梅雨時は宿で過ごす時間を主役に 温泉付き客室と北陸の味覚を満喫 「山代温泉 吉田屋山王閣」 【コラム:おんせん! オンセン! 温泉!】
旅行に出かけるには、少し悩ましい梅雨の時期。せっかくなら青空の下で観光地を楽しみたいところですが、あえて外を歩き回らず、宿で過ごす時間を主役にする旅も良いものです。
いつもより少し上質な部屋を選び、好きなときに温泉へ。湯上がりにはフカフカなソファで体を休め、夕食には地元の名物をゆっくり味わう。今回は、そんな梅雨のおこもり旅を楽しめる、石川県加賀市・山代温泉の「吉田屋山王閣」をご紹介します。
山代温泉は、約1300年の歴史を持つ北陸有数の温泉地です。温泉街の中心には、明治時代の総湯を復元した「古総湯」が立ち、九谷焼のタイルや色鮮やかなステンドグラスを配した浴室から、古き良き温泉文化を感じることができます。

「吉田屋山王閣」の外観

広々とした造りのロビー
「吉田屋山王閣」は、そんな風情ある温泉街から坂道を上った、高台の森に建つ大型旅館です。創業は江戸時代末期。約200年にわたり、山代温泉の移り変わりを見守ってきた老舗宿です。木々の間から見えてくるのは、赤茶色の大きな建物。玄関には瓦屋根や木格子が配され、堂々とした規模の中にも温泉旅館らしい落ち着きがあります。
館内には14種類、計46室の客室があり、和室から露天風呂付き客室、温泉内湯付きの和洋室まで、滞在の目的に合わせて選べます。

温泉内湯付き和洋室「把楽(ぱら)」
今回宿泊したのは、温泉内湯付き和洋室「把楽~PARA~(ぱら)」です。畳敷きの床にツインベッドと白いソファを配し、障子や木の質感を生かしながら、使いやすさも備えたシンプルモダンな空間。派手に飾り立てているのではなく、上質ながら肩の力を抜いて過ごせる落ち着きがありました。窓の外が雨でも、ここなら無理に出かけなくていい。そう思わせてくれる居心地の良さが、部屋全体に漂っているようです。

客室付きの掛け流し温泉内湯
そして、部屋の奥にあるのが石張りの温泉内湯です。大人が足を伸ばせる湯船には、伝統ある山代の源泉が掛け流しで注がれています。湯口からこぼれる源泉の音だけが静かな浴室に響き、部屋の中に居ながら、しっかりと温泉場らしい空気を感じられました。
大浴場の混雑や利用時間を気にせず、入りたくなったらすぐに湯船へ。到着後にまず入浴し、夕食前、就寝前、翌朝と、滞在中に何度も温泉を楽しめるのは、温泉付き客室ならではのぜいたくです。

山代の源泉を掛け流す「湯口」
泉質は、ナトリウム・カルシウム-硫酸塩・塩化物温泉。お湯は無色透明でほのかに硫黄のかけらのようなミネラルの香りが鼻孔をくすぐります。口に含むと、まず感じるのは甘みを帯びたダシ味。そこへピリッと焦げたような鉱物風味が重なります。肌触りも一つではありません。初めはツルツル、スベスベと滑らかさがありながら、手で肌をなでるとキュッキュッ、キシキシと引っかかる感触へと変わります。湯上がりの肌は、スベスベ、サラサラと軽やか。さっぱりとした爽快感がありながら、ほどよいしっとり感も残り、体の芯までポカポカと温まりました。

男女別大浴場の露天風呂
館内には、男女別大浴場もあります。広々とした内湯に加え、木々と岩に囲まれた野趣ある露天風呂や、木のデッキに沿って造られた開放的な露天風呂があり、客室の温泉とは異なる雰囲気の湯浴みを楽しめます。

7種の海の幸が乗った舟盛

能登牛のステーキ

あふれる肉汁と香ばしさが食欲をそそります

ツヤツヤに炊きあがった「いのちの壱」
夕食は、数あるコースの中から「舟盛り」と「能登牛のステーキ」を組み合わせたプランを選択しました。
前菜には、炙りブリの小袖ずし、鴨ロースの低温調理、ウナギと翡翠ナス、太刀魚のトマトソース、青梅の甘露煮など。メインの一角「海の幸7種舟盛り」は、甘エビ、炙りサワラ、ブリ、ハチメ、イカ、タイ、サザエが一艘に並び、尾頭付きの魚が舟の上でどっしりと存在感を放っています。舟盛りと並ぶもう一つの主役が、「能登牛のステーキ」。細かなサシの入った肉を鉄板にのせると、脂がゆっくりと溶け、香ばしい音とともに表面が艶を帯びていきます。口に運ぶと軟らかく、脂の甘みと肉のうまみがじんわりと広がりました。ほかにも、茶わん蒸し、土瓶蒸し、甘辛い煮汁が染み込んだタイのかぶとの荒炊きなどが続き、目の前の釜で炊き上げる地元産の有機栽培米「いのちの壱」もツヤツヤで絶品でした。

館内には卓球台も。「温泉卓球」も楽しめます
せっかく旅行に出かけるなら、天気が良いときを狙っていきたいもの。梅雨の季節は遠出するのがおっくうですよね。それなら初めから、宿で過ごす時間を旅の目的にするのはいかがでしょうか。
少し上質な温泉付き客室を選び、好きな時間に掛け流しの湯へ入り、北陸の魚や能登牛を味わう。雨の日を残念に思うのではなく、ゆっくりと宿にこもるための理由に変える。「吉田屋山王閣」は、そんな梅雨の温泉旅を楽しませてくれる老舗宿でした。
【山代温泉 吉田屋山王閣】
住所 石川県加賀市山代温泉13-1
電話番号 0761-77-1001
【泉質】
ナトリウム・カルシウム-硫酸塩・塩化物温泉(低張性 弱アルカリ性 高温泉)/泉温64.2度/pH:7.9/湧出状況:動力/湧出量:500リットル/加水:不明/加温:なし/循環:なし/消毒:なし ◆掛け流し
【筆者略歴】
小松 歩(こまつ あゆむ) 東京生まれ。温泉ソムリエ(マスター★)、温泉入浴指導員、温泉観光実践士。交通事故の後遺症のリハビリで湯治を体験し、温泉に目覚める(知床での車中、ヒグマに衝突し頚椎骨折)。現在、総入湯数は3,000以上。好きな温泉は草津温泉、古遠部温泉(青森県)















