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生成AI時代の「旅支度」 よんななエコノミー 吉無田修

 9月下旬から12月中旬まで、米ニューヨークに出張する。生成AI時代のニュースメディアの在り方を現地で学ぶためだ。期間中にはスウェーデンや米首都ワシントンにも足を運ぶ。その旅支度でAIの力を実感している。

 まずは住まい探し。長期滞在なので、家具付き賃貸アパートメントをAIで検索し、ギリシャ発の不動産テック企業、ブルーグラウンドを利用した。マンハッタンの家賃には手が出ず、ハドソン川を隔てたニュージャージー州の物件に決めた。

 問い合わせへの最初の返信は「ジャービス」から届いた。部屋の空き状況やWiーFiの有無を知らせ、希望の地域や予算を尋ねてくる。メールの末尾には、AIの案内担当だと明記されていた。途中から人の担当者に代わったが、私も英文の問い合わせや支払い方法の相談にAIの助けを借りた。9年前のニューヨーク赴任時は日系の不動産業者に頼った。今回はAIを間に挟み、海外の事業者と直接やりとりできた。

 滞在中には妻も訪ねてくる。英国に留学中の高校生の娘とも現地で合流する予定だ。もちろん、愛犬のルーカスも一緒。妻が苦労したのは、ルーカスの渡航と帰国の手続きだった。予防接種や抗体検査は動物病院にお願いできても、書類をそろえ、電子申請に入力する作業が残る。

前回のニューヨーク駐在時に空撮した「自由の女神」(左下)とマンハッタン(右)

 そこでAIの出番だ。妻はマニュアルをAIに読み込ませ、各項目に何を入力するのか、一つずつ聞きながら進めた。動物病院が発行した英文証明書のスペルミスを見つけるのにも役立った。

 米当局への申請では、AIに詳しい大学生の息子の助言を受け、画面上の操作も担うAIエージェントを使った。息子からは「関係書類を一つのファイルにまとめてAIに渡すのがこつ」と教わった。今度はAIが必要な情報を尋ね、妻が答えるとフォームに入力していく。別のAIエージェントには、内容を点検する役割を担わせた。最後は自分で確認し、送信ボタンを押したという。

 人が聞き、AIに教えてもらう。次は、AIの質問に答え、作業を進めてもらう。わが家の旅支度にも、そんな変化があった。

 任せられることが増えても、判断と最終確認は欠かせない。AI開発を手がけるプリファード・ネットワークス社長の岡野原大輔氏の著書『ヒトとAI』(岩波新書)には「最終的に残るのは、人間が不可逆な結果を引き受ける存在であるという事実である」とある。住む場所を決め、申請内容を確かめる。その結果を引き受けるのは自分たちだ。

 人の時間は有限。AIに任せられる作業は任せ、現地の人と話し、学び、考える時間をつくりたい。家族で食卓を囲み、ルーカスとハドソン川沿いを散歩する時間も。

 それでは、行ってきます!

【KyodoWeekly(株式会社共同通信社発行)No.37からの転載】

(共同通信デジタル事業部 吉無田修)

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