英国政府 、「新たな産業戦略」を発表
『英国は復活し、ビジネスに開かれた国』
2025年6月23日
駐日英国大使館
英国政府は6月23日月曜日、「新たな産業戦略」を発表しました。 これにより2027年から7,000社以上の英国企業の電気料金が最大25%削減される見通しです。産業戦略は、投資を促進し、質の高い熟練職を創出し、英国をビジネスに最適な国にするための10年計画を打ち出します。
・この戦略は、政府と成長産業との連携によって策定され、新たな協力の時代の幕開けを示す。
・この戦略により、英国は「投資とビジネス成長に最適な国」となることを目指し「変化に向けた計画(Plan for Change)」を実現。たな産業戦略により、今後10年間で数十億ポンド規模の投資を呼び込み、110万人の高賃金雇用を創出。
・この計画は、より速い成長の可能性がある先端製造業、クリーンエネルギー産業、デジタル・テクノロジー、金融サービス、ライフサイエンスなど8つの高成長セクターに焦点を当てている。
・新設されるグローバル人材タスクフォースと5400万ポンドの基金により、世界クラスの研究者、トップ人材とそのチームを英国に誘致。
・数千の企業の電気料金が最大25%削減。
・新たな産業戦略により、今後10年間で数十億ポンド規模の投資を呼び込み、110万人の高賃金雇用を創出
この新たな産業戦略は、投資を促進し、質の高い熟練職を創出し、英国をビジネスに最適な国にするための10年計画を示しています。その中で、英国産業が直面する2つの大きな障壁—高額な電気料金と送電網への接続の長期待機—に取り組むことが柱となっています。現在、英国の製造業者は先進国の中でも最も高い電気料金を支払っており、事業拡大や近代化を目指す企業は、送電網への接続に時間がかかるという課題に直面しています。長年にわたり、こうした課題は英国の成長を妨げ、企業が競争力を発揮するのを困難にしてきました。しかし本日の発表は、政府が産業支援に本格的に乗り出し、英国経済の潜在力を引き出すという決定的な転換点を示しています。
2027年からは、新たな「英国産業競争力強化スキーム」により、自動車、航空宇宙、化学などの製造業に属する7,000社以上の電力多消費型企業の電気料金が、1メガワット時あたり最大40ポンド削減されます。30万人以上の熟練雇用者を支えているこれらの企業は、再生可能エネルギー義務(Renewables Obligation)や固定価格買取制度(Feed-in Tariffs)、容量市場(Capacity Market)などの課徴金の支払いが免除される予定で、国際競争力の強化と公平な競争環境の実現が期待されています。なお、免除の対象条件や詳細については、今後開始される協議を経て決定される予定です。
政府は、鉄鋼、化学、ガラスなどの最も電力を多く消費する企業に対する支援も強化します。「British Industry Supercharger(英国産業スーパーチャージャー)」を通じて、これらの企業が通常負担している送電網使用料のさらなる補助を行います。 現在、これらの企業はその料金の60%の割引を受けていますが、2026年からは90%に引き上げられる予定です。これにより、電気料金がさらに下がり、国際競争力の維持、雇用の保護、将来への投資が可能になります。この支援策は、鉄鋼、セラミックス、ガラスなどの分野で約500社が対象となり、経済の基盤を支える産業のコスト削減と雇用維持に貢献します。また、納税者に追加の負担をかけることなく実施される点も特徴です。これらの改革は、英国が不安定な化石燃料市場への依存を断ち切り、電力料金を恒久的に引き下げるための「クリーン電力」への長期的な取り組みとも連動しています。
企業が迅速に成長し雇用を創出できるようにするため、政府は「コネクション・アクセラレーター・サービス(Connections Accelerator Service)」を導入し、主要な投資プロジェクトの送電網アクセスを円滑化します。このサービスでは、質の高い雇用を生み出し、経済的に大きな利益をもたらすプロジェクトを優先的に扱う予定です。
政府は、エネルギー業界、地方自治体、ウェールズおよびスコットランド政府、労働組合、産業界と緊密に連携しながら、このサービスの設計を進めており、2025年末の運用開始を目指しています。また、現在議会で審議中の「計画・インフラ法案(Planning and Infrastructure Bill)」により、政府が戦略的に重要なプロジェクトのために送電容量を確保できるようになる可能性があり、これにより待機時間の短縮と主要産業の成長促進が期待されます。
この産業戦略は、ビジネス投資と成長を促進し、英国でのビジネス展開をより迅速・簡便・低コストにするための10年計画であり、企業に安心感を与え、110万人の質の高い高賃金雇用を創出することを目指しています。これは、政府の掲げる「変革の計画(Plan for Change)」の実現に向けた取り組みの一環です。
■キア・スターマー首相の発言:
「この産業戦略は、英国経済にとっての転換点であり、過去の場当たり的な対応やその場しのぎからの明確な決別を意味します。世界経済が不安定な時代にあって、この戦略は、英国企業が投資し、革新を進め、良質な雇用を創出するために必要な長期的な確実性と方向性を提供します。これは『変革の計画(Plan for Change)』の一環として、人々の懐を温かくする取り組みでもあります。これこそが、英国の未来に力を与える方法です。英国が強みを持つ産業を支援し、成長を妨げる障壁を取り除き、働く人々のために機能するより強い経済を築くための明確な道筋を示すことによって実現します。私たちのメッセージは明確です—英国は復活し、ビジネスに開かれた国です。」
■レイチェル・リーブス財務大臣の発言:
「英国には世界でも最も革新的な企業が数多く存在しており、私たちの『変革の計画(Plan for Change)』は、そうした企業が成長し、新たに生まれるために必要な安定性を提供してきました。本日発表した産業戦略は、その進展をさらに推し進めるものであり、投資の障壁を取り除くための10年計画です。これにより、数十億ポンド規模の投資と最先端技術の導入が進み、エネルギーコストが軽減され、国全体のスキル向上が図られます。この戦略は、英国を支える産業が繁栄できる環境を整え、経済を活性化し、人々の懐を温かくする雇用を創出することを目指しています。」
■ジョナサン・レイノルズ ビジネス・貿易大臣の発言:
「私たちは政権発足当初から『英国はビジネスの舞台に戻ってきた』と宣言してきました。そして、過去1年間で確保した1,000億ポンドの投資が、『変革の計画(Plan for Change)』がすでに働く人々に成果をもたらしていることを示しています。私たちの新な産業戦略は、英国を投資とビジネスに最適な国にし、経済成長を実現して人々の懐を温かくし、NHS(国民保健サービス)、学校、軍の財源を支えるものです。この戦略は、新たな事業拠点、最先端の研究、交通インフラの整備に向けた数十億ポンド規模の投資を呼び込むだけでなく、産業用電力価格の競争力強化にもつながります。エネルギーコストの削減と人材育成の強化は、企業から最も強く求められてきたことであり、同時に最大の課題でもありました。政府はその声に耳を傾け、今、必要な大胆な行動を起こしています。政府と企業が手を取り合い、働く人々の暮らしをより良くする—それがこの政府の約束であり、私たちはそれを実現します。」
■エド・ミリバンド エネルギー大臣の発言:
「長年にわたり、国際市場で価格が不安定なガスへの依存が原因で、高い電気料金が英国企業の成長を妨げてきました。私たちの新な産業戦略の一環として、主要産業分野における産業用電力価格を引き下げることで、英国産業の潜在力を解き放ちます。また、洋上風力から原子力に至る成長産業への投資を拡大し、英国のクリーンエネルギー分野の強みをさらに強化しています。これにより、クリーン電力の使命と「変革の計画(Plan for Change)」を実現し、家庭や企業の電気料金を恒久的に引き下げることを目指します。」
■ジュリア・ロングボトム駐日英国大使の発言:
「英国政府は、経済成長を最優先課題に掲げています。そのために英国は、「新たな産業戦略」を発表しました。これは、企業が将来を見据えて計画を立てられるよう安定した環境を整備し、成長の障壁を取り除くための改革を進める、10年にわたる包括的なビジョンです。 日本は、産業政策を巧みに活用してきた国として国際的に高く評価されています。英国のアプローチも、日本の経験から多くの示唆を得ており、日本の投資家の皆さまに親しみやすく、共感いただける内容となっています。 今回の産業戦略では、特に成長が期待される8つの分野に重点を置いています。 先端的製造業、クリーンエネルギー産業、クリエイティブ産業、防衛、デジタル技術、金融サービス、ライフサイエンス、そして高度専門サービス。現在、約1,000社の日本企業が英国に拠点を構えており、両国のビジネス関係は信頼と実績に支えられています。そして今、英国は日本からのさらに多くの投資を歓迎すべく、『世界中で最も開かれ、安定性と国際的なネットワーク』を兼ね備えた経済大国を目指します。 英国の新たな産業戦略から、新たなビジネスの機会を見つけていただけたら幸いです。」
「スーパーチャージャー」および「英国産業競争力強化スキーム」は、エネルギー制度の改革によって資金が賄われます。政府は、家庭の電気料金や税金を引き上げることなく、制度内のコストを削減して財源を確保し、さらに英国のカーボンプライシング制度の強化によって得られる追加資金も活用する予定です。これには、EUの炭素市場との連携による効果も含まれます。政府は、英国企業を支援するために、EUとの新たな合意の一環として排出量取引制度(ETS)の連携を目指す方針を示しています。この合意がなければ、英国の産業界はEUの炭素税を支払う必要が生じる可能性があります。英国のカーボンプライシング制度をEUの制度と連携させることで、炭素価格によって得られる資金が英国国内にとどまり、これらの支援スキームを通じて英国企業と雇用を支えることが可能になります。歳出見直し(Spending Review)および最近発表された「10年インフラ戦略(10-Year Infrastructure Strategy)」を基盤として、今回の産業戦略は、国家再生を実現するための次なる一歩です。この戦略では、成長の可能性が最も高い地域や産業分野に対して重点的な支援を行うとともに、すべての企業が前進しやすくなるような制度改革も導入されます。
この産業戦略の行動計画には、以下の内容が含まれます:
・2027年から、成長産業およびそのサプライチェーンに属する基幹産業の電力多消費型製造業者に対し、電気料金を最大25%削減。これにより、電力コストは欧州の他の主要経済国とより近い水準に引き下げられます。
・革新的な企業、特に中小企業(SME)への資金供給を拡大。英国ビジネス銀行(British Business Bank)の金融支援枠を256億ポンドに増額し、民間資本による数百億ポンド規模の追加投資を呼び込むことを目指します。この中には、産業戦略の重点分野向けに追加で40億ポンドが含まれており、主にベンチャーファンドを通じて、英国で最も成長可能性の高い企業を支援します。
・2028〜29年までに、スキル向上のために年間12億ポンドを追加投入。成長産業における「学びながら稼ぐ」機会を拡充し、「成長・スキル税(Growth and Skills Levy)」による短期スキル講座の新設や、防衛・デジタル・エンジニアリング分野に特化したスキルパッケージの提供を進めます。
・規制負担の軽減:企業にかかる規制関連の事務コストを25%削減し、規制機関の数も削減します。
・中小企業(SME)の技術導入支援:「Made Smarter(メイド・スマーター)」プログラムを通じて、5,500社以上の中小企業が新技術を導入できるよう支援。また、「ビジネス成長支援サービス(Business Growth Service)」により、政府の支援を一元化します。
・研究開発(R&D)投資の拡大:2029〜30年までに年間226億ポンドに増額し、IS-8(産業戦略の8重点分野)全体でのイノベーションを促進。歳出見直し(Spending Review)中にAI分野に20億ポンド超、先端製造業に今後10年間で28億ポンドを投じる予定で、これにより民間投資からさらに数十億ポンドの資金を呼び込む見込みです。さらに、バイオテクノロジー、AI、自動運転車などの成長産業や革新的製品の発展を後押しする規制改革も進められます。
・世界トップレベルの人材誘致:ビザ・移民制度の改革および新たな「グローバル人材タスクフォース(Global Talent Taskforce)」を通じて、主要産業分野への優秀な人材の呼び込みを図ります。
・国際的な経済・産業連携の深化:日本との産業戦略パートナーシップや、米国・インド・EUとの最近の合意を基盤に、パートナー国との経済・産業協力をさらに強化します。
・開発業者の負担軽減と住宅建設の加速:都市計画の審査期間を短縮し、コストを削減するために、都市計画担当者の増員、事前申請要件の簡素化、環境関連義務の統合などを実施。これにより、企業の負担を軽減し、住宅建設のスピードアップを図ります。
・公共調達制度の改革:新規参入企業や中小企業(SME)にとっての参入障壁を引き下げ、国内競争力を強化するため、公共調達の仕組みを抜本的に見直します。
・都市圏・産業クラスターへの支援強化:6億ポンド規模の「戦略的用地アクセラレーター(Strategic Sites Accelerator)」を通じて、投資可能な用地の供給を拡大。さらに、投資庁(Office for Investment)、国民資産基金(National Wealth Fund)、英国ビジネス銀行(British Business Bank)などによる地域支援も強化されます。
新たな産業戦略は、英国がすでに強みを持ち、今後さらなる成長が見込まれる8つの分野に焦点を当てています。対象となるのは、以下の産業です:
・先端的製造業(Advanced Manufacturing)
・クリーンエネルギー産業(Clean Energy Industries)
・クリエイティブ産業(Creative Industries)
・防衛(Defence)
・デジタル・テクノロジー(Digital and Technologies)
・金融サービス(Financial Services)
・ライフサイエンス(Life Sciences)
・専門職・ビジネスサービス(Professional and Business Services)
それぞれの成長分野には、投資を呼び込み、成長を促進し、質の高い高賃金の雇用を創出するための、個別の10年計画が策定されています。
編集者向け注記:
・「新たな産業戦略」の全文:https://www.gov.uk/government/publications/industrial-strategy
・防衛、金融サービス、ライフサイエンスの各分野に関する個別戦略は、近日中に発表される予定です。
・「7,000社」という数字は、本スキームの対象となる可能性のある企業数の概算であり、最終的な対象範囲および適格条件は、今後実施される協議を経て決定されます。
・ジュリア・ロングボトム駐日英国大使の「新たな産業戦略」に関するビデオ:こちらのリンクよりダウンロードいただけます。

