水をめぐる競争がエネルギー転換にリスクをもたらす
ICMMの報告書、鉱業・金属関連施設の所在地と水ストレス、水資源枯渇、干ばつ、洪水、年々変動の各リスクが重なる地域を地図化
ロンドン, 2026年7月22日 /PRNewswire/ — ICMMによる新たな分析によると、世界の鉱業・金属関連施設の3分の2近くが、重大な物理的水リスクに直面する地域に位置しています。
ICMMの「Global Mining and Metals Water Dataset」と報告書はまた、鉱業・金属事業による水利用と、その他の産業用途・生活用途での水利用との間の競争が、同業界にとって最大の物理的水リスクであることを明らかにしています。クリーンエネルギーシステムに必要な素材への需要が高まる中、地域レベルで土地利用と水利用を調整し、統合的に計画することの重要性が浮き彫りになっています。
鉱物・金属は、エネルギー転換と将来の低炭素経済に不可欠ですが、この分析から、その生産条件が物理的水リスクによる制約を受けていることが分かります。
主な調査結果は次のとおりです。
・世界の鉱業・金属関連施設の65.7%は、少なくとも1つの物理的水リスク指標で高いリスクにさらされています。
・施設の38.2%は、ベースライン水ストレスが「高い」または「極めて高い」流域、あるいは水を実質的に利用できない乾燥地域に位置しています。
・世界の施設の27.4%は、「高い」または「極めて高い」ベースライン水資源枯渇リスクにさらされています。
・世界の施設の27%は高い干ばつリスクにさらされており、干ばつは、分析対象となった物理的水リスクの中で2番目に広く見られるリスクです。
・世界の施設の14%は、洪水リスクが「高い」または「極めて高い」地域に位置していますが、アルミナ精製、アルミニウム製錬、モリブデン生産、鉄鋼生産では、この割合がさらに高くなっています。
・世界の施設の16.2%は、水供給の年々変動が「高い」または「極めて高い」地域に位置していますが、その分布は地理的に一様ではなく、オセアニアでは74%に達します。
・施設の4.9%は、3つ以上の物理的水リスク指標で同時に高いリスクにさらされています。
この分析によると、鉱業・金属業界における水リスクは世界全体に及ぶ一方、その性質は多様であり、地域や鉱種によって異なります。一部の施設では水をめぐる競争が慢性化している一方、別の施設では干ばつや洪水、あるいは年ごとに予測しにくい水の供給状況に直面しています。一部の地域やサプライチェーンでは、これらのリスクが重なり合い、脆弱性を生み出しています。こうした脆弱性に対処するには、ウォーター・スチュワードシップに加え、政府、産業界、投資家、これらの素材を利用する企業が連携して行動する必要があります。
この調査結果について、ICMMのデータ・調査担当ディレクター、Emma Gagen博士は次のように述べました。
「私たちの調査は、水がすでに鉱業・金属業界にとって重要な課題となっていることを示しています。経済全体で水リスクへの曝露をより深く理解し、適切に管理しなければ、エネルギー転換を大きく制約する事態に気付かないまま陥るおそれがあります。だからこそ、ICMM会員企業を含む大手鉱業会社は、社会的に公平で、環境面で持続可能で、経済的にも有益な方法で水を管理するため、ウォーター・スチュワードシップの原則と実践を事業に組み込んでいます。」
調査結果は、水リスクにさらされる度合いが業界全体で一様ではないことを示しています。世界最大の銅生産国で、世界のリチウム埋蔵量の相当部分を有するチリでは、85.8%の施設で、ベースライン水ストレスと水供給の年々変動がともに「高い」または「極めて高い」水準となっています。アフリカと中東では、施設の80.7%が「高い」または「非常に高い」干ばつリスクにさらされている一方、オセアニアでは、施設の74%で水供給の年々変動が「高い」または「極めて高い」水準となっています。
Emma Gagen博士はさらに次のように述べました。
「これまで、鉱業・金属業界が水リスクにどのようにさらされているかについて、鉱種横断的かつ包括的な世界規模の評価は行われてきませんでした。信頼性が高く利用しやすいデータを整備することで、ICMMは、政策立案者や投資家が水リスクへの曝露について十分な情報に基づいて意思決定できるよう支援し、エネルギー転換に伴う需要への対応に役立てることを目指しています。」
「このデータセットは、他の関係者が検討・活用し、私たちと協力して、業界全体の水リスク像をさらに精緻化していくための出発点です。」
本報告書は、鉱山、製錬所、精製所、工場を含む1万2,000カ所の施設を収録したICMMの更新版「Global Mining Dataset(v1.5)」を使用し、施設の所在地を世界規模の水リスクデータセットと重ね合わせて、選定した物理的水量リスクへの曝露を評価しています。「Global Mining and Metals Water Dataset」は、WWFの水リスク・チームおよびWorld Resources Institute(WRI)との協力により作成されました。
World Resources Instituteの食料・土地・水プログラム担当グローバル・ディレクター、Crystal Davis氏は次のように述べました。
「エネルギー転換を背景に重要鉱物の採掘・生産が世界的に急増する中、各国は、責任ある鉱業活動を促進しつつ、増大する需要にどう応えるかという難題に直面しています。責任ある鉱業は、水リスクが最も深刻な地域に関する信頼性の高い公開データを、関係者が共有して利用できることから始まります。WRIは、ICMMの貢献を、政府、地域社会、投資家、企業がバリューチェーン全体で計画を立て、行動するために必要な基盤データベースの提供に向けた意義ある一歩として歓迎します。」
編集者への注記
このデータセットと報告書は、ICMMが進めるより広範なGlobal Mining Data Projectの一環です。同プロジェクトは、政策立案に役立ち、持続可能な開発において鉱業・金属が果たす役割の変化に関する幅広い議論を促進できる、堅牢で透明性の高いデータを構築することにより、業界全体の情報の質と利用しやすさを大幅に向上させることを目的としています。
あらゆる大規模データセットと同様、「Mining and Metals Water Dataset」にも限界があります。このデータは水リスクに焦点を当てており、鉱業・金属産業が水リスクに及ぼす影響や寄与に関する情報は提供していません。これは、世界の鉱業・金属レイヤーと世界の水リスクレイヤーを重ね合わせた分析です。現段階では、施設レベルの水消費量、取水量、排水量、排水の水質に関する世界規模のデータセットが存在しないため、その影響や寄与を評価することはできません。詳細については、報告書の「限界」セクションをご覧ください。
さらに、このデータセットには、施設レベルまたは企業レベルで地域の水システムに及ぼす影響や寄与に関するデータは含まれておらず、操業実績や効率性、企業目標の達成状況を評価することも目的としていません。したがって、このデータセットを個別の資産や企業の比較評価に用いたり、個々の企業開示と業界レベルの結果との整合性について結論を導いたりすべきではありません。
調査方法
WWFとWRIのデータセットは、水リスクに関して広く認知され、包括的な対象範囲を備えていることから選定されました。両データセットにはそれぞれ固有の強みと限界があるため、ICMMは両者を評価し、「Global Mining and Metals Water Dataset」に含めるのに最も適切な指標を特定しました。
また、ICMMは、調査方法、使用したデータセット、得られた知見の限界と強みを把握するため、独立した査読者とも連携しました。これにより、調査手法とデータを改善し、その限界を明確に示しながら、最終的に手法全体を強化することができました。
詳細については、報告書の「調査方法」セクションをご覧ください。
ICMMについて
ICMMは「原則に基づく鉱業(Mining with Principles)」を掲げています。ICMMは、世界の金属・鉱業業界の3分の1を占める企業と主要パートナーを結集し、持続可能な開発に向けたリーダーシップ、行動、イノベーションを推進し、最終的には社会への積極的な貢献を実現しています。ICMM会員企業は協働を通じ、安全で公正かつ持続可能な世界において、責任ある鉱物・金属生産の基準を打ち立てています。
(日本語リリース:クライアント提供)
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