農事に追われる春 赤堀楠雄 林材ライター 連載「グリーン&ブルー」
3月も下旬ともなれば、各地から桜開花の報が聞こえるようになる。山間の当地では桜はまだ先だが、梅がようやくほころびはじめ、フキノトウもそこここで顔を出すようになり、春の気配が日ごとに色濃くなっている。この時期にしては日中の気温も高めで、季節が移行する速度はいつもより早いような気がする。
春先の集落恒例の行事である水路清掃の案内も先日、届いた。集落の各所にある水路には、秋から冬にかけて落ち葉や枯れ枝が堆積する。それらを鍬(くわ)や鋤簾(じょれん)(刃の幅が広く、すくい上げる作業に適した鍬)で取り除き、水の流れをよくするのである。年3回ある全戸総出の共同作業の一つだ。ちなみに他の2回は夏場の草刈りになる。
水路清掃の作業は沢から田んぼに水を引く用水路でも行われる。こちらは田んぼのある箇所ごとに耕作者の組合があり、集落の作業とは別にそれぞれの組合で作業が行われる。
春先は雪解け水で水量が増す。私の家の周りでも、1カ月ほど前から水路の流れが目に見えて強くなってきた。だが、今冬は雪があまり降らなかったので、この先、水がふんだんに使えるのか心配になってしまう。
年配の隣人たちは口々に「昔はもっと雪が降った」と言い、私自身も15年ほど前に移住してきてから現在までの短い期間でも、冬場の降雪量が減った実感がある。「こんなに雪が少なくて、今年の水は大丈夫なのかな」と春先に家人と心配し合うのが年中行事になっている。
私の住まいは集落でも最上流に位置し、借りている田んぼも同じ地区内にあるので、沢から水を取り入れる順番もかなり早い。そのため、コメ作りをするようになって十数年になるが、水が来なくて困ったことはまだない。
たまに水が止まっていて慌てることもあるが、沢からの取り入れ口を見に行くと、下流により多く水が行くように堰(せき)が調節されていて、それを遠慮がちに直してこちらにも水が来るようにすれば、困らない程度には水流が回復する。
だが、何年か前から、畔(あぜ)の漏れでもあるのか田んぼの水持ちが悪くなっていて、水を入れる回数が増える傾向にある。水不足が心配される今年こそ、畔を修復するなど水持ちをよくするための作業をしなければならない。
シカを防ぐ柵も強化しなければならないし、この春は例年よりも農事に追われることになりそうだ。
赤堀楠雄(あかほり・くすお)林材ライター。1963年生まれ、長野県在住。林材新聞社(東京)勤務を経て99年に独立。森林・林業・木材・木造住宅などに関する取材、執筆を行う。著書に「林ヲ営ム〜木の価値を高める技術と経営〜」(農文協)など。
【KyodoWeekly(株式会社共同通信社発行)No.13からの転載】














