KK KYODO NEWS SITE

ニュースサイト
コーポレートサイト
search icon
search icon

「奇跡の一本松」後継樹の種子を英国キュー王立植物園へ寄贈

~駐日英国大使館の協力を得て、震災の記憶を未来へ継承~

2026年5月22日
住友林業

 住友林業株式会社(社長:光吉 敏郎、本社:東京都千代田区)が育種した「奇跡の一本松」の後継樹の種子を英国キュー王立植物園へ寄贈します。寄贈に先立ち、5月21日に駐日英国大使館(東京都千代田区)でジュリア・ロングボトム駐日英国大使に本種子を手渡しました。

  種子は2011年の東日本大震災で被災した「奇跡の一本松」を接ぎ木で増殖した後継樹の球果から採取したものです。駐日英国大使館の協力を得て、英国キュー王立植物園ウェイクハーストにあるミレニアム・シードバンクへ寄贈されます。

 

 種子をお渡しする様子

 

 

■寄贈の背景

 「奇跡の一本松」は2011年の東日本大震災の津波被害で岩手県陸前高田市の高田松原(約7万本の松)が流失する中、津波に耐え、唯一残った松の木であり、復興の象徴として国内外に広く知られています。当社は震災直後から株式会社米内造園、一般社団法人日本造園建設業協会および浅子生産農場と連携し、「奇跡の一本松」の血筋を将来に引き継ぐため、接ぎ木や実生(みしょう)による後継樹育成に取り組んできました。    

 2012年に英国キュー王立植物園ミレニアム・シードバンクから「奇跡の一本松」の種子を保存したいとの打診を受けましたが、当時は種子の確保が困難であったことから、同じ陸前高田市で被災した寺院「龍泉寺」のアカマツの種子を提供しました。

 その後、東日本大震災から15年目の節目を迎えたことや後継樹育成が順調に進んだこと、同シードバンクが2025年に設立25周年を迎えたことを契機に、「奇跡の一本松」の記憶とその系譜を国際的に継承する目的で、後継樹由来の種子を寄贈することとなりました。 

 

 ■寄贈する「奇跡の一本松」後継樹の種子について

 寄贈する種子は2011年の東日本大震災で被災した「奇跡の一本松」を接ぎ木で増殖した後継樹の球果から採取したものです。

 後継樹は「奇跡の一本松」のクローンであるため、本種子は「奇跡の一本松」の遺伝子を受け継いでいます。当該樹木の樹齢は14年で、種子は2025年10月に採取しました。


    

■英国キュー王立植物園

 英国キュー王立植物園(Royal Botanic Gardens, Kew)は世界有数の植物研究・保全機関です。同園が運営するミレニアム・シードバンクは、世界各地の希少な野生植物の種子を長期保存する世界最大級の施設であり、これらの植物資源を未来へ継承することを目的としています。

 


■今後の見通し

 本種子は今後、植物検疫などの輸出関連手続きを経て英国キュー王立植物園に寄贈され、ミレニアム・シードバンクで長期保存される予定です。当社は今後も「奇跡の一本松」の後継樹の健全な生育を見守るとともに、震災の記憶と貴重な樹木遺伝資源を未来へ引き継ぐ取り組みを継続していきます。

 

■駐日英国大使館・住友林業コメント

◆ ジュリア・ロングボトム駐日英国大使

  東日本大震災においてただ一本残った「奇跡の一本松」は、困難の中にあっても希望を失わない人々の強さを象徴する存在です。その遺伝子を受け継いだ種子が、英国キュー王立植物園で未来へと受け継がれていくことを、大変うれしく思います。

 天皇陛下が2024年に英国を訪問された際に、私もキュー植物園に同行させていただきました。キュー植物園のミレニアム・シードバンクは、世界各地の貴重な植物資源を長期的に保全する国際的に重要な拠点であり、自然環境の保護や科学研究の観点からも大きな役割を果たしています。今回寄贈される種子も、そうした取組の一環として大切に保存されることになります。

 この種子が受け継がれてきた背景には、住友林業の皆様による高度な技術と長年にわたるご尽力があります。震災直後から継続的に取り組まれてきた後継樹の育成と保存の活動に対し、深い敬意を表します。

 この「奇跡の一本松」の種子は、日本と英国をつなぐ新たな歩みの象徴でもあります。英国はこれからも東北地方の復興に寄り添い、日本の皆さまとともにこの大切な記憶を未来へつなぎながら、こうした取組を通じて両国の協力をさらに深めていきたいと考えています。

 


 

◆  住友林業株式会社 代表取締役会長 市川 晃

 東日本大震災の復興と希望の象徴である「奇跡の一本松」の後継樹の種子を、英国キュー王立植物園へ寄贈する運びとなりました。英国キュー王立植物園のアーティスト/コーディネータである山中 麻須美様のご尽力により、本寄贈の実現に至ったことに、まずは心より感謝申し上げます。2011年の東日本大震災の津波被害に耐えた「奇跡の一本松」は、多くの人々に勇気と希望を与え続けた存在です。その象徴の一部を未来へつなぐ第一歩として、ジュリア・ロングボトム駐日英国大使に種子をお受け取りいただけることを大変光栄に存じます。

 今回の種子寄贈に至るまでの道のりは、決して平坦なものではありませんでした。当初育成した実生苗はすべて枯死したため、さらに球果を採取し、種子の確保と苗の育成に取り組みました。また、接ぎ木による増殖も、台木との相性や育成環境の影響により思うような成果が得られず、試行錯誤の日々が続きました。

 そうした数々の挑戦を重ねる中で、実生苗9本、接ぎ木苗3本の育成に成功し、順調に成長した接ぎ木苗から採取した種子を今回寄贈できることに、深い感慨と大きな喜びを感じております。

 今後、「奇跡の一本松」の後継樹の種子が英国キュー王立植物園ミレニアム・シードバンクで大切に保管され、日英両国の友好と復興の精神を象徴する存在となることを心より願っております。


 住友林業グループは森林経営から木材建材の製造・流通、戸建住宅・中大規模木造建築の請負や不動産開発、木質バイオマス発電まで「木」を軸とした事業をグローバルに展開しています。この住友林業グループのバリューチェーン「ウッドサイクル」を活かし、ステークホルダーのニーズに応じて、「森」「木」「緑」に関する様々な知見をトータルコーディネートサービスとして提供しています。今後も自治体や民間企業の森林管理や生物多様性、環境保全のサポートを推進していきます。

 

<参考資料>


 (参考リリース)

・2011年12月14日 陸前高田市の”希望の松”後継樹育成に成功 ~苗木を未来へつなぐ~

・2012年12月7日 陸前高田市「希望の松」後継樹育成の経過報告について

・2013年6月18日 陸前高田市「希望の松」後継樹育成の経過報告について

・2019年9月24日 「奇跡の一本松」の後継樹が里帰り ~陸前高田市、高田松原津波復興祈念公園 オープン記念植樹にて~

 

 

 

■クローン増殖実績一覧

 1998年7月  世界初フタバガキ科樹木の組織培養による増殖に成功

 2000年4月  世界初シダレザクラ(京都・醍醐寺)の組織培養による増殖に成功

 2009年3月  小田原・紹太寺の「長興山しだれ桜」の組織培養による増殖に成功

 2010年2月  京都・仁和寺の「御室桜」の組織培養による増殖に成功

 2011年4月  品川区・清岸寺の「祐天桜」の組織培養による増殖に成功

 2012年2月  京都・仁和寺の「泣き桜(陽道桜)」の組織培養による増殖に成功

 2012年4月  鎌倉・安国論寺の「妙法桜」の組織培養による増殖に成功

 2013年3月  広島大学附属高等学校と共同 「エバヤマザクラ」の組織培養による増殖に成功

 2015年3月  世界初鑑賞梅(京都北野天満宮「紅和魂梅」)の組織培養による増殖に成功

 2015年4月  世界初ソメイヨシノ(土浦市天然記念物“真鍋のサクラ”)の組織培養による増殖に成功

 2016年4月  京都・北野天満宮の「北野桜」の組織培養による増殖に成功

 2019年2月  福島・南相馬市天然記念物「泉の一葉マツ」の後継樹(実生苗)の育成に成功

 2019年4月  愛知・大口町「五条川桜」の組織培養による増殖成功(400本納品)

 2020年10月  長浜盆梅の樹齢350~400年の盆梅「不老」「芙蓉峰」「さざれ岩」の組織培養による増殖に成功

 2022年3月  東京・伊豆大島の国指定特別天然記念物「桜株」の組織培養による増殖に成功

 2023年4月  滋賀・日吉大社「日吉桜」の組織培養による増殖に成功

(参考) 組織培養による苗木増殖:https://sfc.jp/treecycle/value/naegi_zousyoku.html

   動画:https://youtu.be/eWgtN_r9HcA?si=msnN2Vcnx8YEfD2z

 

■住友林業「桜のたすき」プロジェクト

 住友林業は歴史的・文化的に貴重な木々を次世代へ継承することを目的に、総本山醍醐寺「太閤しだれ桜」や福島・南相⾺市天然記念物「泉の⼀葉マツ」など、これまで25種以上の名木・貴重木の苗木増殖を行っています。こうした名木・貴重木を次世代へ継承する取り組みを体系化し、その意義を知っていただくため、2026年3月に「桜のたすき」プロジェクトを発足しました。古くから日本人に愛され、世界でも日本を象徴する花として親しまれる「桜」。そこに「たすき」という言葉を重ね、大切なものを絶やすことなく未来へつないでいくという想いや、組織培養などの科学技術と文化的価値を結び付けるという意味を込めて命名しています。「桜のたすき」プロジェクトは、桜に関わらず、その他の名木・貴重木の後継樹育成も包括した取り組みとして推進します。

 住友林業グループはSDGs目標年でもある2030年を見据え、長期ビジョン「Mission TREEING 2030」を策定。長期ビジョンでは「地球環境への価値」、「人と社会への価値」、「市場経済への価値」の3つの価値を掲げています。本プロジェクトは3つの価値のうち、「人と社会への価値」をより一層高めるための取り組みの一環です。今後も本プロジェクトを通して、名木・貴重木と、木とともに育まれてきた人々の記憶や地域の文化を未来へ繋いでいきます。

(参考リリース)住友林業「桜のたすき」プロジェクトを発足 ~老齢化や環境変化により衰弱が進む桜を組織培養(クローン)技術で次世代へ継承~

 


■今後の取り組み

 住友林業は神社仏閣や自治体の皆様が所有・管理する名木や貴重木を後世に受け継いでいく取組みをサポートし、樹勢・生態調査及びDNAによる品種同定などの結果を基にした保存活用計画の立案及び後継樹の増殖、樹勢回復などを行っています。

 全国の名木・古木の増殖に関するご相談をお受けしています。詳しくは担当部署である「森林・緑化研究センター」(WEBサイト:https://sfc.jp/treecycle/tree_utilization/)までお問い合わせ下さい。

編集部からのお知らせ

新着情報

あわせて読みたい