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【はばたけラボ 連載「つなぐ」】未来のイノベーターたちをつなぐ 万博会場でデジタル学園祭

 未来世代がはばたくために何ができるかを考えるプロジェクト「はばたけラボ」。ウェルビーイングな暮らしのために、異なるものをつなぐことで生まれる「気づき」を大事に、いろんな「つなぐ」をテーマに連載でつづる。

 第6回は、大阪・関西万博会場で行われた未来のイノベーターたちをつなぐイベント、デジタル学園祭を取材した。

 今や生活に欠かせないデジタル技術。その革新の多くは、一人ではなく、テック人材の交流や協業から生まれている。7月19・20日、大阪・関西万博EXPOメッセ「WASSE」は、未来のデジタル社会を創り出す才能たちの熱気に包まれた。中高大生から若手人材まで、さまざまな背景を持つITクリエーターが集結した「デジタル学園祭2025」。AI、IoT、VRなどを駆使した独創的な作品やプロジェクトが多数披露され、新たな仲間との出会いの場となった。

来場者でにぎわう大阪・関西万博EXPOメッセ「WASSE」で開催されたデジタル学園祭

■定期試験のお供、教科書から問題を作成するAIアプリ

 中学生や高校生が情報Ⅰや探究活動、部活などで制作したデジタル作品を表彰する「全国情報教育コンテスト」のブースでは、全国から集まったファイナリストによる多彩な作品が紹介された。

 名古屋大学教育学部附属中・高等学校のredappleさんは、教科書のページを写真で読み込み、一緒に勉強してくれるAIアプリを開発。制作動機について「テスト勉強のとき、お母さんに問題を出してもらっていたが、最近なかなかやってくれなくなった。代わりに問題を出してくれたらいいなと思って作った」と明かした。第1回コンテストでグランプリを含む3冠を獲得した若き実力者だ。

名古屋大学教育学部附属中・高等学校に通う中学生のredappleさん。会場では静岡県在住の同じ中学生のテック仲間と再会した

■サークルで仲間と出会う、メタバースに自作ワールド

 地方創生の取り組みの一環である「AKATSUKIプロジェクト」は、地域発のイノベーションを起こす若手人材育成事業。その関西版「関西テック・クリエイター・チャレンジ」修了生らによる展示も行われた。

 大学生の大神健人さんらは、VRChatというプラットフォームを使い、地元山口県の観光スポットをメタバースに再現した「長州スキャンロード 四季彩の軌跡」を制作した。「創作を通じて自己表現したかった。大学のサークルでようやく同じ思いの人と出会えた。今後、院生として化学分野に進んだ後も、趣味として続けたい」と楽しそうに語った。

「長州スキャンロード」を制作した大神健人さん(左)と高津大翔さん。サークルの9人の仲間で作り上げた

■吃音のある人とそうでない人をつなぐ社会変革アート

 デジタル学園祭アワード「S×PARK」のブースには、テクノロジーとクリエーティブが融合された、高校・高専生から大学院生までの作品が並んだ。単に「人と違う」のではなく、社会的インパクトや心に訴える力を重視した次世代テックアワードだ。

 OUA-AS(大阪芸術大学)の大野凪咲さんらが制作したのは、「Because of my Stuttering-つまる言葉で生じるもの」。ユーザーの音声とAIアバターの応答を、どちらも吃音に変調して生成するプログラムだ。「吃音は、今の社会では克服すべきものとして扱われがち。この作品は、吃音や障害をあるがままに理解し受け入れていくことを問いかけている。こういう表現は、特定の問題に限らず、あらゆる“違い”に当てはめられる」と力強く語った。

「Because of my Stuttering」を制作した大阪芸術大学アートサイエンス学科の大野凪咲さん(右)ら。AIに自らの吃音や特徴的な動きを取り込み、S×PARKクリエイティビティ部門の準グランプリを受賞

■女子3人組、アプリで「推し活」仲間をつなぐ

 未踏(MITOU)は、“飛び抜けた才能を持つIT人材”を発掘・育成するプロジェクト。採択者は約9カ月間、トップレベルのメンターやプロジェクトマネージャー(PM)の支援を受けながら、自身のアイデアを具体化していく。PMの顔ぶれも豪華だ。万博でシグネチャーパビリオン「いのちの未来(Future of Life)」をプロデュースしているロボット工学の石黒浩教授は、ビジネスや社会課題の解決を目指す人材を育成する未踏アドバンスト事業のPM。「null2」を手掛けたメディアアーティストの落合陽一さんも未踏卒業者。現在は、PMとして25歳未満の未踏IT人材発掘・育成事業に回っている。

 2023年度未踏アドバンスト事業修了生の神谷優理さんらは、推し活におけるグッズ交換の課題を解決するアプリ「トレポータル」を開発し、会社を立ち上げた。「石黒さんから、ファン心理についてフィードバックをもらった。未踏は、全力で挑戦できる場所。成功も失敗も受け止めて、次の挑戦に変えてくれる。自分たちの考えたアプリが、世界中のエンタメ業界を支える柱の一本になれば」

東京大学大学院に進学しながら「トレポータル」を開発した神谷優理さん(右)ら。工学部生と経済学部生のトリオ

 

落合陽一さんがプロデュースしたシグネチャーパビリオン「null2」。自分と他人、物理とデジタルの境界が溶けていく体験を作り出す

■テック仲間を作って、第一線で活躍する先輩の応援メッセージ

 同イベントにブース出展したMIXIのCTO吉野純平さんは、「自分が中高生の頃はプログラミング仲間なんていなかったので、皆さんがうらやましい。一緒に作る仲間、話す仲間がいることは貴重。交流がいつか別の形につながるかもしれない」とあいさつ。さくらインターネット執行役員CISO・CIOの江草陽太さんは、「ぜひこの場で近い年代でコミュニティーを作り、デジタルをただ消費するのではなく、積極的に活用する人材になってもらえたら」とエールを送った。正会員企業が制作したロボット等の展示を行ったアイ・ローボ・ネットワーク・フォーラム事務局長の雪田恵子さんは、「私たちがつくっているロボットは、ただの動く機械じゃない。社会の中でどう役立てるのか、人間とどう関わっていくのか、そういった視点で捉えてほしい」と訴えた。

開幕式で登壇したMIXIのCTO吉野純平さん

 

ロボソリューション(大阪府高石市)が開発した、人やロボットの先導に自動で付いて行く追従型モビリティ体験。空港や商業施設など広大なスペースでの移動や荷物運搬を楽にする

 それぞれの「好き」や「困りごと」からスタートし、テクノロジーという共通言語で他者や社会とつながろうとしていた若きイノベーターたち。ここで生まれた出会いと経験が、きっと未来をはばたく力になる。


#はばたけラボは、日々のくらしを通じて未来世代のはばたきを応援するプロジェクトです。誰もが幸せな100年未来をともに創りあげるために、食をはじめとした「くらし」を見つめ直す機会や、くらしの中に夢中になれる楽しさ、ワクワク感を実感できる体験を提供します。そのために、パートナー企業であるキッコーマン、クリナップ、クレハ、信州ハム、住友生命保険、全国農業協同組合連合会、日清オイリオグループ、雪印メグミルク、アートネイチャー、ヤンマーホールディングス、ハイセンスジャパン、ミキハウスとともにさまざまな活動を行っています。

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