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【この人に聞く!】使い終わったカイロを有効活用! 池・湖などを浄化するGo Green Groupの山下崇代表

冬に活躍する使い捨てカイロ
冬に活躍する使い捨てカイロ

 冬に大活躍するカイロ。災害時にも使えることから、多めにストックしているという家庭もあるかもしれない。カイロは基本的には使い捨てという人がほとんどだろうが、実は体を温め終わった後も使い道はある! 今回は、河川などの水質浄化に取り組む「Go Green Group」(大阪市)の山下崇(やました・たかし)代表を紹介する。

Go Green Groupの山下崇代表
Go Green Groupの山下崇代表

 ▼カイロで水質が改善する!?

 カイロと水質浄化。一見、関連がなさそうな両者だが、この2つを結び付けているのが東京海洋大学による研究だ。数年前まではコンビニエンスストアのオーナーだった山下さん。日々、大量に食品を廃棄しなくてはならない現実に罪悪感を覚え、いつかは地球のためになることをやりたいと考えていた。そのような時に、使用済みカイロを使ってヘドロ(有機汚泥)に含まれる硫黄化合物を分解し水質を改善させた東京海洋大・佐々木剛教授の研究を見つけ、「これだ!」と直感。佐々木教授にも会いに行き、起業に向けて動き出す。

カイロを再利用した浄化剤「Go Green Cube」
カイロを再利用した浄化剤「Go Green Cube」

 とはいえ、前例のない使用済みカイロを活用した水質浄化事業。最初は作業する場所も専用の機械もなく、手探りの状態が続いた。しかし、何度も試作と改良を重ねた結果、浄化剤「Go Green Cube」(以下キューブ)が完成する。現在は、このキューブの設置場所を少しでも増やそうと奔走している。キューブは、カイロの成分である鉄粉や活性炭などを圧縮加工したもの。山下さんは、「ヘドロからは硫化水素が発生するが、(キューブに含まれる)二価鉄イオンが硫化水素と結合すると硫化鉄に変わり無害化される。その結果、水の透明度が上がって光合成細菌が活性化し、水中の生態系がより豊かになる」とキューブの効果を説明する。キューブは、河川などのヘドロ汚染のほか、水中のリンが増え過ぎたいわゆる富栄養化状況を改善する作用もあるという。

キューブを使用した水質浄化の仕組み
キューブを使用した水質浄化の仕組み

 ▼世界遺産にも貢献

 Go Green Groupでは、これまで取り組んできたゴルフ場や神社などにおける池の浄化のほか、現在は主に二つの活動に力を入れている。その一つが、桃山学院中学校高等学校(大阪市)の中高生らと進めている「桃山Go Green Project」(以下桃山プロジェクト)だ。2021年3月に生徒たちによる自主的なプロジェクトとしてスタートした活動は年々、その規模が拡大。地元小学生への水圏環境保全教育や、役場の池の水質改善に加えて、世界文化遺産・古市古墳群の一部である前方後円墳「墓山古墳」でも堀の浄化に挑戦している。桃山プロジェクトでは生徒たちの活動を継続するための寄付を募っている。詳細は同プロジェクトのHPから。

「桃山Go Green Project」の様子
「桃山Go Green Project」の様子

 ▼大阪から全国、世界へと

 協力者探し、キューブの開発、資金集め・・・。2018年の会社設立以来、苦労の連続だったといっても過言ではない。しかし山下さんは「やめるという選択肢はなかった」と断言する。モチベーションとなっているのは、会社のミッションでもある“地球を喜ばせて、世界を喜ばせる”という目標。最近では関西以外の場所からもキューブの導入について声がかかるようになった。また、「きれいな海」などの実現を目指す「国連海洋科学の10年」に採択された佐々木教授提唱のプロジェクトにも参加している。私たちが日常で使うカイロがアップサイクルされ、世界中の海・川を浄化する日もそう遠くはないかもしれない。

使用済みカイロを開封する生徒ら。その中身を使ってキューブが製造される
使用済みカイロを開封する生徒ら。その中身を使ってキューブが製造される

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