来春の統一地方選にらみ 電子投票じわり広がる 菅沼栄一郎 ジャーナリスト 連載「よんななエコノミー」
福岡県の小さな町、粕屋(かすや)町の今年8月の町長選は電子投票で行われる予定だ。
記載台に置かれたタブレットで候補者の名前をタップ、さらに「投票する」をタップして終わりだ。
「候補者名を投票用紙に自分で書く」という今の方式と比べ、書き間違いや判読不能票がなくなる。
香川県善通寺市では、2027年の春に任期満了を迎える市議選で導入する予定だ。関連の条例案がこの3月、議会で成立した。
同市は、昨年末から今年初めにかけて市役所ロビーなどにタブレットを置いて、電子投票の「体験会」を試みた。機械に抵抗感があった人も、体験すると「えっこれだけ」「すぐやなあ」との声が漏れたという。

善通寺市は四国で初めて、粕屋町も福岡県で初、九州では宮崎県新富町長選(3月1日)に次ぐ2例目だった。
電子投票は、02年に始まったが、03年の岐阜県可児(かに)市でトラブルにより選挙無効となってつまずいた。16年までの実績は10自治体計25選挙にとどまった。しかし、昨年2月の本欄で紹介したように、専用機器の性能が向上し、総務省が市販のタブレットの使用も認めたのをきっかけに24年末、8年ぶりに大阪府四條畷(しじょうなわて)市が市長選などで導入。じわりと広がり始めた。
ただ、専用機器のリース料が高いなど、なおマイナス要因はある。しかし、善通寺市の試算では、タブレット端末のレンタル料やシステム利用料は選挙1回あたり、1千万〜1500万円だが、国の特別交付税でその7~8割が措置できるという。
一方で、最近注目されているのが、選管職員らの不正防止効果だ。昨夏の参院選で無効票を水増ししたとして、警視庁が3月初め、東京都大田区の選挙管理委員会職員4人を公職選挙法違反の疑いで書類送検した。OBの指摘で、事件は発覚した。
こうした選管職員の不正は、仙台市での票数水増し、滋賀県甲賀市での白票計上など後を絶たない。選挙実務に詳しい拓殖大の河村和徳教授(政治学)は、「人口減少時代に、自治体の人材不足が問題になっている。人力での開票は、改ざんや集計ミスの発生リスクを排除しきれない。IT技術を生かすべきだ」と指摘する。
一方で、地方選挙で電子投票が再び広がり始めたことについては、「技術革新が進み安全性が向上、コストも低減している。統一地方選に向けていっそうの広がりが期待できる」「コロナ禍後に社会のデジタル化が進み出した流れの中で、国政を含めて積極的に検討すべき時期だ」と話している。
(ジャーナリスト・菅沼栄一郎)
【KyodoWeekly(株式会社共同通信社発行)No.13からの転載】













