていきます。会社員のまま、社外に通用する力を磨いていく。それが、収入の選択肢を増やすための、最も現実的な第一歩になります。
<筆者略歴>
新井 一:起業コンサルタント 1996年 23歳で会社員のまま起業
2007年 起業支援を本格スタート(現・起業18フォーラム)
新井 一:起業コンサルタント
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