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満身創痍【前編】 「蝶花楼桃花 コラム 直線・曲線・斜め線」

 『人生はクローズアップで見れば悲劇だが、ロングショットで見れば喜劇だ』。これは、かの有名な喜劇役者チャールズ・チャップリンの名言である。これを体現したかのような出来事が私に襲ってきた。後編ではビロウな表現が多分に出てくるので、どうかお気を悪くされませんよう。

 私は落語家という職業柄、喉を常に酷使している。とある取材中、取材場所の冷房が直接喉に当たるような座り位置になってしまった。途中調整はしていただいたものの、取材が終わる頃には声がカスカスしていた。腰もなんとなく痛くて全身が冷えてしまっていたのを感じた。すぐにのど飴などを舐めたり対処したのだが、時すでに遅し。声が出なくなってしまった。

 声が出なくなる時の「あ、これはまずいぞ」という感覚は、大概何げない時なのだ。疲れが溜まっていたりなどもあるが、乾燥している日の高座で大きな声を出した瞬間とか、移動中にピキーンと喉に違和感を覚えたときにやってしまっていることが多い。次の日の高座は2件。お休みができないので座布団から乗り出して屈みながらサンパチマイクギリギリに顔を近づけて喋るスタイル。気分は桃井かおりさん。調子もゆっくりになるため、語尾が伸びて何となく歌うように喋る感じ。新たな桃花発見!と、良い方向に思い込む。

 あとは、踊りを踊ったりと喋りを減らしてなんとか務めた。優しいお客様に感謝だ。早く家に帰って安静にして喉を治さなきゃと思っていた矢先、腰痛を感じたことのない私が、腰が重いなぁ、なんだか違和感があるなぁと、思っていた。その後ほどなくして、人生初めての〝ぎっくり腰〟に。なんと激痛。これが世に言うぎっくり腰か。こんなに徐々になることがあるのか。声がカスカスの私、狂言師も驚くほどのすり足で家に戻る。

 その日の次の日は、不幸中の幸いなのか、内視鏡の大腸検査を入れているのでお仕事は入れてなかった。なので、流動食しか食べられない。腰の痛みに「痛ッ」と、叫ぼうにも声が出ない中、ミーアキャットみたいな姿勢でおもゆをすする。お腹空いたなぁ。なんなんだ今日の私は。妖怪無言空腹胴長おもゆすすり。長いな。しかし、次の日の私の方がもっともっとしんどい思いをするとは、その時は思ってもみない私なのであった…。

(後編に続く)

【KyodoWeekly(株式会社共同通信社発行)No.28からの転載】

蝶花楼桃花(ちょうかろう・ももか) 東京都出身。春風亭小朝さんに弟子入り後、二ツ目・春風亭ぴっかり☆時代に「浅草芸能大賞」新人賞を受賞。2022年3月、真打ちに昇進し高座名を「蝶花楼桃花」と改める。昇進披露興行、初主任興行、企画にもかかわった全出演者女性による「桃組」はいずれも大入り。24年7月、31日連続ネタおろし独演会「桃花三十一夜」を池袋演芸場で開催、大成功をおさめる。

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